大願成就まであと一歩だったが……村田諒太、スキルの差が呼んだ防衛失敗

杉浦大介

再戦について「今はあまり考えられない」

プロモーターは再戦の可能性について言及したが、村田本人は「『はい次に』という気持ちにはなれない」と心境を吐露している 【Steve Marcus - Getty Imeges】

「ダイレクトリマッチの可能性はもちろんある。3〜4月に日本で行いたい。(帝拳ジムの)本田(明彦)会長と話し合っていきたい」

 試合を終えて、リングサイドでメディアに囲まれたトップランクのボブ・アラム・プロモーターはそんな気の早い言葉を残していた。

 今回の準備段階で村田は体調を崩していたという話もあり、ブラントを東京まで連れ出せるとすれば展開は第1戦とは少なからず変わる可能性はある。現在32歳の村田にとって、新王者とのプライドをかけた再戦が実現すれば、キャリアでもほとんど最後の大勝負となるのかもしれない。しかし――大きな注目を集めた防衛戦で完敗を喫した後で、すぐに再び立ち上がる気力が残っているかどうか。

「再戦を要求するような内容じゃなかったと思います。今はあまり考えられないですね。これだけ大きな舞台を作ってもらって、『はい次に』という気持ちにはなれない」

 試合後、控室での村田のコメントは正直な思いの吐露だったに違いない。ついに訪れたラスベガスのメインイベントというビッグステージは、近未来のさらに大きな夢につながる舞台のはずだった。好内容で勝っていれば、元王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との東京ドームでの防衛戦という日本ボクシング史上空前のビッグファイトが具体化するところだった。そんな悲願の手前で味わった痛恨の敗北。フィジカルのダメージも少なからずあるはずで、今は来春という日程にこだわることもなく可能な限りの時間を村田に与えるべきなのだろう。

 ラスベガスとは、今も昔も、世界中の人々が見果てぬ夢を追い求めて集まる街である。誰もがウィナーになれるわけではないという意味で、今夜の村田の敗戦もギャンブルタウンではありふれた物語。ただ、今回のプランは、村田自身にとってだけでなく、彼が属する業界全体にとってのとてつもなく巨大な夢だった。そんなアメリカンドリームの成就まで本当にあと一歩に迫っていただけに、寸前での挫折は余計に物悲しく、残念に思えてくるのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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