安部×杉岡×前田 東京五輪世代対談  Jでしのぎを削り、見据える大舞台へ

元川悦子

東京五輪代表の有力候補である3人に、今シーズンの意気込みなどを聞いた。写真は左から前田、安部、杉岡 【スポーツナビ】

 2020年東京五輪まで1年半。その大舞台を目指すU−22世代にとって、19年Jリーグでのパフォーマンスは非常に重要な意味を持つ。森保一監督が五輪代表と日本代表の指揮官を兼務していることもあって、東京五輪行きは22年ワールドカップ・カタール大会の出場に直結するという見方もある。それだけに、「何としてもメンバーに入りたい」と意気込む若手は少なくないはずだ。

 18年Jリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞した20歳の安部裕葵(鹿島アントラーズ)、18年JリーグYBCルヴァンカップMVP賞に輝いた20歳の杉岡大暉(湘南ベルマーレ)、そして今季J1に初参戦する韋駄天・前田大然(松本山雅FC)の3人はその有力候補と位置付けられている。進境著しい彼らに今季J1への思いを聞いた。(取材日:2月14日)

前田「今季の目標は試合に出て、2桁ゴールを取る」

東京五輪のメンバー入りに向け重要な今シーズン、前田は「目標は2桁得点」と意気込む 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――3人は仲が良いんですか?

安部 タイゼン君とは初対面です。

前田 ダイゼンだけど(笑)。

安部 すみません(苦笑)。

前田 全然、大丈夫(笑)。

杉岡 僕も安部君とはプレーしたことがないけど、大然君とはアジア大会とかU−21代表で一緒になっていますね。

前田 (逆サイドにいる)杉岡君から僕にはボールが来ないんです(苦笑)。

杉岡 大然君は速いので、自分がパスミスしても追いついてくれるんです。逆サイドにいるんですけど、少しボールがブレても裏に落とせば拾ってくれるので、すごくありがたいと思っています。

――東京五輪が迫る中、今季は非常に重要なシーズンになりますが、それぞれの思いは?

前田 五輪メンバーに入って活躍して、優勝できたらいいと思っているので、そのためにも今年はチームで絶対に試合に出ないと話にならない。試合に出て、2桁のゴールを取れればいいなと思っています。

安部 僕の目標は国内タイトル3冠とACL連覇。特にJリーグ優勝とACLを重点的にやっていければいいかなと思います。

杉岡 自分もJリーグタイトルを目指して戦います。ACL出場圏内を目標に戦って、カップ戦はルヴァンカップも天皇杯もどっちも取るつもりでやります。

――今季はチームの中での立ち位置も変わりましたが、開幕前の現状はいかがですか?

杉岡 トルコキャンプに行って、海外のチームともタフな試合がたくさんできましたし、昨年からさらに積み上げていけると思うので、それを開幕からしっかり出していければいいですね。背番号も5番になって、責任ある番号だと思うし、それに見合うプレーができるようにしたいです。

安部 偉大な先輩である小笠原(満男)選手が抜けたり、鹿島には刺激的なことがいろいろありました。それを強くなるきっかけにして変化することが重要だと思います。背番号に関しては、30番だろうと10番だろうとプレーすることは一緒。ただ、周囲の目やプレッシャーが変わると思います。そういうものを力に変えられなければ、スポーツ選手には向いてないのかなと。自分はスポーツ選手らしい一面を見せたいですね。

前田 ホンマ、しっかりしてますよね……。質問の内容、忘れました(笑)。ああ、今季の山雅ですね。チーム状態は徐々に良くなってきています。(開幕まで)あと1週間くらいなので、キャンプでもっと良くできる。今年は新戦力が多い分、よりコミュニケーションを取る必要がありますし、もっともっとチームのみんなと喋っていけば、強くなれると思います。

杉岡「湘南と山雅はライバル。今年は上位争いをしたい」

松本を「ライバル」と位置づけた杉岡。「今年は上位争いをしたい」と話す。写真は昨シーズンのもの 【(C)J.LEAGUE】

――お互いをどう見ていますか?

前田 安部君のことはよく見ていますけど、ホンマうまいですし、点も取れるし、アシストもいける。途中から入ってきても流れを変えているなって印象がありますね。杉岡君の印象? ないです(笑)。今年はマッチアップするかもしれないけど。

杉岡 とにかく速いので、スピードに乗せないようにしたいです。湘南と山雅はライバルチームで、これまでは下位争いでバチバチした試合をしていたけど、今年は上位対決でそういう戦いができればいいですね。

安部 僕も2人には注目していますけど、杉岡君はパワー、スピード、身体能力の高さがある選手。大然君も同じで、身体的レベルの高さはサッカーをしていない人が見ても分かるはず。僕にはそういう部分が少し欠けているので、違う部分で勝負したいです。

前田 カシマスタジアムで試合をするのは、ホンマ楽しみですね。水戸(ホーリーホック)にいた時に1回、見に行ったことがあるけど、応援がすごかった。僕は鹿島の応援歌が好きなんです(笑)。

安部 サポーターの熱さっていうのは、山雅にも共通する特長ですよね。それをテレビで拝見したこともありますし。そういう環境でプレーできることは選手にとってすごく幸せ。それを大切にして、楽しんでプレーできたらいいと思っています。

杉岡 僕も鹿島戦は独特の雰囲気を感じます。応援も一味違うし、すごい伝統があるなと。去年の対戦もホーム・アウェーともにアディショナルタイムで勝ち負けが決まったけど、相当に拮抗(きっこう)していました。ACL王者ですし、立ち向かう気持ちでやりますし、勝ちたいです。

安部 僕は湘南戦で腰の骨を折った苦い経験があります。それも含めてサッカーかなと。湘南と松本はとても走るチーム。僕個人は走るのは嫌いですけど、タフなゲームは好きなので、それを楽しみたいと思っています。

3人は互いにどんなイメージを持っているのだろうか 【スポーツナビ】

――それぞれと対戦した場合、脅威となる部分とそこをどう抑えるつもりですか?

前田 安部君はホントにうまい選手なので、プレッシャーを速くして簡単にさせないことが大事。山雅がそういうチームなので、絶対にやらせないようにしたいと思います。

安部 大然君は走行距離やスプリント能力が非常に優れているので、その長所を逆手に取って走らせたりするのが賢さだと感じます。杉岡君も前に強いし、攻撃参加もすごく魅力的。去年のルヴァンカップ決勝ではあれだけの強烈シュートを決めてますからね。

杉岡 まあ、あれはラッキーだったけど(笑)。

安部 ただ、長所が短所にもなると思うので、僕としてはそこをうまく使えるように、賢くやりたいです。

杉岡 安部君は攻撃で違いを作れるので、なるべくボールに触らせないようにしっかりタイトについていきたい。大然君もスピードがあるから、スペースを与えないようにしたいと思います。自分たちが攻撃で押し込めれば、2人の攻撃力も抑えられるはず。そこも意識しながらやりたいですよね。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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