“大幅緩和”のゴルフ新規則が1月施行 プレーの短縮と簡素化で競技人口増なるか
分かりにくく複雑な現在のゴルフ規則
「ドロップの高さは膝の位置から」など、従来から大幅に緩和されたゴルフの新ルールが2019年1月から適用される 【写真:ロイター/アフロ】
ところが、首都圏22店舗でゴルフ用品販売店を経営している有賀園ゴルフの有賀史剛社長は、さらに辛く見る。「厳密にいえば0.1%でしょう。ほぼ全てのゴルファーはルールの詳細を理解していないと思います。ゴルフ場の月例競技は仲間内で楽しむのが目的なので、プロレベルの厳しい競技とは違いますから」。
うなずける話だ。ゴルフ場はさまざまな気候風土の土地に造成されるため、プレー中には予期せぬ事態が発生する。その対処法を「判例」としてまとめ、屋上屋を重ねる形で細分化したのがゴルフ規則。それだけに、理解に苦しむ箇所も散見される。
ユニークな一例が「穴掘り動物」だ。規則第2章の用語の定義には「異常なグラウンド状態」があり、その1つにコース上の「穴」がある。モグラなどの穴掘り動物が掘った穴に入ったボールは無罰で救済を受けられるが、イノシシや犬、その他の動物によるものは除外される。するとゴルフ規則は、穴掘り動物とは何かを定義する必要に迫られるわけだ。
2019年1月施行の新ルールでは「動物の穴」と改められるが、審判不在のスポーツだけにあいまいな解釈を許さない。その厳密さが、規則の分かりにくさを助長している。
「規則の近代化」で簡素化を目指す
R&AとUSGAにより、それまでの複雑な規則の見直しがなされた(写真は現行のルールブック) 【写真は共同】
『規則書の言葉は難解で(中略)、いくつかの規則の結論は過度に技術的な内容を反映し、重箱の隅をつつくように思われている。その複雑さのせいで若いゴルファーやゲームに馴染んでいない人にとって、規則は脅威的で不快(後略)』。文面には、ゴルフ規則を厳密にしすぎたことへの両団体の猛省がにじんでいる。
どのスポーツ団体も競技人口の拡大に躍起だが、ゴルフ界も例外ではない。R&Aの報告によれば、世界の登録ゴルファー数は2012年と比較して2.4%減少しており、英国では4.3%減、米国は7.9%減(スポーツマーケティングサーベイ社が2017年に調査)と深刻だ。
規則の難解さだけがゴルフ人口減少の理由ではないにせよ、阻害しているであろう要因は極力排除したい。それが来年1月に施行される規則の大幅緩和につながった。ゴルフ規則は4年に一度、夏季五輪年に改定されるのが通例だが、今回は1年の前倒しで東京五輪の前年に施行される。
主な改定箇所は後述するが、現行34条のプレー規則を24条に簡素化する。日本ゴルフ協会(JGA)の竹田恆正(つねただ)会長は「ルールの簡素化はプレー時間の短縮につながるはず。ゴルフへの敷居が低くなって、若者需要の活性化も期待できます」と好感を持っている。
膨大な議論の末、駆け込みで決定
その一例がバンカー内の禁止項目だ。現行規則ではルースインペディメント(石や枝等の自然物)を取り除けないが、新規則は『バンカーショットは砂への挑戦』と再定義して、無罰で取り除けるようにした。「ショットの本質的な意味を議論して、余分な概念を省きました。これを各項目で行ったため膨大な議論になりました」と、大久保部長は説明する。
改定には多くの時間が費やされた。R&AとUSGAは2012年から5年間、規則改定のための合同委員会を設置して議論を重ね、昨年3月に骨組みが固まった。同年8月までを関係者からの意見聴取期間とし、それをもとに9月からの議論で細部を詰めた。その結果、英語版の規則書は今年9月、日本語版は11月の出版にこぎ着けたが、新ルールの施行まで2カ月を切る駆け込みだった。