自分の足で関東の山168kmを3日以内に踏破するプライベートイベント「トランス関東」にチャレンジ

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最近、山を走るランナーたちの間で、自分たちで考えた長いルートを連休等の休みを使って単独または数人の仲間たちと挑戦するという話をよく聞くようになった。過去最大級の連休となった今年のゴールデンウィークもそのような挑戦が知り合いの間でいくつか企画され、過去にトランスジャパンアルプスレース完走などの実績がある筆者もいくつかの挑戦に誘っていただいた。
その中で身近な友人が企画していた関東平野の北から太平洋まで縦に縦断する「トランス関東」に参加してきた。

コースは埼玉県の寄居駅をスタートし、外秩父、奥武蔵、奥多摩、丹沢の山を抜けて神奈川県茅ヶ崎市のサザンビーチちがさきまでの168km。
スタートは5月3日の10時、制限時間は72時間。

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主なルール

(1)すべて自分の足で踏破する。
(2)コースのマーキング等はないので事前に配布したルートデータを参考に各自、地図を見ながら進み、いくつかの決められたチェックポイントで連絡する。
(3)イベントを裏で支えるスタッフ等はいないので原則として必要な装備、トラブル時の対応、終わった後の事等はすべて各自で準備し対応する。
(4)途中の商店や山小屋の利用は制限なし。宿泊施設等の利用も制限されていないが各自ツェルトやビビィ等の休むための装備を持って行動し、適宜休憩しながら進む。

挑戦するのは山岳レース等で実績のある吉藤剛さん、山ノ内さん、前田さん、まさえさん、近内さん(途中参加)の5人+筆者の6人。その中の一人で、このイベントの企画者でもある吉藤さんにこのイベントを企画した経緯を聞いてみた。

「僕はサザンビーチの近くに住んでいますが、自宅からトレイルで北上するとどこまで行けるんだろう?ふとそんなことを思いついて、地図を眺めたところからトランス関東は始動しました。 細かいルートと計画を立てて、寄居町への関東縦断コースを決定。2018年3月30日に単独で実行して、54時間30分でゴールしました。冒険は無事成功、やり切った達成感はとても大きなものでしたね。次は、南下して自宅へ帰るという逆コースをやってみようと考えました。ただし、それは単独ではなくて、何人かでレース形式でやって、皆で共有できればもっと面白くなるのではないかと考えて、今回の『トランス関東』を開催することになりました」

実はイベントの準備段階から手伝うのも込みで筆者は参加した。このようなプライベートイベントでは準備を参加者が分担し、できるところを協力し合ったりすることは多い。筆者はルートデータの作成や、コース上で利用できそうなお店、水場の情報等をまとめて参加者に共有する作業を手伝った。

1日目 寄居駅〜川苔山付近(約55km)

当日朝、各自電車で寄居駅へ移動、集合して予定通り10時にスタートした。

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序盤は集団で進み、牧場でソフトクリームを食べたり、和気あいあいとした雰囲気。奥多摩までの区間で、最後の自販機がある場所となる定峰峠で休憩した後は、各自のペースで進んだ。

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まさえさんが少しペースを落とし、吉藤さんが付き添うかたちで後退。前田さん、山ノ内さん、僕の3人で前後しながら、初日は川苔山付近(約55km地点)まで進んだ。その後、それぞれ違う場所で休憩を取りながら、早朝にJR古里駅付近のコンビニに到達。後で話を聞くと、実は近い場所で休憩していたらしい。休んでいる間に熊鈴の音が通過するのは聞こえていた。

山ノ内さんは水の消費量が想定より多く、残量が心配で少しコースを外れるが、数少ない水が入手できる水場に立ち寄って水を補給したらしい。この水場、レースの少し前に状況をチェックしたところ、水量は少なく、水たまりの水をすくい取るような状況だった。おそらく苦労して水をボトルに移し飲んだと思われるが、後でボトルの水を見ると、虫や土が混じっていたそうだ(笑)。

ちなみに前田さんもこの水場を利用したらしい。筆者は水の消費ペースが想定どおりだったので、余裕はなかったが古里駅まで持たせることができた。

2日目 相模湖付近〜西野々(約113km)

昼間は暑く、午後は雷雨やヒョウも降ってくる不安定な天気を各選手やりすごしながら進むが、前田さんは前夜に睡眠がうまくとれず、相模湖でリタイア。通常、睡眠時間を削って長時間行動すると睡魔との戦いになるのだが、寝ていないのに眠くならないことに危険を感じてリタイアを判断したとのこと。

山ノ内さんは疲労が大きく、丹沢山地を迂回してロードでフィニッシュ地点を目指すことになった。筆者は前を進んでいるはずの前田さんを追って集中して進んでいたが、前田さんのリタイアを知って集中力が緩むと同時に眠気に襲われたため、丹沢山地に入る前の西野々(コンビニがありチェックポイントでもある)付近で休んでから丹沢に入ることにした。
過去の経験からどこかで寝ないと持たないことは分かっているので、眠気を我慢して質の低い行動時間でロスをするよりは、早めに休んで集中して進める時間を作る作戦を取った。その方が結果的に速くゴールできることが多い。

2日目の午後、途中参加の近内さんが臼杵山から合流し、最後尾から追走しながらフィニッシュを目指し進む。

3日目 西野々〜サザンビーチ(約168km)

3日目ともなると、初日からの蓄積された疲労が出てくる一方で、体が長時間の行動に対応してきて、意外に安定したペースで進めるようになってくる。おそらく無駄に頑張ることをしなくなり(できなくなり)、自然に出力が平均化されていくのだと思う。それでも長距離レースでよくある失速と復活を繰り返す浮き沈みはあって、今回も失速中に自分よりはるかに年上の登山者に追いつかれて意識したのをきっかけに復活!ということがあった。若干眠気に襲われてペースを落とす時間帯もあったが、歌を歌って(歌詞のわからない外国語の歌にしっくりくるカタカナ歌詞をつけながらフルアルバムを歌うとか)紛らわしたりしつつ、淡々と丹沢の山々を超えて鶴巻温泉(約151km地点)に下山しロード区間へ。

筆者の少し後ろに近内さん、さらに数時間遅れで、まさえさん、吉藤さんと続く。

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3日目の午後、ロードを迂回した山ノ内さんはひと足先にサザンビーチへ到着したようだ。
続いて、日没直後の18時37分に筆者がフィニッシュ。数十分後に、近内さんもサザンビーチへ到着。終盤眠気に苦しめられたまさえさん、吉藤さんが5月6日の午前1時59分 にフィニッシュしてイベントは無事終了した。

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2日目以降は1人でいる時間が長いが、各自が状況をメッセージアプリで報告し合って進んでいくので、自分より前の選手に近づいていると元気になり、後ろが迫ってくると「あ、やばい」といった心境になる。ガツガツ競り合う訳ではないけど、ほかのランナーを意識しながら、結果として一人では出せないパフォーマンスが出せたりする。ひとりだけどみんなでやっている、という一体感も面白さのひとつなのだ。最後に今後やってみたいと思っている挑戦について吉藤さんに聞いてみた。

「トランス関東が終わった後は、皆であの時はああだった、こうだったと語り合って盛り上がりました。これだけ長い距離なので、それぞれの選手が行動している過程でさまざまなことが起こります。それをレース中や、レース後に皆で共有できるのは本当に楽しいですね。
今回のトランス関東をより面白いコースに変えて、第2回を開催してみたいです。絶対盛り上がりますからね。チャレンジは、ほかにもいろいろ考えています。日本の高い山トップ10を一気に登るチャレンジ、その名も『ザ・トップテン』とか(笑) 。皆があっと驚くようなコースで、限界に挑戦するようなチャレンジをどんどんやっていきたいですね。」

チャレンジを終えて筆者自身、非常に充実感を得ることができた。
まだ日本にUTMFなどの100マイルレースがなかった2010年頃、100マイルという距離に挑戦してみたい!との思いから自分でコースを考えては挑戦をしていた。完全に自己満足だが完走できたときの達成感は大会で味わうものとは別物だった。
2016年にも関東100マイル(K100)というのをやってその時に吉藤さんも参加してくれて一緒に走り、達成感を共有しあった。大会という用意された枠の中で競い合うのも楽しいが自分たちでコース、行動計画、必要な装備、想定されるリスク等を考えて計画し、実行し、結果を共有し合う。こんな楽しみ方がもっと広がり、いろいろなアイデアや楽しみ方が出てくることを願っている。

最後に、筆者が今回のトランス関東で活用したグッズの一部を紹介したい。休憩用の装備、各選手お気に入りは違うようだが、筆者は短時間の休憩しか考えてない時はツェルト(緊急時のビバーク等に使う簡易テント)を装備して、張らずに被ったり潜り込んで使うことが多い。
あとは条件によってツェルトにSOLエスケープライトヴィヴィのような簡易寝袋を組み
合わせたりする。これは今回ほかの選手も使っていて、定番とも言える製品。

エスオーエル SOL ヒートシート エスケープヴィヴィ 12416 アウトドア サバイバルシート ビバークザック 防災用品 サバイバル用品
7,390円

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出品者
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■筆者プロフィール
飴本 義一 ランニング歴12年、登山歴15年
主な大会実績
・ハセツネCUP日本山岳耐久レース完走12回
・OMM JAPAN ストレートA完走
・トランスジャパンアルプスレース完走3回
・UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)完走3回

最近は多摩川の一部、または全部を回ることをテーマとしたコースに挑戦して楽しんでいる。
御岳を起点に多摩川上流域を回る「多摩川本流ぐるり」(7月に予定、約150km)、河口から源流まで全部を回る「多摩川全部ぐるり」(昨年完走 268km)など。
昨年からSUP(スタンドアップパドルボート)も始めた。多摩川全てをSUPで渡ることを目標に楽しんでいる。
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著者プロフィール

習慣的にスポーツをしている人やスポーツを始めようと思っている20代後半から40代前半のビジネスパーソンをメインターゲットに、スポーツを“気軽に、楽しく、続ける”ためのきっかけづくりとなる、魅力的なコンテンツを提供していきます。

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