地力が反映されやすい今季のBリーグCS 実力拮抗の準決勝は第3戦が見どころに!?

大島和人

Bリーグ初年度の開幕戦カードが再び

ホームの大歓声をバックに戦うことができる琉球 【(C)B.LEAGUE】

 もうひとカードが琉球とA東京の対戦。2016年9月22日に行われた、Bリーグの開幕戦と同じ顔合わせだ。

 琉球は佐々宜央HCが2季目の指揮を執り、2季連続の西地区王者となっている。しかし今季のクォーターファイナルは、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの初戦を53−69で落とした。第1クォーターは名古屋の強度が高い守備に圧倒され、第一クォーター終了時点で4−21という最悪のスタートだった。しかしそのような展開でも沖縄市体育館のブースターに罵声や後ろ向きの空気は一切なく、シュートが決まれば大歓声が沸いていた。

 持ち味の泥臭い守備を取り戻した琉球は2戦目を77−53で取ると、第3戦も67−43と圧勝。守備力で名古屋を封じ、逆転勝ちを果たしている。第2戦は古川が3ポイントを5本決めて26得点を挙げている。古川は第3戦に厳しいマークを受けたが、この試合は岸本隆一が3ポイントを4本成功させて計16得点を決めた。

 琉球のアウトサイドは誰が出てもクオリティー、守備の強度が落ちない。アウトサイドの選手層、ホームの大歓声を考えると、第3戦まで行けば琉球が有利だろう。

 対するA東京は昨季のB1王者だ。ボールを持つ選手とスクリーナーの連係から2対2の局面を攻略する「ピック&ロール」はバスケの基本形だが、ルカ・パヴィチェヴィッチHCはこの形を緻密に浸透させている。足を置く場所、顔や体の向き、間合い、タイミングといったディテールを教えられているからこそ、A東京はこの形から相手の守備をたやすく攻略できる。

 今季のA東京は東地区3位ながら、レギュラーシーズンは44勝16敗とリーグ全体で4位の勝率を残した。クォーターファイナルも、得点王・ダバンテ・ガードナーを擁し、リーグ戦は1勝1敗と決して得意とは言えない相手・新潟アルビレックスBBに連勝。シーズン中は田中大貴、馬場雄大、竹内譲次の3選手が日本代表の活動で抜けることが多く、チーム作りに苦しんだ。しかし大一番にしっかり合わせて来ている。

第3戦にもつれ込む確率が上がる準決勝

A東京は地区3位ながらリーグ全体4位の勝率。その実力をいかんなく発揮することができるか 【(C)B.LEAGUE】

 決勝戦は「一発勝負」だが、クォーターファイナル、セミファイナルはいずれも2戦先取で行われる。クォーターファイナルは4カード中3カードが第2戦で決着した。

 昨季までは1勝1敗のタイになると、第2戦が終了した20分後から「10分間のショートゲーム」を行い、それを第3戦とする方式だった。旧bjリーグが採用していた方式を、Bリーグも取り入れていた。しかし今年は第2戦の翌日、もしくは翌々日に第3戦を行う方式に変わった。

 今季のCSはゴールデンウィークと開催期間が重なり、移動手段や宿泊施設の確保、アリーナの確保などで各クラブの負担が大きかったとも聞いている。しかし第3戦のフルゲーム化は、間違いなく「プレイヤーファースト」の仕組みだ。

 秋田ノーザンハピネッツ時代にたびたび10分ゲームを経験した田口成浩(現千葉)はこう説明する。

「あの10分ゲームは60試合やってこれで負けたら終わってしまう、1試合でなく10分で終わってしまうというプレッシャーがありました。レギュラーシーズンは長いですから、1試合で決められるようになって自分はすごく良かった」

 富樫はこう述べていた。

「リーグ戦を見ても分かるように連勝は難しいので、実力がしっかり出るレギュレーションになったと思う。チームとしてそこには自信があるので、まず初戦を勝つことを意識してやっていきたい」

 今季のCSは地力が反映されやすい仕組みになった。セミファイナルになれば実力はより接近し、第3戦にもつれ込む確率も上がる。それはファンにとっても、魅力的な大一番だろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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