西地区首位よりも大事にする思い HCに聞く、○○はうちがNo.1 京都編

カワサキマサシ

メンバー固定で昨季からの積み上げに成功

京都はフロントを含めた組織の一体感を武器にする 【(C)B.LEAGUE】

 京都ハンナリーズはメンバーを大幅に入れ替えて臨んだ昨季、初のチャンピオンシップ(CS)進出という成果をあげた。多くの実りを得た昨季を、浜口炎ヘッドコーチはこう振り返る。

「特定の個人に頼らないチーム作りは毎年の目標にしているもので、昨季はそれができました。終盤に外国籍選手を中心にけがや出場停止のアクシデントが重なってしまいましたが、苦しい中でも最後まで戦い、全体的にステップアップができたと感じています。ただシーズンの最後を全員そろって終われなかったこともあり、ある種の達成感を得た一方で、少なくない不完全燃焼な思いが残ったことも事実でしたね」

 昨季の京都は、フリースローの獲得数がリーグNo.1をマーク。ここに昨季のチームの強みが表れている。

「プレーの面ではバスケットに積極的にアタックし、フリースローを多くもらうことが毎年の目標です。やってきたことが数字に表れたという意味で、評価できると思います。その一方で、ディフェンスが重くなってしまったことは反省点です。昨季在籍したジョシュア・スミスは得点力に長けていましたが、守備面ではトランジションやピック・アンド・ロールへの対応に難がありました。そこにチームとして対応できず、失点率はリーグで下位になってしまった。ファイナルに残るにはチームとして、もっと力をつけていかないといけないなと感じさせられましたね」

 今季のロスターには、昨季も在籍した選手が多く顔をそろえる。昨季に一定の成果を残したメンバーで今季のスタートが切れるのは、少なくないメリットがあるはずだ。

「それは、確かにそうですね。昨季のメンバーの多くに残ってほしいと願っていて、それがかなったのはうれしいことです。たとえタレント性のある選手であっても、新しく入るとシステムや連係を構築するには時間がかかってしまいますから。昨季を経験したメンバーは方向性が間違っていないことを感じているでしょうし、昨季よりも高い位置からスタートできるのはメリットの1つですね」

リーグNo.1は「組織としての一体感」

 bjリーグ時代の2011年から京都の指揮官に就き、今季で8シーズン目。浜口HCの目に映る自チームがNo.1であるポイントは、長く関わり続けているから生まれる長所だ。

「フロントを含めて、組織としての一体感はすごくあると思います。練習会場がクラブ事務所の近くのときは、フロントの人が練習を見に来たり、選手が終わってから事務所に顔を出したりしています。選手がフロントスタッフの名前を知らないことってけっこうあると思うのですが、ウチの選手たちはみんな知っていますよ。毎年シーズンが始まる前には、フロントとコーチングスタッフ、選手全員が集まって、結団式をしています。新加入の選手にはそこで、京都の街や暮らしなど文化的な話もします。シーズンが終わってからは、解散式もやります。そんなことをやっているクラブは、僕が知っている限りではありません。みんなで一体感を生み出そう、みんなで何かを作り上げようという姿勢がすごくある。フロントはフロント、現場は現場と分離しているようなところは、全くありませんね」

 開幕を前に、京都は所属選手が立て続けに不祥事を起こしてしまった(編注:永吉佑也選手の日本オリンピック委員会行動規範の違反と坂東拓選手の窃盗容疑による逮捕)。非常に残念な出来事だったが、この難局を乗り越えようと現場とフロントの結びつきは、いっそう深くなった。浜口HCは、神妙な面持ちで語る。

「この一連の出来事が起こる前は、西地区でトップになることを思い描いていました。ですが今はそんなことよりも、信頼回復に現場とフロントが一体となって取り組んでいくことのみを考えています。このクラブにいるみんなで、それをやっていかないといけない」

 平坦(へいたん)な道のりではないだろう。それでも道を開くべく、京都はフロントと現場が一体になって前に進もうとしている。

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著者プロフィール

大阪府大阪市出身。1990年代から関西で出版社の編集部員と並行してフリーライターとして活動し、現在に至る。現在は関西のスポーツを中心に、取材・執筆活動を行う。

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