山沢、布巻が語るラグビーの魅力 「見えないところで成長させてくれる」

WOWOW

ニュージーランド留学で感じたこと

激しいプレーでチームを引っ張る布巻峻介 【写真提供:WOWOW】

――海外ラグビーを見始めたのはいつごろからですか。

 ラグビーを始めたのは幼稚園の、4〜5歳のころですが、海外のラグビーを見るようになったのは……いつごろだろう?小学生の時にはもうスーパー12とかを見ていましたね。クルセイダーズが強くて、そこにブランビーズが挑戦していくような構図の時代でした。特に注目していた選手というと……そのころは自分もまだバックスだったので、今サントリーにいるマット・ギタウや神戸製鋼に来たダン・カーター。その2人が若手でチームを引っ張っていたイメージがあります。

 スーパーラグビーの全体的な印象としては、こういうふうにスキルを持っている人たちでもしっかりタックルするんだな、ということ。自分はそういう方に目がいってましたね。当時からタックルが好きだったので。海外のラグビーを見るときは、今でもそういう感覚が残っています。

――その後、自分で実際に海外へ行ってプレーして感じたことはどういうことがありましたか。

 東福岡高3年のときに、半年くらいニュージーランドに留学させてもらいました。そこで、ラグビーの楽しさ、面白さを本当に教えてもらいましたね。
 向こうのコーチはとにかく質問が多いんです。「どうしたいか?」とか、「今話したことはわかったか?」とか。日本にいると、「わかったか?」と聞かれたら、細かいところまで全部理解できていなくても、まあ周りに仲間もいるし、大丈夫だろという感じで流してしまいがちだけど、周りが外国人ばかりで言葉もすぐには通じないという環境だと、本当に理解していないと練習できない。周りもそう思うから、僕に向かって「ちゃんと理解できたか?」と確認するんでしょうね。「何で?何で?」と、かなり突き詰められた記憶があります。

 その一方で、海外に出ることで日本の良さに気づけたところもある。日本の選手って、良くも悪くも、言われたことはしっかり守ろう、やりきろうとするところがあるけれど、海外の選手はそうでもない。日本の選手は規律がとれていて、スキルレベルも平均的に高い。プレー環境もいい。東福岡高なんて、グラウンドも部室やウェイト施設もすごく整っていた。
 ただ、これもバランスなんですね。向こうはグラウンドもぐしゃぐしゃだったりするけれど、そこで普段から練習しているせいもあって、足腰が強くなる、足元が悪いコンディションでもしっかりプレーできるような強さが身につく面もある。
 いろいろな面で、本当に勉強になったし、自分にとってプレーヤーとしての分岐点になったと思います。

――北半球、ヨーロッパのラグビーについてはどんな印象がありますか。

 フランスリーグ TOP14は、各チームにそれぞれの色があって面白いなと思いますね。僕の持っていたイメージはフィジカルなプレーを中心に崩してくるなという印象が強かったのですが、最近のTOP14を見ているとボールもよく動くし、キックも効果的に使う。セットプレーだけ、フィジカルなプレーだけ、というイメージではない、攻撃的なプレーも増えて面白くなってきたなという印象があります。

――それは高校日本代表でフランスへ行ったときからの印象ですか?

 いえ。当時はそんなじゃありませんでした。当時の印象はというと……正直言うと「たいしたことないな」と(笑)。まあ、僕がナマイキでナメていただけなんですが、高校の時点では正直、差はなかったと思います。「外国はすげえな」というような衝撃はなかった。だけど、昨年遠征でフランスへ行ったときは「レベルが高いな」と思いましたね。

 TOP14を見ていると、この強度の中で、よくあれだけたくさんの試合をできるなと思うし、身体だけじゃなく心も相当タフじゃないとできないだろうなと思います。

布巻「人間としての判断基準を作ってくれる」

「よりでかいヤツを倒した方がうれしい」とラグビーの魅力を語る 【写真:アフロ】

――布巻選手にとって、海外のチームと戦うことの魅力を教えてください。

 海外のチームって僕らから見たら大きくて足も速い選手がそろっていますから、そういう条件を分かった上で、この相手を倒したら気持ちいいな、うれしいな、と思って戦うのは面白いですね。もちろん国内の試合で勝つこともうれしいけれど、やっぱり男として、よりでかいヤツと戦って、その相手を倒した方がうれしいとは思います。

――それは、布巻選手の考える、ラグビーの魅力そのものなのでしょうか。

 たとえば、選手がぶつかりあう音だったり、激しさだったり、そういうところはラグビーの大きな魅力だと思いますが、僕にとって一番魅力なのは、目に見えないところで自分を成長させてくれるスポーツだということです。これをしたらカッコイイなとか、人間としての判断基準を作ってくれる。そういう人たちがやっているスポーツなんですよ、ということを、ファンのみなさんにも意識して見ていただきたいなと思います。

 たとえば、試合中に思い切り激しいプレーで相手を倒しても、ピッと笛が鳴ったら、手を差し出して相手を引き起こすとか、そういう紳士的な振る舞いができる。相手をぶっこわすくらいの気持ちで激しく戦った者同士が、笛が鳴ったら相手を思いやることができる、そんな優しさをしっかり持っていることが魅力だと思います。僕は……プレーの間は相手を殺すくらいの気持ちでいきますけれど。

――ワールドカップ日本大会まであと1年を切りました。抱負を聞かせてください。

 最近になって「どんどん近づいてきているな」という感覚になって、少し焦る気持ちも湧いてきていますが、そこは押さえて(笑)。今やっていることに少しだけプラスして、確実に一歩一歩、積み重ねていけたらいいなと思っています。
 いきなり多くのことを求めても無理があるし、パナソニックのチームで求められるプレーをずっとやり続けることが、日本代表でワールドカップを戦うための準備につながるんだと思いますから。今置かれている状況で、求められることを果たしていきたい。

――ワールドカップはFWで狙うのですね。

 フォワードです。だけど、バックスの方がより出られるというのならバックスでも全然いいです(笑)。どちらにせよ、ボールが動き出したらやることは変わりませんから。

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