監督・主演メイウェザー 日本中が踊らされた巧みな自己演出
「当たり前」を打ち消した演出
前日計量でも余裕の無敗王者 【写真:Shutterstock/アフロ】
しかし試合に関して発言する場面で、メイウェザーは「エンターテインメント」「エキシビションマッチ」といった言葉を多用。倒してやらん、“勝負”と意気込む那須川サイドを逆なでした。
時差調整もお構いなしのわずか2日前の来日、ウォームアップもままならない開始直前の会場入りと、メイウェザーの態度は完全に“舐めている”それであったが、終わってみれば那須川を打ち気にさせる作戦の一環であったのか。
遅れてきた身でありながら、メイウェザーは「確認していない」と一度巻いた那須川のバンテージの巻き直しを要求。入場からリングインした後も余裕の態度を崩さず、念入りに試合への“準備”を組み立てる。
試合序盤、メイウェザーの右ストレートをかわして左ストレートを当て、素質の高さと当て勘のよさを見せた那須川だったが、そこから後はメイウェザーの独壇場。体格差を利して前へ出ると、那須川のパンチを誘い、そこへカウンターを合わせて3度のダウンを立て続けに奪ってTKO。強さをまざまざと見せつけた。
ダウンする那須川と笑みを浮かべるメイウェザー 【(c)2015 RIZIN FF】
王者のすごみはリンク上にとどまらず
「ショー」や「エキシビション」といった言葉を連呼し遊びムードを演出したメイウェザーはスパーリングのような戦いを展開するのではと思われたが、試合では一気に倒しにかかり那須川を仕留めた。発表会見から試合までで醸成された、“遊び半分”といった偽りの空気にしてやられた思いがした。
試合後は予定されていなかった取材に応じた。これも演出の仕上げなのか 【写真:ロイター/アフロ】
公式記録にこそ傷はつかないが、初のノックアウトを喫する形となってしまった那須川。しかしスパーリングですら困難であろうメイウェザーとの“勝負”を叶えたことは、何物にも代えられない財産になりえる。那須川自身も試合後、「フェイントの仕方だったりポジショニング、パンチの打ち方を真似というか盗もうと思ってます」とコメント。素質はもちろん、その吸収力こそ“神童”である那須川だけに、二十歳の今からどのように自分の実としていくのか注目したい。
対戦相手だけでなく、ファンの気持ちと関心も巧みに操作したメイウェザー劇場。平成最後の年末に、50戦無敗を築いた何たるかを見せ、幕となった。