コパ・アメリカ2019連載

見極めたい森保ジャパンの成長 コパは世界での立ち位置が問われる場

宇都宮徹壱

コパ・アメリカで日本が問われるものとは?

チリ戦前日のモルンビー・スタジアム。今大会は世界における日本の立ち位置が問われる 【宇都宮徹壱】

 日本はその後、11年のアルゼンチン大会にも招待を受けるが、東日本大震災の影響による国内リーグの日程変更により辞退。それから2大会を経て、実に20年ぶりにコパの大舞台に挑むこととなった。とはいえ前回の出場とは異なり、選手選考は大いに困難を極めることとなった。「皆さんが考える日本代表からすれば、最強ではないかもしれないが、現在の条件の中ではベストな招集だったと思う」と語るのは森保一監督。その言葉からも、ここに至るまでの紆余曲折(うよきょくせつ)が透けて見える。

 招集に関する前提が違うのだから、南米諸国と日本とを単純に比較するのがフェアではないことは、誰もが認めるところである。それでも対戦相手は、そんなことにはお構いなしで日本を潰しにかかることだろう。アジアの大会や年代別のW杯とは明らかに異なる、南米の意地とプライドを懸けた戦いの中に放り込まれた、若き日本代表。この過酷な経験から、どんな選手が這い上がってくるのかは、ひとつの注目ポイントであろう。その上で、東京五輪のさらに先のチームづくりを見極めるべく、6月10日のコラムで挙げた7つのチェックリストを再掲しておく。

(1)各ポジションの世代交代は進んでいるか?
(2)チーム内の競争は健全に働いているか?
(3)監督の考えるコンセプトは浸透しているか?
(4)攻撃面でのバリエーションは増えているか?
(5)守備面での共通理解は進んでいるか?
(6)監督の采配や選手交代は的確か?
(7)試合状況や実力差に応じた戦いができているか?
 思えば、南米での真剣勝負の機会を強く望んでいたのは、森保監督自身であった。国内での親善試合だけでは、強化面で心もとないことを痛感していたことは容易に想像できる。だからこそ20年ぶりに訪れた貴重な機会を、ゆめゆめ無駄にすべきではない。たとえ思うような結果が得られなかったとしても、「準備期間が短かった」とか「選手の経験が足りなかった」といったエクスキューズを蒸し返すのではなく、森保体制の成長曲線の行方を見極める機会ととらえたい。日本にとってのコパ・アメリカは、選手個々の学びと成長の機会であると同時に、世界における自分たちの立ち位置が厳しく問われる場でもある。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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