“甲斐キャノン”に隠れたファインプレー 岩村明憲氏の日本シリーズ解説2018
2年連続日本一に輝いたソフトバンク。レギュラーシーズン2位からの日本一は球団史上初の出来事だ 【写真は共同】
試合は4回に西田哲朗がスクイズを決めソフトバンクが先制。続く5回にはグラシアルがレフトへソロをたたき込み、追加点を挙げた。投げては先発・バンデンハークが6回4安打無失点、10奪三振をマークする好投。その後は武田翔太、嘉弥真新也、森唯斗とつなぎ、完封リレーで逃げ切った。なお、MVPはシリーズ新記録の6連続盗塁阻止を達成した甲斐拓也が受賞。“甲斐キャノン”と称される強肩で広島の機動力を沈黙させた。
スポーツナビでは、東京ヤクルトやMLB・レイズなどで活躍し、短期決戦の経験が豊富な岩村明憲氏による日本シリーズのポイント解説をお届けする。
刺した甲斐だけでなく、ショート西田も大きな働き
岩村氏がポイントに挙げた初回の盗塁阻止。キャッチャー甲斐(写真左)の送球をショート西田(同右)が受け、田中をアウトに仕留めた 【写真は共同】
「今日は甲斐君が2度盗塁を刺しましたが、特に初回の田中(広輔)選手を刺した場面。あれで相手をきっちり止めたのが大きなポイントでしたね。
僕は今夜も先制点がすごく大事になると見ていて、広島は盗塁でランナーを進めて流れを引き寄せようとしました。そこで甲斐君が止めたことは非常に大きい。ショートの西田君も『リプレーをやってくれ』とベンチに向かって言ったと思いますし、あのプレーは本当に価値のあるものだと思います(編注:審判の判定はセーフ。工藤公康監督によるリクエスト要求からリプレー検証を行い、結果アウトに覆った)。
リプレーを見ても結構際どいタイミングだったじゃないですか。西田君はよく要求したなと思います。これは実際にグラウンドでやっている人間じゃないとわからない感覚だと思いますし、アウトという確信があったからこそ、要求もできたわけです。
また、シリーズを通して甲斐君は6連続で盗塁を阻止しました。この活躍があってMVP受賞につながったのでしょう。盗塁阻止率は4割5分を超えればすごいキャッチャーと言えるところで、このシリーズでは“10割”をやってのけた。高谷(裕亮)君も一度刺していますし、チームとして完璧に盗塁阻止を敢行できましたね。もちろんこれはキャッチャーだけではなく、ピッチャーも含めたバッテリーの共同作業によって、相手のチャンスを摘んだと言えますね」
胴上げを見る丸の姿に思うこと
敗れた広島は3番・丸(写真左)の不振が最後まで響いた。岩村氏は胴上げを見つめる悔しい姿が印象に残ったという 【写真は共同】
選手たちは胴上げをベンチで見ていましたね。最後にファンの方々にあいさつするためでもあると思いますが、あの中で一番印象に残ったのはやはり丸君の姿でした。目が潤んでいたように見えたし、悔しい思いが人一倍強かったと思います。だからこそ、来年の丸君に期待したいですね。
ソフトバンクはレギュラーシーズン2位からですけど、プレーオフを勝ち抜いて日本一になったのはさすがだなと思っています。試合ごとにオーダーを替えたり、起用する選手を替えたりと、持ち前の選手層の厚さをこのシリーズでも発揮していました。これからもチーム内の激しい競争があると思いますし、より高いレベルの野球を見せてほしいですね。おめでとうございます!」
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