森保Jに「強化の連続性」はあったか? コパで再確認した“ジャパンズ・ウェイ”
森保監督の「コンセプト」とは何だったのか?
森保監督のコンセプトは「ジャパンズ・ウェイ」の延長線上にある 【写真:ロイター/アフロ】
・攻守共に選手がほどよい距離感を保ち、周囲がすぐにカバーリングやサポートができるようにすること。
・攻撃時には守備を、守備時には攻撃を、常に意識しながらプレーすることで、攻守が切り替わったときに瞬時に対応すること。
・攻撃面では、日本人選手が本来持っている技術の高さと献身性を生かしながら、連係連動して局面を崩すこと。それが難しい場合は、個の力による打開を目指すこと。
・守備面では、球際でしっかり勝負すること。相手に攻め立てられる場面でも、身体を張って最後まで諦めずに対応すること。
・想定外の事態が発生した場合は、ピッチ内の選手の判断を尊重すること。
・以上のコンセプトは、3バックでも4バックでも基本的には変わらない。
こうして列挙してみると、難しいことは何ひとつ言っていないことに気付くはずだ。もちろん、攻守の組み合わせや相手との力関係によって、追加的な約束事はあるだろう。それでも大枠では、上記したコンセプトから大きく逸脱することはない。そして(森保監督自身がどこまで自覚的かは不明だが)、現在の日本代表のサッカーはJFA(日本サッカー協会)が2006年から提唱してきた「ジャパンズ・ウェイ」──すなわち日本本来の強みや日本らしさを前面に打ち出したスタイルとも合致している。
今回のコパ・アメリカで、森保監督が結果以外に求めたものは、単に「五輪世代の若い選手を試すこと」だけだったのだろうか。むしろ日本サッカー界がこれまで積み上げてきた「ジャパンズ・ウェイ」、そしてその延長線上にある森保監督自身のコンセプトが南米勢とのアウェー戦でどこまで通用するかについても、実は試しておきたかったのではないだろうか。それは初戦のチリに0−4と粉砕されても、その後はメンバーを替えただけで戦い方は変えなかったことを思えば、あながち間違った見立てとも思えない。
世界を肌で知るラストチャンスだったコパ・アメリカ
コパ・アメリカは、日本が次のW杯までに世界を肌で知るラストチャンスだった 【写真:ロイター/アフロ】
だからこそ日本は、コパ・アメリカに参加すべきであったし、南米での真剣勝負を通して多くの教訓を得ることができたとも思う。今後の日本サッカー界は、男女共に来年の東京五輪へと向かっていくが、祭典が終われば強化の機会がないままW杯最終予選に突入していく。次回のコパ・アメリカは来年2020年に開催されるが、すでにアジアからの招待枠はカタールとオーストラリアに決定。つまり今大会は、日本が次のW杯までに世界を肌で知る、文字通りラストチャンスだったわけである。
最後に、あらためて今大会の日本代表を7つのチェック項目で評価しておこう。「各ポジションの世代交代は進んでいるか?」は、間違いなく進んでいる。ただし「チーム内の競争は健全に働いているか?」については、今後のW杯予選で見極める必要がある。「監督の考えるコンセプトは浸透しているか?」は、メンバーが変わっても大きな破綻が見られなかったので、浸透していると言えるだろう。ここまではチームマネジメントに属するものであり、そこだけ考えるなら満足できる進捗と言えるだろう。
一方で「攻撃面でのバリエーションは増えているか?」と「守備面での共通理解は進んでいるか?」は、どちらもクエスチョンマーク。「監督の采配や選手交代は的確か?」についても効果的だったと言い難いし、「試合状況や実力差に応じた戦いができているか?」はウルグアイ戦のみ及第点だったと考える。もっとも、現時点ですべてがパーフェクトである必要はない。それに森保監督は、まだまだ伸びしろのある指導者だと私は信じている(おそらくJFAもそこの部分を期待しているのであろう)。
今大会での経験を経て、選手のみならず指揮官がどう成長していくのか。むしろそこに、今後の楽しみを見いだしたいところだ。