往路6位の青学大、5分半の逆転は可能か? 箱根駅伝・往路を駒大OB神屋氏が解説
“絶対王者”青山学院大が6位の波乱となった箱根駅伝往路を神屋伸行氏が解説 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】
東洋大は1区の西山和弥が2年連続の区間賞を獲得する走りで勢いをつけると、4区では3年生エースの相澤晃が区間記録を大幅に更新する快走で首位浮上。5区でもリードを守り2位・東海大と1分14秒差でゴールテープを切った。
優勝候補の青山学院大は3区のエース・森田歩希が区間新記録の走りでトップに立つも、4区の岩見秀哉、5区の竹石尚人が振るわず、東洋大の後塵を拝す結果となった。
青山学院大はなぜ失速したのか、復路に向けての展望は――駒澤大の元エースで、現在はランニングアドバイザーを務める神屋伸行氏に聞いた。
まさかの6位・青学大に「らしくない雰囲気」
青山学院大がいつもと違う形になりましたね。(股関節の故障で)心配されていた森田選手が3区に起用されて区間新記録をマークし、いい位置で4区につなぎました。4区では岩見選手が東洋大の相澤選手に抜かれ置いていかれましたが、(青山学院大としては)ある程度は想定していたことだと思うんです。その中で4、5区の元気がなかったのは気になります。(総合5連覇が)黄色信号なのか、もうデッドラインを超えているのかは分かりませんが、東洋大、東海大を中心に青山学院大の連覇をストップできる展開になっているのかなと思います。
――「青山学院大がいつもと違う」というのは?
いつもでしたら森田選手が区間新で走ってトップに立つと、前回大会で言うと7区の林(奎介)選手、過去には3区の秋山雄飛選手のように、そのまま勢いに乗って、過去に起用されたことのない選手も100パーセントの力を発揮して、来季のスター候補に名乗りを上げる。そういった形で連覇を積み重ねてきたのだと思います。「神野(大地)選手が卒業したら来年は厳しいかも」などとささやかれても、レースの中で育てて次の年につなげていました。それが今回その位置にいるはずの4区・岩見選手、5区・竹石選手の両選手が良くなかったので、そこは青山学院大らしくない雰囲気がありますね。
――往路優勝は東洋大。2位には東海大が入りました。
東洋大は何より、1区の西山選手が今季少し調子が悪い中で復調して、しかも区間賞を取りました。ここで流れをつかんだと思います。1、2区は中央大も素晴らしい展開を見せましたが、東洋大は2区の山本(修二)選手が中央大の堀尾(謙介)選手についていくことでより力が引き出されたのだと思います。そしてとどめに4区相澤選手が区間新記録、しかも旧コースを含めても最速というとんでもない走りを見せたので、ここで東洋大は計算以上に後ろを引き離せたのではないでしょうか。
東海大は特別この選手というよりも、本当にきちっと力を発揮して、堅実に前を追ってきた感じがしたので、ほぼ取りこぼしがなかったのではないかと思います。計算どおりの展開で、東洋大、東海大が先行していったのではないかと思います。
育成に長けたチームが上位に
“絶対王者”青学がいて、その包囲網として東洋大、東海大、さらに駒澤大が予選会で好結果を出して一つ抜け出した……という形で言われてきましたが、それ以外はそんなに力の差がなかったのではないかと思います。ただ、個人の1万メートルやハーフの記録が向上してきて、どのチームもだんだん鍛え上げられて強くなってきています。例えば国学院大はエースの浦野(雄平)選手を5区に回しても、前半からずっといい位置をキープできたので、駒澤大より上の順位でゴールしました。今回は往路にほとんど使ってしまいましたが、復路に戦力を残していれば優勝候補に挙げられてもおかしくない位置です。しかも、往路を走った5人は(3年生以下なので)この春誰も卒業しません。そういう意味で、うまく選手を育ててきている感じがします。
法政大は完成してきている部分があります。(前回5区区間賞の)青木(涼真)選手という駒を生かして、苦しいながらも順位を上げてきました。それぞれのチームが持っている札を生かしながら、そこを機転に育成してきちんと育ててきている印象がありますね。
――往路は全体的に順位変動がかなり激しいように感じました。
以前は、今回の明治大で言えば阿部(弘輝)選手のようなランナーを2区に投入すればぐっと順位が上がりました。でも、今はそうはいきません。一人でも取りこぼすと青山学院大ですらここまで順位を下げてしまいます。それくらいすごくハイレベルになったと思います。最後は小雪が降りましたが、今回は全体的に気象条件も良かったので高速レースになりました。それもあって、なおさらうまく選手を育てているチームが上に上がってきたのかなと思います。