強いオランダ代表が戻ってきた ドイツに歴史的勝利…偶然ではない

中田徹

19歳デ・リフトは低調も心配無用

新鋭デ・リフト(左)は低調なパフォーマンスに終わったが、そういう日もある。次に期待したい 【Getty Images】

 このアヤックスからは、デ・ヨング、デ・リフト、ブリントの3名が、10月シリーズのオランダ代表に名を連ねた。9月のフランス戦(1−2)でCB失格の烙印を押された形になったブリントは、ドイツ戦では左SBを務め、ラスト15分の逃げ切り態勢に入ったときには守備的MFに移ってポリバレントな能力を発揮した。デ・ヨングは、いつもと変わらずクレバーにチームメートを楽にプレーさせていた。

 だが、ドイツ戦のデ・リフトは攻守に乱心気味だった。淡泊に相手にかわされてしまったり、驚くようなミスパスを連発したり、非常に不安定だったのだ。もしかしたら、オランダ代表デビューマッチとなった17年3月のブルガリア戦(0−2)以来の、代表での低パフォーマンスだったかもしれない。

 それでも、私はデ・リフトのことを心配していない。彼はまだ19歳だが、すでに「若手」というカテゴリーから卒業している。2失点に絡んだ、あのブルガリア戦はデ・リフトの選手生命をスポイルする可能性すらあったが、立ち直りは早く、今やアヤックスのキャプテンを任されている。

 監督が期待する選手に責任感を植え付けるためにキャプテンを任せる例がある。しかし、デ・リフトの場合、キャプテンマークを付ける前から責任感を持ってプレーし、チームの顔のように試合後インタビューに答えていた。だから19歳のキャプテン就任に誰も疑念を感じない。実力、キャラクターともにティーンエイジャーという範疇(はんちゅう)をはるかに超えたCBなのだ。
 彼にも悪いプレーをする日がある。そんなときは他の選手がカバーすればいいだけのこと。それだけのステータスと信頼が、デ・リフトには与えられている。

転機となるか、ベルギーとの真剣勝負へ

 ドイツ戦のオランダは、CBファン・ダイクのヘッドで1−0とした前半の内容は良かったが、後半は一方的に押されてしまって、オランダメディアも一様に「後半のパフォーマンスは下がった」と記している。だが、試合の終盤には後ろから人が沸き上がってくるような、ものすごいカウンターを連発させて、デパイとワイナルドゥムのゴールで2点を追加してしまった。

 忘れてならないのは、これがネーションズリーグという公式戦で、交代選手は3人しか許されてないということである。68分から出場したウインガーの2人、プロメスとフルーネフェルトはフレッシュだったかもしれない。しかし、多くの選手は疲れ切っていたはずだ。それでも、彼らは味方を信じて、あごを上げながら前線にフリーランしてカウンターを炸裂させた。オランダが終盤に決めた2ゴールは、苦しい時間帯のカウンターの繰り返しから生まれたものだった。

「チームになったな」。私は思った。

 試合後、私は旧知のオランダ人記者に「このドイツ戦は、12年8月、ベルギーが3−2でオランダを破った試合に匹敵するぜ。あの試合で打ち勝ったことにベルギー人は自信をつけ、代表チームへの信頼も生まれて、その後の成功につながったんだ」と言った。すると、彼は「あれは4−2だった」とスコアを訂正した。そのベルギーと、オランダは16日にブリュッセルで親善試合という名の真剣勝負、別名『低地国ダービー』を戦う。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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