【どこよりも詳しい】スワローズ新外国人ペドロ・アビラ投手徹底分析

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【これはnoteに投稿されたシュバルベさんによる記事です。】
こんにちは、シュバルベです( ✌︎'ω')✌︎

2月14日バレンタインデーに東京スワローズにペドロ・アビラ投手が新たに加わることが決まりました。

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背番号は「11」。例年スワローズは12月までに外国籍選手との契約は済ませキャンプにも帯同することが多いチームでしたが、今回は選手の獲得に向けた精査や市場の状況でやや時間をかける形となりました。

昨年オフにサイスニード投手、ヤフーレ投手、ロドリゲス投手、エスパーダ投手と4人の外国籍投手を全員リリース。一軍計321.1イニングをヘッジしなくてはいけないというチャレンジングな状況で、マイク・バウマン投手、ピーター・ランバート投手の獲得に続き、外国籍補強第3弾となっています。

※マイク・バウマン投手、ピーター・ランバート投手についての分析はこちらのnoteご覧ください。
本noteではペドロ・アビラ投手がどんな投手か、そしてチームにどうフィットしていくかを考えていきましょう。

0.ペドロ・アビラ投手のプロフィール

ベネズエラ出身のペドロ・アビラ投手は、身長180cm体重95kgのがっしりとした体格の右腕。ちなみに動画を見ると、現在はどう見ても100kgは超えているように思います笑。1997年1月14日生まれの28歳で、スワローズの同年齢には清水昇投手と太田賢吾選手がいます。

今年から加入のランバート投手が27歳、バウマン投手が29歳と年齢1つ違いで3人並ぶ形になり、年齢も近いMatesとしてよき関係を築いてほしいなと思っています。もちろん、同じベネズエラ出身のオスナ先輩もよき相談相手になってくれるのではないでしょうか。

ペドロ・アビラ投手の出身はベネズエラのカラカスにあるエレクトロン高校出身で、2014年にアマチュアフリーエージェントでワシントン・ナショナルズと契約。入団後はルーキーリーグから先発登板を重ね、入団から2年が経った2016年オフにトレードでサンディエゴ・パドレスへ移籍。

2017年・2018年とマイナーで先発100イニングを投げると、2019年4月11日にMLB初昇格。同日に先発登板し5.1回1失点と初登板を飾りましたが、右ひじを痛め同年9月にトミージョン手術を受けています。

2021年に復帰するとマイナー36登板を経て10月1日にMLBの舞台に戻り1試合先発登板。2022年はマイナーで100イニングを投げるもMLBではリリーフ2登板に終わりましたが、2023年は先発とロングリリーフの両睨みでMLBに定着。シーズン終盤にチームメイトだったダルビッシュ有投手の離脱などの穴を埋める活躍を見せています。

2023年9月5日のフィリーズ戦で先発し6.2回を無失点で初勝利。「泣く寸前だったよ」と語るなど試合後のインタビューでは喜びを表しました。

結局、2023年はMLB14試合51イニングに登板。翌2024年はシーズン開幕間もない4月16日にクリーブランド・ガーディアンズに金銭トレードされると全試合でリリーフとして登板しMLB54試合82.2イニングと飛躍の年に。

回跨ぎもなんのそので直近1年間フル回転したバリバリのメジャーリーガーでしたが、ランバート投手同様に、先発が出来る場所を求めた結果としてのNPBでのチャレンジでしょう。

スワローズとは推定年俸100万ドル(約1.5億円)の1年契約プラス出来高払いとのこと。

髙津監督が「すごく高いハードルがいくつかあって獲得まで非常に難しかったが、なんとかここまでこぎつけられた。先発で頑張ってほしい」と語るなどその期待を感じさせます。
以下でペドロ・アビラ投手がどのような投手で期待される役割は何か、見ていきたいと思います。


1.ペドロ・アビラ投手の投球成績

ここから具体的な成績・数字を見て行きましょう。

直近、2024年のアビラ投手の登板成績は次の通りです。

【シュバルベ】

54試合すべてにリリーフ登板。奪三振率23.2%はMLB平均並みでしっかりと三振を取れており、与四球率10.2%は平均より劣る数字です。HR/9は0.87と1を切っており、今のMLBレベルにおいても被弾が少ない点はポジティブにとらえてよいでしょう。

過去のMLBでの成績はこちらです。

【シュバルベ】

直近2年間でMLB50イニング以上の消化、それを防御率3点台でフィニッシュというのは過去スワローズに来た投手の中でも最も結果を出せている投手の部類に入ります。

2年続けて奪三振率が20K%を超え、HR/9が1.00を下回っており、三振が取れて被弾が少ないという傾向は非常に心強いものがあります。

投球フォームとしてはノーワインドアップで始動し、スッと足を上げ、オーソドックスな弓引きからオーバーハンドでのリリース。全体的にクセがなく、ズレが生じにくそうなフォームは好印象です。クイックでは全体の動きを速くする形ですが、盗塁が得意な選手にとって走れないほどでははいかなという感覚です。

それでも23年から牽制に回数制限がかけられ投手は不利な状況ですが、23年は3つ盗塁を決められたものの24年は盗塁企図自体が0。牽制の動きなども実際に見てみたいですね。

フィールディング面でもこの2年間の22回の守備機会でエラーは1つのみ。送球は短い距離でも上手く、浮くことが少ない点は心強いポイント。ただし、投げ終わりに一塁側に倒れ気味なため、三塁側に転がされるとスタートが遅れてしまう傾向にあり、三塁手がバント等に対してどれだけ動けるかは重要です。


2.ペドロ・アビラ投手の投球内容

続いてはペドロ・アビラ投手の具体的な投球内容について見ていきましょう。

2024年にMLBで投じたボールは次のようになります。

【シュバルベ】

2024年は6球種と多くの球種を投じました。フォーシームが最も割合は多く約39%。チェンジアップ22%、カーブ16%、シンカー12%と続き、スライダーとスイーパーが合わせて11%とどの球種もまんべんなく投じています。

なお、2023年は5球種を投じ、スライダーはなくスイーパーも1%を下回るシェア。代わりにシンカーとカーブのシェアが高くなっていました。

フォーシームのアベレージは150.3km/hとMLB平均からは下回ります。なおシーズンの最速は155.4km/hでした。被打率は.246と優秀で、空振り率は19%と来日する選手の中でよい数字を叩いています。

フライボール革命以降、MLBではフォーシームを高めに投げることでスイング軌道から逃げる選択肢を選ぶ投手が増えていますが、アビラ投手のフォーシームは高めのゾーンよりも真ん中~低めのゾーンにも多く投じられています。特にガーディアンズに移籍してから少し配球が変わったかなと感じています。左右どちらの打者に対してもコースとしては外角に投げられる精度を持ち、どちらかというと日本のステレオタイプ的な好投手のゾーンニングに近いようです。

昨年のスワローズの先発投手で最もフォーシームの球速アベレージが高いのは吉村投手の148.8km/h。それに次ぐ選手が左腕の高橋投手の146.4km/hだったことを鑑みると、アビラ投手が万全の状態であればチームの中でも上位に位置付けてくるのではないでしょうか。

続いては変化球。

2番目に多く投げているチェンジアップ平均134km/hとフォーシームに比べて10%ほど球速を抑えた一般的なイメージに近しい球速帯です。被打率は.190と非常に優秀で、空振り率35%も申し分ありません。

左右どちらの打者に対してもチェンジアップは20%近く投じられ、変化球の中では最も割合が多くなっています。2ストライクに追い込んでからはチェンジアップの投球割合が35%と上がり、全球種の中で最多の数字に。アビラ投手にとっての決め球はチェンジアップであると言ってよいでしょう。

カーブ平均124.9km/h、投球割合の16%を占めています。空振り率は29%とこれまた高く、左右どちらの打者に対しても20%をやや下回るくらいの投球割合で、それでいて空振り率はいずれも25%を超えるなど結果が出ている球種です。

続いてシンカー平均149.7km/hと球速帯はフォーシームに近しく、Baseballsavantではシンカー表記ですが、グリップも含めツーシームととらえてよいでしょう。被打率は.313と他の球種よりも打たれており、空振り率は9%。23年は打者の左右問わず20%前後投じてきましたが、昨年は左打者に対しては6%と割合を減らし、主に右打者のインコースを突き見せ球ないしゴロを打たせるためのボールという使い方をしています。

スライダー平均133.5km/h、投球割合の7%を占め、23年は投げていないボールでしたがシーズン中盤の6月末から1年半ぶりに解禁。被打率は5割越え、一方で空振り率は36%。使いようによっては今後武器になる可能性を秘めています。左打者にはほぼ投じず、右打者に対しては10%近い投球割合を持っていました。

最後にスイーパー平均125.3km/h、投球割合は4%。被打率.200、空振り率25%と割合は少ないですが有効なボールになっている可能性があります。スイーパーにしては球速が遅く、アビラ投手の持ち球の中ではカーブに近しい球速帯で、これはスラーブではないかという疑問が生じますよね。

ここから先は更にボールの内容を深堀してみましょう。

アビラ投手が2024年に投じたボールの変化量をプロットしたものがこちらです。

【シュバルベ】

フォーシームの平均変化量はシュート成分7cmホップ成分33cm。シュート成分が少なく、ホップ成分も少ない、「垂れスラ」系の珍しい球質です。

林卓史氏の著作『球速の正体』では、この「垂れスラ」系の代表として元中日ドラゴンズのジャリエル・ロドリゲス投手や、元DeNA・ジャイアンツの三上朋也投手が挙げられています。

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実際にジャリエル・ロドリゲス投手の2024年のスタットキャストデータによると、フォーシームの平均変化量はシュート成分6cmホップ成分29cm。アビラ投手よりもさらに垂れる球質ですが、平均球速も151km/hと非常に近いボールであると考えてよいでしょう。

同じようなフォーシームの球質だった投手が2022年の大谷翔平投手。平均変化量はシュート成分9cm、ホップ成分37cm。ただ平均球速が157km/hと決定的な相違点もあることは記しておきましょう。

この「垂れスラ」系の球質ではバットに当たってもゴロを取りやすいという点で投手にとって有利になりますが、実際にアビラ投手のフォーシームの打球のうち43%がゴロ性の打球。ロドリゲス投手が30%台前半だったのと比べてもさらにゴロが多く取れいてます。

さらに面白いのはアビラ投手のチェンジアップ。平均変化量はシュート成分4cmホップ成分8cmとフォーシームよりもさらにシュート成分が少なく、落差を作れるボールとなっています。過去に来日した選手のnoteをこれまで毎年書いてきましたが、フォーシームよりシュート成分の平均変化量が少ないチェンジアップは初めてです。

このフォーシームとチェンジアップの平均変化量の特異さを知るために、他の選手との比較を見てみましょう。楽天ヤフーレ投手、DeNAジャクソン投手、オリックスエスピノーザ投手、そしてスワローズの新戦力のバウマン投手とランバート投手を対象とします。

【シュバルベ】

そもそも「垂れスラ」系のフォーシームのマッピングからして他の「標準」系のフォーシームを投げる投手とは位置がだいぶ変わっていますが、チェンジアップについては同一球種とは思えないような位置にマッピングされます。

この変化ゆえに投げるゾーンに関しても通常のチェンジアップはベース板の三塁側に多く投じられますが、アビラ投手のチェンジアップは一塁側のゾーンに多くが投じられ、一見するとスライダーのようなゾーンに投げ込まれています。

2024年8月20日にFangraphsではこのアビラ投手の「奇妙な」チェンジアップが取り上げられ記事になっています。

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親指と人差し指で”O”を作り、中指~小指の3本でボールの反対側を押し込んで投げる特殊なグリップで、人差し指と中指で縦に抜くようなイメージでしょうか。回転効率が著しく低く、ナックルボールのように縫い目によって受ける影響の大きな不規則なボールになっていると記事では分析されています。

完全なボール球になる頻度もそれなりに高いこととトレードオフで、打者にとっても見慣れない特殊球ゆえに空振り率が高く、アビラ投手の活躍に欠かせない有効なボールと結論付けています。

投球割合も多いこのボールが日本での成功の可否を握る可能性が高いのですが、様々なチェンジアップの投げ方を試行する様子をアップロードしてくださっている外苑前野球ジム様のinstagramではMLB球は回転効率が低くてもシームの影響を受けやすい点がNPB球とは異なる旨の言及がされており(趣旨と違っていたらごめんなさい!!伊藤さん助けてください!!笑)、アビラ投手がボールの違いに対してどのようなアプローチを試みるかに注目です。

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この2球種でだいぶ熱量を使ってしまったので、残りの変化球についてはさらっと言及していきたいと思います。

カーブの平均変化量はスライド成分23cm、ドロップ成分39cm。平均よりもどちらもやや大きな変化量となっており、平均2,724回転と回転数も多いカーブとなっています。初球にストライクを取りに行くという使い方よりも、狙って空振りを取りに行くボールとして使っています。

シンカー(ツーシーム)の平均変化量はシュート成分31cm、ホップ成分26cm。ホップ成分はフォーシームとほぼ変わらず、シュート成分は20cm近く大きなボールとなっています。MLBではこのボールの被打率は高かったものの、ゴロ率61%とゴロを打たせるという役割は果たせていました。スワローズの木澤投手や大西投手の活躍などフォーシームに近しい球速帯のツーシームの有効性を見れば、NPBで機能するボールになってくる可能性は一定以上あるのではないかと期待しています。

最後にスライダーとスイーパー、この二つはまとめて書きましょう。スライダーの平均変化量はスライド成分19cm、ドロップ成分8cmとMLB平均よりもややドロップ成分が大きなボール。スイーパーの平均変化量はスライド成分28cm、ドロップ成分19cmとこちらはMLB平均からは大きく外れドロップ成分の大きなボールとなっています。

アビラ投手のスイーパーは球速が120km/h台中盤、変化量としてもドロップ成分が大きく、見た限りではスラーブというより緩めのスライダーという印象を受けました。

2023年のアビラ投手の投球マップはこちら。

【シュバルベ】

6球だけスイーパーがプロットされているものの、スライダーを投げずスイーパーも2024年になってから割合を増やしたボールになっています。

『球速の正体』においても「垂れスラ」系のフォーシームを投げる投手が相性の良い変化球として「垂れスラ系のストレート自体がカットボール・スライダー感をもっています。となると、できれば大きく曲がるスラーブやカーブをマスターしたいところです。」(林卓史著、『球速の正体』、東洋館出版社 (2023/11/4)、P.143より引用)と記載されています。

これまで見てきた通り、アビラ投手のカーブとスイーパー(≒スラーブ)はこの条件に適合しており、持ち球のシンカー(≒ツーシーム)と合わせてゾーンの幅でも勝負できるのはアビラ投手が成功できそうなポイントです。

ただし、アビラ投手のリリースポイントを見るとスイーパーを投げるときは高さ平均158cmで他の球種の投球時の平均173cmと比べて15cmほど腕が下がっています。これが打者にとっての判断材料になる可能性はあり得ます。スライダーでは同様の変化は見られず、シーズン中盤からスライダーを投げ始めたのもこの辺にヒントがあるかもしれません。

ここまで各球種を見てきましたが、6つの球種を持ち、特殊球も投げるアビラ投手の投球の抽斗はかなり多そうだというのが率直な感想です。MLBではリリーフに回り便利屋的な起用法でしたが、ヤクルトスワローズが先発としての起用を獲得時から明言するのも納得です。


3.ペドロ・アビラ投手に求められる役割

最後に、ペドロ・アビラ投手がスワローズで果たす役割についてですが、先発ローテーションに入ることは最低限の条件にでしょう。

24年の新加入選手はヤフーレ投手、エスパーダ投手、ロドリゲス投手といずれも若く育成も視野に入れMLB実績は重視せず安価に獲得をしてきたスカウティングでした。今回は大きく方向転換し、バウマン投手、ランバート投手とMLB実績ある投手かつ球速面でも昨年よりもボリュームのある投手を引っ張ってきました。

村上宗隆選手のポスティングを念頭に勝負の年という位置づけにしていると思えば、アビラ投手に求めたい数字として、
▸ 一軍先発ローテに入り100イニング以上の消化
▸ ゴロ率(GB%)50%以上
▸ 奪三振率20K%以上
の3つを挙げたいと思います。

投球内容でフォーシームの類似した球質の選手として挙げたジャリエル・ロドリゲス投手が中日時代に残した成績として、2021年の11先発61イニングで22.2K%、ゴロ率57.7%というものがあります。これが一つのベンチマークとなりうるのではと考え、ここからパワーアップしたロドリゲス投手の昨年のMLB成績を踏まえると、やはりアビラ投手にはこれを超える投球を見せてほしいなと思っています。

ただし、これらの数字を達成できたとして内野の守備に依存する部分はゴロピッチャーゆえに高く、もしスワローズの内野守備が昨年ベースの場合にある程度失点がかさむ可能性はあります。

2月のキャンプを経てなおチームとしての内野守備の不安は残念ながら払拭できていないというのが私見で、アビラ投手をこれから見ていくに際しても投球内容とその打球の結果は切り分けて考えることが必要でしょう。

先にみたように特にチェンジアップがNPBのボールでどう調整できるかという点が非常に気になりますし、うまくはまればかなりの確率で活躍してくれるのではないかと期待をしています。

最後にアビラ投手のコメントで締めましょう。

「スワローズファンの皆さま スワローズの一員になれたことを大変うれしく思います。チームに愛情を捧げて一生懸命に頑張ります。先発として長いイニングを投げられるようにしっかり練習を重ねていきます」

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昨日来日しましたね。
我々も神宮球場でお目に掛かれる日を楽しみにしましょう!!
Go, Pedro Avila!!

■出典

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