新体制発表会をライブ配信してみた 「IT活用でJクラブは変わる」第6回

えとみほ(江藤美帆)

インスタライブの強力なメリットとは

 ここまでの話の流れからすると、今後のライブ配信はツイッターの一択だと思えますが、実はインスタライブにも強力なメリットがありました。それは、「フォロワーが増える」ということです。

 ツイッターライブとインスタライブの大きな違いは、ツイッターはアカウントがなくても視聴できるのに対し、インスタグラムはアカウントがないと視聴することができないということです。また、ツイッターはリツイート機能があるため、フォロワー以外の人が偶然目にして視聴を始めることがありますが、インスタライブは拡散機能もなく更新の告知もフォロワーのみにしか行われないため、視聴対象はほぼフォロワーのみに限られます。

 このため、今回の配信でもインスタライブを視聴するために多くのサポーターが栃木SCのインスタアカウントをフォローしてくれました。数値としては、告知から配信終了までの5日間で500人近くフォロワーが増加しています。これは、栃木SCのインスタグラムアカウント開設以来、過去最高の増加ペースになります。

インスタライブvs.ツイッターライブ。フォロワーを増やすならインスタ、PVを増やすならツイッターと言えそう 【提供:江藤美帆】

 実はインスタグラムには「モノが売れる」という実利に直結するメリットがあり、栃木SCではグッズやチケットのオンライン販売を促進するために、2019年シーズンからインスタグラムのフォロワー数を増加させる施策を打つことを検討していました。新体制発表会など、多くのサポーターが見たいであろうイベントをライブ配信することにより、劇的にフォロワーを増やすことが可能だということが分かっただけでも、今回の実験の意義はあったのではないかと思います。

私がYouTubeではなくライブ配信を選んだワケ

 ところで、動画の配信というと多くの人は真っ先にYouTubeチャンネルが思い浮かぶのではないかと思います。確かに、YouTubeチャンネルはアーカイブ性に優れ、配信が終わったあとも検索で長く視聴されるというメリットがあります。

 しかし、私は今回あえてYouTubeチャンネルを選択肢から外しました。というのも、今回の目的は「作り込んだ動画を披露すること」ではなく「場の空気を共有すること」だったからです。これが目的であれば、24時間でパッと消える、あるいはタイムラインから流れてしまうくらいが丁度いいのです。

 ライブ配信の良いところは、ハートや絵文字を送ったりコメントを送ったりと、みんなでワイワイガヤガヤ交流しながら空気を共有できることだと思います。それは、スタジアムでサッカーを観戦するときの感覚に似ています。今はオフシーズンということもあり、そういった場がなかなか作れないので、だったらせめてインターネットを介して、離れた場所にいる者同士があたかも同じ場所にいるかのような一体感を感じられる場を提供したいと思いました。

 ちなみに、今回のライブ配信では、地元出身でチーム随一の人気選手、西谷ツインズの西谷和希選手の契約更新を同時に発表するというサプライズもあったのですが、その瞬間のライブ映像は歓喜のコメント、ハートが乱舞して、会見の現場以上に大変な熱狂が生まれました(余談ですが、この後10番のユニフォームが飛ぶように売れています)。

西谷和希選手が背番号10を背負って登場した瞬間。この配信はスタジアムの収容人数を超える1.7万人が視聴 【提供:江藤美帆】

 和希選手自身がメディアのインタビューでも語っているように、今回は他クラブからもオファーがある中、ギリギリまで悩んだ末に栃木に残ることを選んでくれたということもあり、私も登場シーンでは泣きそうになりました。

 そんなスペシャルな瞬間を、その場にいないスタッフやサポーターとインターネットを通じて分かち合えたことは、フロントスタッフ1年生の私にとってもかけがえのない経験になりました。

 IT技術は、上手に活用すればリアルを淘汰(とうた)するものではなくリアルを補完するものになり得ます。これからもスポーツ観戦の醍醐味(だいごみ)である「ライブ感」を補完するものとして、さまざまなインターネットサービスを活用していきたいと思います。

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著者プロフィール

Jリーグ・栃木SC、マーケティング戦略部長。外資IT企業、大手ネット系広告代理店勤務などを経て、スマホで写真が売れちゃうアプリ「Snapmart」を開発、ピクスタ100%出資子会社のスナップマート株式会社の代表取締役に就任。2018年3月に代表を退任し、5月より現職

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