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永井謙佑×村上茉愛with石川直宏
サッカーと体操、それぞれの五輪
FC東京の永井謙佑、OBでクラブコミュニケーターの石川直宏、体操女子をけん引する村上茉愛の競技の枠を超えた対談が実現
FC東京の永井謙佑、OBでクラブコミュニケーターの石川直宏、体操女子をけん引する村上茉愛の競技の枠を超えた対談が実現【撮影:スエイシナオヨシ】

 4月第1週の週末は、調布がアツい。


 6日にJ1リーグのFC東京ホームゲームが味の素スタジアムで、7日には2019体操ワールドカップ(W杯)東京大会が武蔵野の森総合スポーツプラザで開催されるのだ。京王線の飛田給駅にほど近いふたつの施設が、日本の、世界の注目を集める。


 幸運な巡り合わせとも言えるこの機会には、他でもない選手たちも胸を躍らせている。


 FC東京の快速アタッカーとして知られる永井謙佑、OBでクラブコミュニケーターの石川直宏、体操女子をけん引する村上茉愛が、春の足音の聞こえる味の素スタジアムで顔を合わせた。アスリートだからこそ共感できるところがあるのだろう。3人の共通点である五輪の経験からそれぞれの競技の魅力まで、絶妙なコンビネーションで会話が弾んでいった。(取材日:3月19日)

永井「期待されていなかった五輪、評価を変えたかった」

U−23日本代表は世間の評価を覆し、ロンドン五輪で44年ぶりのベスト4進出を果たした
U−23日本代表は世間の評価を覆し、ロンドン五輪で44年ぶりのベスト4進出を果たした【写真:ロイター/アフロ】

石川 村上さんは実家が小平市内にあって、高校は府中市内の明星高校だったそうで。FC東京になじみがありますね。


村上 普段の生活のなかで、FC東京のフラッグをよく見ます。3月15日が日本体育大学の卒業式だったのですが、味の素スタジアムの横を通りました。「ここでおふたりと対談をさせていただくの」と、母に話しました。


永井 ぜひホームゲームに来てほしいですね! ファン・サポーターでいっぱいになったスタジアムの雰囲気は最高ですから。今日もエキストラで満員になっているはずだったんですが、ちょっとこちらの手違いで誰もいないんですけど(笑)。


石川・村上 (笑)。


──すでにウォーミングアップは十分ですね。それでは、皆さんに共通する五輪からお話を進めていきましょう。


石川 僕が出場したのは2004年アテネ大会ですから、もうずいぶん前になりますね(苦笑)。五輪の男子サッカーは、基本的に23歳以下の選手に出場資格があります。五輪で活躍して年齢制限のない日本代表へステップアップする、というイメージで臨みました。


永井 僕たちの世代はずっと続いていたU−20W杯の出場を逃してしまって、12年ロンドン五輪でも一番期待されていなかったかも(苦笑)。だから、何とかして評価を変えたいという想いはありました。結果は44年ぶりのベスト4だったのですが、メダルは獲れなかった。


石川 日本国内でプレーしていると、世界の基準に常に触れられるわけではない。当時の僕は世界大会へ臨む難しさとか不安みたいなものを、どこかで感じていたかもしれない。体操はどうですか? 日頃から世界基準で取り組んでいるイメージがありますが。


村上 国内と大会との大きな違いは器具ですね。床フロアなら、日本製と海外製ではバネの硬さが違います。サッカーでも日本と海外では芝生の質が違ったりするのかもしれないですけど、体操は大会のある国によって器具が変わるのです。そこは苦労するというか……。昨年の世界選手権の器具は、自分が体操をやってきたなかで初めて聞くメーカーでした。


永井 ええっ、本当ですか? そんなことがあるんだ……。


村上 器具に慣れていないとけがにもつながるので、そこは毎回悩まされています。


永井 僕はあまり環境を気にするタイプではないので、国際大会でも平常心でやれる方だと思います。


石川 環境と言えば五輪のサッカーは開幕が早くて、開催都市も多いので、選手村には入らないんです。日本選手団の皆さんと触れ合う機会をなかなか持てなくて、五輪に出ているという感覚を抱きにくいかな。何というか、五輪の周りで戦っているような(笑)。


村上 リオ(デジャネイロ)五輪の事前合宿で、サッカーの皆さんと同じホテルに泊まっていました。そう言えば、「準決勝まで勝ち上がればリオに来られる」と話していましたね。


永井 そうですね。ロンドン五輪のときも準決勝まで勝ち上がって、やっとロンドンで試合ができました。五輪がサッカーの他の国際大会と違うのは、対戦相手と同じホテルに泊まるんです。


永井 初戦で対戦したスペインと同じホテルで、相手の選手たちと一緒に卓球をやっていました(笑)。それで試合もする、と。空き時間にチームメートとカフェに行ったりもして、そういうところは楽しめたかな。


村上 私はリオ五輪で選手村を初めて経験しました。体操だけではなく全競技の選手が日本専用の棟に宿泊するので、“ホーム感”がありました。食堂も世界中の料理が用意されていて、ゲームセンターやお土産屋さんがあって、選手村だけで十分に楽しめました。本当に村で生活しているような(笑)。


石川 それはうらやましい! 僕たちサッカーのチームは五輪だけではなく国際大会や海外遠征では、オフは基本的にホテルで体を休めるんです。いまは世界のどこでもインターネットに気軽につなげられるけど、アテネ五輪のときは日本から送られてくるファックスで新聞を読んでいました。


村上 ええっ、大変ですね……。


石川 本をたくさん持って行って、ひたすら読書をしたり。そのうちにやることがなくなって、最後は絵を描いていましたから!


永井 絵って……(苦笑)。

村上「代表になってもらった番号がすごくうれしかった」

村上は代表入りしてもらった「ナショナル番号」を誇りに思っていると話す
村上は代表入りしてもらった「ナショナル番号」を誇りに思っていると話す【撮影:スエイシナオヨシ】

──村上選手がいままさに着ているウェアに、日の丸が着いています。国を背負って戦う誇りや責任は大きいのでしょうね。


村上 私たちは代表選手になると、ナショナル番号をもらえるのです。自分はこの「205」で、これをもらうために頑張ってきましたから、すごく、すごくうれしかったです。代表から外れることがあっても、現役を引退しても、この番号は永遠に変わりません。それは本当に誇りですね。


永井 これから体操の歴史が積み重ねられて、500や1000にもなっていくなかで、村上さんだけの番号ってことですね。それはカッコいいな。


石川 その分、責任も感じますか?


村上 いまは女子の体操を引っ張っていかなきゃいけない立場だと思っているので、日本を背負って演技する気持ちがあります。海外での試合はいつも緊張しますけれど、日本で練習を重ねているので、自分を信じて試合に臨みます。


永井 僕はいま30歳ですが、年齢を重ねるごとに責任は増していきますね。FC東京では上から8番目ぐらい……かな。


石川 Jリーグ全体で見れば、チームとしては若いほうだけどね。


村上 サッカーは年齢層が高いですね。体操の女子は高校生から大学生までがピークです。男子に比べると体が弱いですし、けがをすることもあるので、大学卒業後は違う道へ、という選手が多いかなと思います。私は2年後の東京五輪までは、続けようと思っています。リオ五輪に大学2年生で出場したのですが、メダルを獲れなかったので。


永井 年齢で付け加えれば、僕は若い頃とはあきらかに体が変わってきました。疲労の貯まり具合が……(苦笑)。


石川 年齢とともに体が変わっていくのは避けられないね。けれど、経験値が上がっていくし、駆け引きを覚えていく。自分が謙佑くらいの年齢のときは、相手との駆け引きが楽しくなっていったね。


村上 体操でも年齢が上がってくると戦略が分かってきます。ウォーミングアップや休養も同じで、試合に向けた調整が自分なりに固まってきました。でもやっぱり、若いときはすぐに体が動いたのですが、いまは「これをやって、あれをやって」と準備しないと、体が動きません。体操選手としては年齢が上がってきているので。


石川 22歳で「若いときは」というのが……。


永井 村上さんは大学を卒業したばかりですよね? そのときの自分はどうだったか……Jリーガーになったばかりで、どうやってプロで戦っていくか、ということしか考えられなかった。さっき村上さんが「女子の体操を引っ張っていかなきゃいけない」と話していたけれど、とにかく自分のことで精いっぱいだったような。


石川 僕もそうだよ。21歳、22歳の自分は、プロの世界でどうやって生き残っていくのかを必死で考えていた。自分が活躍すれば、それはチームの力になる。自分が100パーセントの力を発揮できるように、ということに集中していたね。


永井 サッカー選手だと、年齢が上の選手に挑んでいく時期ですからね。

戸塚啓

1968年、神奈川県出身。法政大学第二高等学校、法政大学を経て、1991年より『週刊サッカーダイジェスト』編集者に。98年にフリーランスとなる。ワールドカッ1998年より5大会連続で取材中。『Number』(文芸春秋)、『Jリーグサッカーキング』(フロムワン)などとともに、大宮アルディージャのオフィシャルライター、J SPORTS『ドイツブンデスリーガ』などの解説としても活躍。近著に『低予算でもなぜ強い〜湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地』(光文社新書)や『金子達仁&戸塚啓 欧州サッカー解説書2015』(ぴあ)がある

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