厚底vs.薄底 東京マラソンで履くならどっち? 箱根ランナーたちに聞くリアルな履き心地 ―アディダス編―

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【写真:森田直樹/アフロスポーツ、YUTAKA/アフロスポーツ】

 最近の陸上長距離界では厚底シューズが話題を集めていますが、薄底シューズも負けてはいません。シューズメーカー各社がしのぎを削り、最先端の技術を駆使した最新モデルが次々とリリースされています。

「東京マラソンでどのシューズを履くべきか……。どれも良さそうでわからない!」と悩んでいるみなさんへ、実際に各社のシューズを履いて箱根駅伝を走ったランナーたちの生の声をお届けします。

 今回は、今年の箱根駅伝で3区を走った岡原仁志選手(法政大学)、4区を走った有馬圭哉選手(中央学院大学)に、アディダスのシューズのリアルな履き心地を聞きました。

走りやすさ以上にタイムがついてくるので驚いた

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――アディダスのシューズの気に入っている点は?

岡原 試合ではアディダスの「Adizero Sub2」というシューズを履いていますが、クッション性がかなり気に入っています。ソールに柔らかいクッション素材が入っているので、走りやすいです。練習用のシューズもシューズ全体が柔らかい作りになっていて怪我をしにくいと思います。今までにない作りだったので興味が沸いたのと、ロード向きという話も聞いていたので一回試しに履いてみようかなと。また、僕はかかとから接地するタイプなので、自分のフォームに合ったシューズなんだと思います。

――実際に履いて走ってみた感触は?

岡原 最初はそんなに違いを感じなかったのですが、試合で使ってみると、走りやすさ以上にタイムがついてくるので驚きました。「走りやすいな」というくらいの感覚で走っていたら、結果、タイムが縮まっていたんです。このシューズになって結構タイムが伸びた実感がありますね。5000メートルの自己ベストが14分17秒から、14分9秒まで伸び、箱根駅伝と出雲駅伝はあまりいい結果ではなかったのですが、全日本大学駅伝では区間5位の結果を出すことができました。このシューズの力もあったのかなと思っています。

――普段のシューズの使い分けは?

岡原 練習用のジョグシューが2足、強度の高いポイント練習で使うシューズが1足、試合用に1足の計4足くらいのシューズを使い分けています。使う頻度はジョグシューが一番多くて、ポイント練習は週2日くらい。これは実際に試合で使ったシューズですが、練習で3回ほど使ってから試合本番に臨みます。

シューズの最大性能を引き出すために、あまり履きすぎない

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――ジョグシューとレース用シューズの違いは?

岡原 まず、ソールのクッションの作りが違います。アップ用に使うジョグシューはクッション性が高く、少し重たくできています。比較的長めの距離をこのシューズで走りますが、スピードは出にくいかなと思います。レース用のシューズでは長すぎる距離を走らないので、スピードに特化している印象ですね。また、ジョグシューはシューズ裏側に黒い突起がたくさんついていますが、レース用のシューズには付いていません。

――怪我をしにくくなったとのことですが、具体的には?

岡原 大学に入学してからアディダスのシューズを履いてから格段に怪我が減りました。高校の時は疲労骨折やシンスプリント、腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)を痛めたり、しょっちゅう怪我に悩まされていました。足の甲や腓骨、くるぶしなどいろんな部位に痛みが生じていたのですが、薄すぎるシューズを使っていて、足にダメージがあったのだと思います。アディダスのシューズはクッション性が高いので、足へのダメージが少ないのだと思います。

――長い距離を走った時の疲労感は?

岡原 他のメーカーのシューズは履かないので比較はできませんが、自分がきつくなった時に違いが出るかと思います。最初はどのシューズもあまり変わらないかなと思っていましたが、最後にきつくなって、フォームが崩れはじめた時にシューズが手助けしてくれているのではないかなと。

――最後に一般ランナーに向けて、シューズ選びのアドバイスを。

岡原 市民ランナーの方は大学生や実業団の選手ほど走り込むわけではありませんし、膝などを痛めてしまう方が多いので、クッション性が優れているシューズを選んではどうでしょうか。東京マラソンは長い距離を走るので、ソールを薄くしたところであまり変わらないかなと思いますし、重たいシューズでも構わないので、怪我をしにくいシューズを僕はオススメしたいですね。あと、シューズは履くたびに少しずつバネの力が減っていくと言われているので、試合本番でシューズの最大性能を引き出すために、あまり履きすぎないことがポイントかと思います。

厚さよりも足の形に一番フィットするシューズを選ぶ

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――レース用シューズを選ぶポイントは?

有馬 自分は厚さ云々よりも、自分の足の形に一番フィットするシューズを選ぶことを一番に考えています。自分の足はアーチ(土踏まず)が高めで、少し細身。いろいろ履き比べた結果、アディダスのシューズが一番自分の足にフィットしたんです。大学に入学して半年くらい経った頃にアディダスのシューズを履き始めて以来、ずっと愛用しています。

――実際に履いて走ってみた時の感触は?

有馬 ソールにBOOSTフォームという素材が入っていて、接地してからの蹴り出しがスムーズ。楽に足を蹴っていけるところがすごくいいなと初めて履いた時に感じました。このシューズを初めて履いた試合ですごくいい走りができたので、その時からこのシューズにしようと。箱根駅伝もかなり前からこのシューズで走ると決めていました。

――デザインは気にしますか?

有馬 まったく気にしていません(笑)。試合で履くのであれば大学のユニホームに合うものを選びますが、普段はそこまで気にしていないです。自分は緑が好きなので、気にするとしたらそこくらい。でも、シューズを新調するといつもうれしい気持ちになります。

――普段のシューズの使い分けは?

有馬 自分は速いスピードで走るポイント練習での1足と、ジョグ用の「Adizero Japan」というシューズの2足しか使っていません。練習で履いているものを、試合でも履いています。大事な試合だけは本番の2、3週間前に購入して、少し慣らして、ほぼ新品に近い状態で試合に臨むようにしています。

――シューズはどれくらいの期間で交換を?

有馬 今のシューズは全日本大学駅伝の頃の、11月〜12月くらいに買いました。かなりすり減ってきたので、買い替えようと思っているところです。自分の場合は3〜4カ月くらいですね。すり減り具合は人によって違い、1カ月で買い替える人もいれば、半年も使う人もいるので、人それぞれですね。ガンと地面を強く蹴るタイプの人は交換頻度も高いと思いますが、自分はどちらかというと地面にトントンと足裏全体を乗せて走るタイプなので、そこまですぐにすり減らないと思います。

試着、購入する時は夕方がオススメ……その理由は?

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――フィット感だけでなく走り方によって合う、合わないシューズがある?

有馬 アディダスのシューズは基本的に薄底ですが、少し厚めかなとは思います。確かに薄いのですが、一番クッション性があるように感じます。自分は固いソールで地面の反発をもらって走るタイプのシューズだと、すぐに足がダメになってしまいます。自分は薄いシューズが好きで、なおかつクッション性があるというところで、アディダスのシューズが一番合っていると感じています。

 また、アディダスのシューズは、前足部のソールが他のシューズと比べて厚くなっています。レース終盤、腰が落ちてしまう人はこの部分が薄いと接地する時に前腿への衝撃が大きくなります。自分もまだまだ筋力不足でどうしても腰が落ちてしまい、前足部のソールが薄すぎると足がすぐに張ってしまうんです。そういう意味で、アディダスのシューズはブースト素材が入っているので、足の負担が軽減されるんです。

――最後に一般ランナーに向けて、シューズ選びのアドバイスを。

有馬 流行りに惑わされず、本当に自分の足に合っているものならば厚底・薄底関係なく、どちらでもいいと思います。結局は自分の足に合っているかどうかなので、他人の意見を気にしないで、自分のフィット感を大事にしてほしいです。

 ショップでシューズを試着する時は、試合で履く靴下を履いていくといいと思います。試合では薄い生地の靴下を履くので、フィット感が全然違ってきます。また、自分は試合用のシューズは練習用のシューズよりも0.5センチ小さいサイズのものを履いています。あまりきつ過ぎると足が故障しますが、試合の時だけはブレがないように走りたいので、試合の時だけは0.5センチ落として、練習ではゆとりを持ったサイズのシューズを履くようにしています。

 試着、購入する時は夕方の方がオススメです。なぜなら、夕方になると足がむくんでくるので、朝にジャストサイズのものを買ってしまうと、夕方に履いた時に足がむくんできつく感じます。きつすぎるよりも少しゆとりがある方が故障につながらないと思うので、今度シューズを買う時は、一番足の状態が大きい夕方に行くのがベストだと思います。

【写真:森田直樹/アフロスポーツ、YUTAKA/アフロスポーツ、スポーツナビDo】

厚底vs薄底 東京マラソンで履くならどっち? 箱根ランナーたちに聞くリアルな履き心地
第5回:ナイキ編(3月1日掲載予定)
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習慣的にスポーツをしている人やスポーツを始めようと思っている20代後半から40代前半のビジネスパーソンをメインターゲットに、スポーツを“気軽に、楽しく、続ける”ためのきっかけづくりとなる、魅力的なコンテンツを提供していきます。

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