在英記者だから知る岡崎慎司最大の特徴 レスターでも「泥臭さ」は愛されたが…
思考の積み重ね、「プロセス」を大事に
ポジションの特性上、感覚でプレーしているFWが多い中、岡崎はゴールへの「プロセス」を大事にしている 【写真:ロイター/アフロ】
筆者の取材経験から言うと、アタッカーは、いわゆる感覚でプレーしている選手が多い。そのせいか、質問をぶつけても「次の試合で結果を残したい」「ゴールが奪えず悔しい」といった表面的な言葉で終わってしまうことが少なくない。「結果をつかめば状況はすべて変わる」。こうした類いの言葉は確かに間違いではないが、正直そのためのプロセスが見えないこともある。だが、岡崎は違った。
「奇跡のリーグ優勝」を達成したときも、こちらの目論見はきれいに外れた。
あの日、戴冠式を終えると、岡崎は言葉少なに話し始めた。「うれしいですけれど」とリーグ優勝に笑みを見せながらも、「何かやっぱり儀式みたいなのは、あんまり好きじゃないかも」と一言。「優勝メダルは?」と尋ねると、「もう(バッグに)しまいました」と短く答えた。
歯切れが悪かった理由は、自分がストライカーとして活躍して成し遂げた優勝ではなかったから。岡崎のマインドは、生粋のストライカーのそれである。しかし、FWバーディーやMFリヤド・マフレズ(現マンチェスター・シティ)がゴールを量産していく中、岡崎は「縁の下の力持ち」として、献身的な走りでチームを支え続けた。ゴール数は、バーディーが24点、マフレズが17点、岡崎が5点。それゆえ、優勝決定から少し時間が経つと、悔しさの方が勝っていったという。戴冠式や優勝パレードのときには、岡崎の視線はすでに次のシーズンに移っていた。
「いま結果を残している選手より、もっと結果を出すことが今の目標。自分の結果には、毎試合満足していないです。自分がやりたいことを手に入れられるよう、そういう貪欲さをこの1年でまた手にした。それが結果として表れたときに、自分のやっていることが評価されると思う。あらためて、サッカー選手としてもっと上に行きたいなと思いました」
目の前に課題があると伸びしろも感じられる
レスターでは試合に出られないつらい時期も経験した岡崎だったが、常に試行錯誤を重ねてきた 【Getty Images】
押して駄目なら引き、引いて駄目なら押してみる──。思い描く理想像に少しでも近づけるために、岡崎は試行錯誤を重ねた。そんな自身の特長について、次のように語ったことがある。
「自分の足下を見てやってきた。そのときにやらないといけないことが必ずある。それをやってきた。もちろん、高いところ(目標)があるから頑張れる。でも、それを見すぎてしまうと、やらなくてはいけないことが見えなくなる。自分が置かれている状況で、何ができて、何を伸ばさないといけないかを考えてきた。そして、目の前にやれることがあった。だからこそ、まだまだ自分は上に行ける可能性を感じている。こうやって考えることは自分の得意なところだと思っていますが、それを教えてくれたのが指導者であり、日本のサッカー教育だと思う。自分がやっていることは、誰もができることだと思う」
岡崎の話を聞いて、筆者は「いやいや、誰でもできることではないよ」と心の中でつぶやいたことを今でもよく覚えている。
そして、こうした岡崎の向上心や思考の深さが、誰も予想できなかった「奇跡のリーグ優勝」にも密接に絡んでくる。次回のコラムでは、プレミア制覇を成し遂げた「ミラクル・レスター」にスポットライトを当てたい。
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