錦織“ポジショニングの変化”で劣勢打開 浅越しのぶの全米オープンテニス解説
スポーツナビでは、04年全米オープン女子シングルスでベスト8に進出した、元プロテニスプレーヤーの浅越しのぶさんに試合を解説してもらった。
出だしは相手ペース チリッチがとった錦織対策とは
チリッチとの激闘を制し、錦織圭が2年ぶりの全米ベスト4に進出 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
チリッチ選手は、(ラリーの中で)バックのダウンザラインを出すタイミングがすごく早かったのですが、それは錦織選手の得意なバックのダウンザラインを警戒して、自分が先に打っていたのではないかなと感じました。ラリーを長く続けてから打つのではなくて、2、3回ラリーをしたらすぐにダウンザラインを打っていましたので、“錦織対策”をしていたのかもしれません。それが最初はハマっていたので、良い感覚でチリッチ選手はポイントを重ねていたのではないでしょうか。
今日はサービスが鍵になると思っていたのですが、第1セットの錦織選手はセカンドサービスを(リターンで)打ちこまれていたので、この試合は厳しい展開になるかなと思っていました。
ただ錦織選手も(構えやプレーする位置を)後ろに引いていたわけではありませんでした。「攻撃的に行こう」という意図が見えましたし、動き自体は悪くなかったですね。
“ポジショニング”を変え、プレッシャーをかけた錦織
チリッチ選手からすると、相手に後ろに下がられるとコートがすごく広く見える。最初は集中力を持ってプレーしていたチリッチ選手でしたが、徐々にミスも生じていました。
(サービスリターンの立ち位置も)ビッグサーバーと対戦するときは、下がってみたり、前に詰めたりいろいろな位置に立ちます。それを相手に見せることによって、相手の気持ちが動揺するところもあります。それに、すごく速いサーブでも、後ろに下がった位置で打てば、バウンドして少し球速が下がるということもあります。錦織選手はかなり大きく位置を変えていましたが、今回の試合ではそれがすごく効いていました。
ただ通常のプレーでは、今回の錦織選手ほど立ち位置を大きくは変えません。球速はバウンドすれば遅くなるとは言え、あまり下がった位置からリターンするのは、走る距離も長くなりますし返球が難しい。技術があるからこそできる作戦であり、プレーです。思い切り変えるという勇気もすごいですし、すごく考えられたポジションだなと思いました。
(錦織選手のポジショニング変更で、チリッチ選手にダブルフォルトが増えた?)時に前に詰めて、ボールの上がりどころを叩くというリターンもあるし、時には後ろに下がってよく相手のボールを見てしっかりと打つリターンもある。そのギャップがチリッチ選手にとっては嫌な感じがしたのではないかなと思いました。