真壁刀義はプロレス界の倫理委員長!? 東京03豊本のプロレスあれこれ(特別編)

構成:スポーツナビ

「東京03豊本のプロレスあれこれ」特別編として“スイーツ真壁”こと新日本プロレスの真壁刀義選手(右)とスペシャル対談 【スポーツナビ】

 今月、連載最終回を迎えたスポーツナビオリジナルのプロレス連載コラム「東京03豊本のプロレスあれこれ」。2016年11月から約2年間、「特技:プロレス観戦」という東京03・豊本明長さんらしいマニアックなテーマの記事を掲載してきた。

 連載終了後の特別編として、“スイーツ真壁”こと新日本プロレスの真壁刀義選手とスペシャル対談を実施。2人の出会いから、最近の新日本の躍進まで、プロレス好きの2人による甘辛トークが展開された。

 一部、放送コードに触れそうな話題もあったため割愛部分もあるが、プロレスに熱い2人の声を是非、聞いて欲しい。

実は「ウレロ」の大ファン!?

「いつも甘いものばかり食べているから甘さ控えめのスイーツで」と豊本さんからお土産 【スポーツナビ】

――まずはお2人の面識は?

真壁 俺はテレビ東京の「ウレロ☆シリーズ」()が大好きでね。あれを見て、すげ〜笑ってましたよ。ずっと録画して見てました。

豊本 マジですか! なんで最初に言ってくれないんですか?

真壁 そんなこと言うわけないじゃねぇかよ(笑)。劇団ひとりさんとか、バカリズムさんとか、彼らと絡んでボケかましているところが面白くて、東京03の飯塚(悟志)さんも角田(晃広)さんも「この人たち、面白れ〜な」と。それに(飯塚さんは)レッドシューズ海野レフェリーに似ているなと。

豊本 あ〜! 肌の質感が似ていますね。

――では真壁選手は結構前からご存知だったと。

真壁 そうそう。一方的に知っていただけですけど。

豊本 それを言ったら僕も一方的に見てましたよ!(笑) しかも、真壁さんがG1で優勝した2009年は、僕らが「キング・オブ・コント」で優勝した年ですからね。

真壁 本当かよ! それは、すげぇな。思い出深いね。初めて聞きましたよ。

豊本 最初に会ったのは、『タモリ倶楽部』です。東欧パブの美女たちに囲まれて(2014年7月放送)……。

真壁 そうだ、そうだ! すげ〜酔っ払ってね。あれ、本当に飲ますんだよな。

豊本 自家製ウォッカを飲まされてね。僕は本当にお酒が飲めないから、口をつけるだけでも頭が痛くなりましたよ。

真壁 まじっすか? 俺もそんなに強い方じゃないんだけど。ただ、飲めと言われたら飲まないといけなくて。先輩との縦の関係があったんで。それで普通に飲んでましたね。

「ウレロ☆シリーズ」=テレビ東京系列で2011年から放送が始まったシチュエーションコメディのドラマシリーズ。劇団ひとり、バカリズム、早見あかりと一緒に東京03の3人もレギュラー出演している。

デスマッチで目覚めた価値観

WEWのリングに上がっていた時期が「一番ギラギラしていた」と話す真壁選手 【スポーツナビ】

――そのほかのメディアでも共演されたことはあるとのことですが、お互いかなり前からご存知だったということですね。

真壁 でも、いろいろあったね。「ウレロ☆シリーズ」を見ていた頃もそうだけど、売れる売れない、波に乗っている乗っていないということが自分の中で実感がなかったんですよ。タイトルを獲れるのか、俺がタイトルを獲ったらもっと有名になれるのか。あの頃はプロレスブームもなくて下火の時代。やっと上向いてきた時期だったから、(プロレスファンを)取り戻さなきゃいけないなと思っていてね。それでブシロードが(新日本プロレスのグループ会社に)ついて、形的にトントントンと上がってきて、いろいろなことが始まってグワッと上がった。今思えば「良かったな」と思いますよ。昔は毎日ギラギラしていてやばかったですよ。俺、ギラギラし過ぎて。

豊本 ギラギラなんですか?

真壁 ギラギラですよ。周りみんなが敵。味方も敵だし、「何だこの野郎!」と。すごくケンカっ早かったですから。本当にやばかった。

豊本 時期的には、「レッスルランド」の時とかですか?

真壁 あの後ですね、一番ギラギラしていたのは。ちょうど金村キンタローの団体に上がっていた頃です。一番カッカきていて、あの時、俺は全部がパーンと弾けたんですよ。

豊本 WEWのリングに上がっていた時期なんですね。

真壁 そうそう。「こいつら全員、ぶっ殺してやる」と思っていたんです。リアルにね。今思えば、俺の価値はあれだったんだなと。
 金村キンタローに「真壁は呼んでへんよ」と言われて会場のお客さんに爆笑されて。「呼んでねぇ」と言われても、俺自身に価値があったら、笑われないわけじゃないですか? その屈辱がでかくて。俺、ここまでの10数年、地獄の練習をして、先輩にこきつかわれて、しごきを耐え抜いてきて、先輩をバンバンなぎ倒して上に上がって、それでもこれぐらいの価値しかねぇのかよと。でも、それを言われて覚悟が全部変わったんです。「よし、こいつら全部消し去ってやろう」と。WEWのベルトを懸けて金村や黒田(哲広)、マンモス佐々木、佐々木(貴)と絡むようになるんだけど「何だこいつら? 全然価値がねぇな」と最初は思ったんです。でもバッカンバッカンやって、俺も頭を割られて流血したりして、そのうちに「こいつらはこいつらの好きなプロレスで頂点を目指そうとしているんだな」と理解できた。デスマッチというルールの中で、俺がそのリングに立って、見ている観客をも全員ねじ伏せる。今までやったことがないけど、ねじ伏せなきゃいけないから、それが難しかった。ただ、俺が防衛戦をやっている中で思ったのは、「こいつらすげぇな」と。お前らのレスリングも面白れえぜと思ったね。そこで俺の価値観が目覚めて、俺がWEWのベルトを持って、この団体ごと引っ張っていってやろうとね。

豊本 要は真壁さんのレスラーとしての輪郭がはっきりした瞬間なんですね。

真壁 本当に、あれが俺の中では欠かせない時期ですね。あれは刺激的だったと思いますよ。新日本って、みんなエリートって思われているんです。ただ、エリートなんて少ししかいない。ただ俺たちには練習量があるから、レスリングが本物だと思わせるプロレスには自信があるんですよ。それを見せているだけだから、エリートでも何でもない。だから新日本の中には、エリートもいれば、雑草もいるんです。

豊本 新日本の選手で、「俺は雑草だ!」って言える選手は、なかなかいないですよね。真壁さんぐらいです。

真壁 多分ね。まあ、みんなどっかでエリートになりたいんですよ。でもエリートになりたい選手って、結局、生まれが雑草でしょ? 本当のエリートはそんなこと思わないし。それを見抜いた時に、はっと気付いたんだよ。そうだ、俺はみんなにすげえ奴だと思われたかったんだと。でもそれが実際、今のプロレス社会で、プロレスラーとしてどうなんだと思った時、俺の価値はねえなと思ったんです。その時に、その悔しさで、どうやったらこいつらをたたき潰せるかと奮起してね。
 金村も黒田も佐々木も、新日本の選手からしたら巨大な敵ではないかもしれない。でも、その時の俺にとっちゃ、反骨心のかたまりみたいなレスラー像で、強敵でしたよ。相手のリングに乗り込んで、デスマッチをやるんですから。その頃、棚橋(弘至)だったり、中邑(真輔)が、新日本で正統派なレスリングをやっていて、「クソみたいな試合をやりやがって。なんだこのカス」と思いましたね。俺は別のところからトップを取ってやるよと。誰もやったことのないトップ。それがデスマッチだった。
 ベルトは何回か防衛して、最終的に金村に奪われたんだけど、面白かったのは、その後のG1で、(WEWの会場で)ブーイングしていた客が、みんな新日本プロレスG1決勝の両国に集まったんです。「こいつら、ここまで来やがったか。まだ俺に文句を言いてえのか」と。でも、新日本の会場では、俺のことを応援してたんですよ。要するに、“オラが街の大将”を追い詰めたんなら、あんたは間違いなくテッペン取れる。取んなきゃダメだと。
 だったら、こいつらに見せてやりたいってことで興奮状態でしたね。よし、やってやろうと。だから結果的に、俺が優勝を勝ち取った瞬間、みんながワーっとなって、これが俺の力じゃなく、プロレスの力なんだと。自分たちが応援している選手がどれだけすげぇ試合をして、天下を取るか。それを見せることができた試合なのかなと思ったね。

豊本 泥臭くていいですね。泥臭い試合で、イキだし、温度がありますね。

真壁 そうそう、それよ! 俺も思ったんだよ。温度なんだよ。熱なんだよ。熱量なんだよ。その会場に歓声があっても、熱がない場合は乾いて乾燥しちゃう。そんなものはどうでもいいわけよ。そんなのただ、お前が誰々のファンで、格好つけているだけでしょと。そうじゃなくて、唸るような、地響きのような歓声。それが本物なんだよね。あれを感じさせてやる。(G1の決勝の歓声は)あれが数年ぶりだったんじゃないの? 本当に地響きが起こったのはね。

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