女子ホッケーが意地でも示したかった実力 “アジア女王の日本”として東京五輪へ

平野貴也

開催国枠で決まった五輪出場 アジア大会初優勝の意義

ホッケー女子で日本がアジア大会初優勝。歓喜の日本代表メンバーたち 【岡本範和】

 さくらジャパンの笑顔が、表彰台の頂点で満開になった。決勝戦で何度もピンチを救った主将の内藤夏紀(ソニー)は「最高の気持ち」と達成感をみなぎらせた。インドネシアで開催されているアジア大会は、8月31日にホッケー女子の決勝戦を行い、日本が2−1でインドを破って初優勝を飾った。7月のワールドカップ(以下、W杯)でグループリーグ敗退の悔しさを味わった直後だけに、大きな価値のあるタイトル獲得だ。

 決勝戦は、苦しい展開だった。前半から相手の攻撃にさらされたが、第1クオーターの10分過ぎにペナルティーコーナーからDF及川栞(HCオレンジレッド/オランダ)のシュートをFW清水美並(ソニー)がタッチして先制。後半になると、ハイプレス(前線からボールを奪いにいく戦術)の隙間をロングパスで抜かれて押し込まれることが多くなり、第2クオーターの24分にカウンターから2次攻撃を受けて失点した。
 しかし、その後の猛攻をGK景山恵(ソニー)のセーブや、主将の内藤の鋭いカバーリングなどで持ちこたえると、第3クオーターの43分に、温存していたセットプレーがさく裂した。ゴールライン上、ポストから10メートル離れた位置からパスを出すペナルティーコーナー。清水がゴール正面にパスを送って、サークルの外でボールを止めると、ゴール正面に並んでいたヒッター陣の中で右に並んでいた河村元美(コカコーラ)が永井葉月(ソニー)の背後から左に抜け出して意表を突き、左からクロスに打ち込んだシュートが見事に決まった。

「今大会は、永井(葉月)さんがストレートで決めていたのでケアしてくるだろうということで、練習していた」(河村)

 この一撃を決めた後、第4クオーターは、5分以上残されている中で清水、河村を中心としたボールキープで時間を使い、タイムアップと同時に最高の瞬間が訪れた。日本は、世界ランク14位。グループリーグで中国(11位)、準決勝で韓国(10位)、決勝でインド(9位)とアジアの上位国をすべて撃破し、文句なしのアジア女王に輝いた。

シュートを決めた河村。重ねた練習が試合で生きた 【岡本範和】

 昨年5月に就任したファリー・アンソニー・ジェームス監督は、選手から胴上げされて3度宙を舞った後で「目標は、東京五輪のメダル。それは、変わらない」と言い切った。
 ファリー監督の招へいとともに、コーチの人数や海外遠征の日数も増加するなど、着々と強化を続けている日本女子。メダル獲得の実現性を高めるためには、結果を出して自信を深める必要がある。

「開催国枠で東京五輪の出場は決まっているが、実力で五輪に出るチームだと示すために、このアジア大会で優勝したいと思っていたのでうれしい」

 日本代表の安西浩哉チームリーダーは、タイトル獲得の意義を語った。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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