松本山雅がJ1に定着するには? 2度目の挑戦で乗り越えるべき課題
右肩上がりのサイクルを作り、環境面の改善を
36歳の田中(写真左)ら、主力の年齢層が高いことは気がかりだ 【Getty Images】
15年当時は試合翌日の10時から小学生の大会が開かれるため、松本山雅の主力組が朝8時半からクールダウンを行うような状況も見受けられた。その後は松本市の協力はじめグランドキーパーの方の努力もあり、今季は平日4回のうち3回は天然芝で練習できるようになったという。サンアル隣の天然芝グラウンド、松本歯科大など別の施設を利用できるケースも増え、田中も「自分が移籍してきた14年に比べると相当に恵まれている」と前向きに話す。
かりがねに隣接するクラブハウスでも改革が進んでいる。この11月には喫茶山雅の協力をあおぎ、練習直後に会議室でビュッフェ形式のランチを食べられるようなテストを実施したところ、かなり好評だったようだ。目下、選手たちにヒアリングを行っているが、来季もできる限り継続したいとクラブ側も考えている。いいパフォーマンスを発揮するためにも、練習・栄養・メンテナンスが一体化していることは必須条件。それが少しずつそろいつつあるのは、前進と言っていい。
しかしながら、練習場とクラブハウスが一体化した専用施設でなければ、自由にならない部分はどうしてもある。今のかりがねは練習場が松本市、隣接するクラブハウスは松本山雅の保有となっていて、両方をリンクさせながら物事を進めるのに試行錯誤している状況にある。さらに、かりがねは12月から2月まで芝生の完全養生期間に入るため、プレシーズンは一切、地元で練習できず、5週間県外でのキャンプを行っている。「選手のストレスはわれわれが感じる以上に大きい。雪の降る冬季もトレーニングできるようなドームなどがあったら理想的だが、現実は簡単ではない」と柴田氏も頭を悩ませているだけに、充実した練習拠点を整備することは近未来のチームにとって重要課題のはずだ。
本拠地・サンアルの方も松本空港の管理区域に入っていることから増設が困難で、屋根をかけることも至難の業だ。現時点でJ1ライセンスは取得できているものの、仮に松本山雅がJ1で大躍進を遂げ、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場するようなことになれば、今のスタジアムではACL基準を満たさない。2015年から新スタジアム建設の長期ビジョンをクラブは打ち出しているが、それもサンアルの観客動員が恒常的に満員になってからの話だろう。
J1で2連覇を達成した川崎フロンターレの例だと、18年の平均観客数が2万3165人、後援会の会員数も4万3878人とそれぞれ過去最高を記録し、19年のシーズンチケットを購入できないファンが続出しているという。等々力陸上競技場は23年頃をメドに3万5000人規模に拡張する計画があるが、今の機運がスピードを早める可能性はある。松本山雅も継続的にJ1でプレーし、サンアルが恒常的に満員になれば、何らかの動きが加速するかもしれない。そうやって右肩上がりのサイクルを作っていくことが肝心だ。
「短期的にはJ1に最低でも3年とどまることを考えたいですね。そうすれば、一応『J1定着』と言えると思うので。全ての循環がいい方に回っていくように、会社も現場も一丸となって頑張っていきます」
柴田氏の話に期待しつつ、2019年の松本山雅の飛躍を祈りたい。