MLBジャパン代表が語る日本戦略 メジャーリーグ普及のための役割と工夫

永塚和志

イチロー、大谷ら日本選手とMLBの関係

談笑するイチロー(左)と大谷。2018年は両者にとっても節目のシーズンとなった 【写真は共同】

――今年は日本のメジャーリーグファンにとっても特別な年だと思います。マリナーズのイチロー選手が会長付特別補佐になったり、エンゼルスでは大谷選手が1年目からセンセーションを巻き起こしたりしています。まずは、イチロー選手のキャリアについて、どう思われていますか?

 イチロー選手のことを話し出したら残りのインタビュー時間をすべて費やしてしまいかねません(笑)。今まで、彼のような選手はいませんでしたよね。間違いなく将来、殿堂入りを果たす選手です。数人しか達成していない3000安打、500盗塁、10年連続200安打以上などなど、その数字を見ただけでも圧倒されてしまいます。ただ本当にすごいなと思うのが、彼がメジャーに行った段階で、すでに27歳だったということです。その年齢からそこまでの数字を積み上げたと。ですから、彼のことを表現する時に、もはや言葉が見つからないわけです。だってそんな選手がいたことはないわけですから。

――大谷選手についてはいかがですか? 彼もイチロー選手のように「唯一無二」の存在になれる可能性があるようにも思えます。

 そうですね。今年、大谷選手は例えばベーブ・ルース以来の偉業を達成しています。とてもすごいことです。ただ、やはりそれを言うにはまだ早すぎる気がします。肘のケガのこともありますし、あとは単純にMLBが非常にタフな場所ということもあります。相手が対策を練ってきますから、彼もアジャストしていく必要が出てくるでしょう。ただし、先程も触れましたが、彼はどんな状況でも心拍数が上がっているように見えない。つまり周りの状況に左右されず、マイペースでいるように思えます。これはとても心強い兆候だと思います。

――日本のMLBファンの多くは日本人選手の活躍を通してMLBを見ていると思いますが、今後、日本人選手の動向とは関係なく楽しんでもらうためにはどうすればいいと思いますか?

 実は、イチロー選手をはじめ多くの日本人選手がMLBへ行くようになり、日本人以外のメジャーリーガーの人気は落ちてしまったのです。われわれはそこを何とかしたいと思っていますし、秋に行われる日米野球でも日本人以外のメジャーリーガーを知ってもらえたらと思っています。

 現状ですと、日本のファンはイチロー選手ならイチロー選手だけの打席を、大谷選手なら大谷選手の打席だけが気になって、他の選手はあまり見ないといった状況です。そこを何とかしたい。そこはチャレンジです。日米野球では素晴らしい選手が来ます。例えば、クリスチャン・イエリッチ(ブリュワーズ)。昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝を果たしたアメリカ代表でもプレーし、今年もナショナルリーグのMVP有力候補と言われています。そんな彼らの背景をうまく伝えられるようにしたいと思っています。その中でSNSも活用していくつもりです。

日米野球の意義と役割

――その日米野球ですが、日本人選手がMLBでプレーするようになった現在、日本の人にとってもMLBが身近になりました。かつては日米野球だけがメジャーリーガーを見られる唯一の機会でした。その意味では日米野球のあり方も変わったかと思います。

 そうですね。とは言え、日本のコアなMLBファンは、若いスター選手や将来の殿堂入りが有力な捕手、ヤディア・モリーナ(カージナルス)のような選手を見られるので、こういったイベントを心待ちにしてくれています。あとは、普段は試合を録画で見たり、会社で仕事をしながらチェックしている人達が、日米野球ではプライムタイムで試合を見られることも非常に大きいです。

 侍ジャパンの存在も大きいですね。多くの人達が侍ジャパンを見るために日米野球へ足を運ぶと思います。侍ジャパンは、ビジネス面を考えても素晴らしいアイデアだと思います。

 今回の日米野球は、われわれにとって前回とは違ったものになると思います。前回、MLBは侍ジャパンに2勝3敗と負け越してしまいました。今回は、ハワイで事前合宿を行い、実戦感覚を取り戻してから来日します。以前なら1カ月も試合から遠ざかっている選手たちがいきなり来日して、少し打撃練習をして試合に臨み、圧勝していた時期もありました。ですがそういった時代はもう過去のもので、日本の野球のレベルはぐっと上がりましたし、今大会もとても興味深い戦いになると思います。

 前回の日米野球はわれわれが負け越し、しかし去年のWBCではアメリカが日本に勝ち、そして優勝しました。そういう背景もありますから、今大会は面白さを増すと思います。期待していて下さい。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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