女子ホッケーが意地でも示したかった実力 “アジア女王の日本”として東京五輪へ

平野貴也

「チームが落ち込んだ」W杯敗退を糧に成長

胴上げされるファリー・アンソニー・ジェームス監督。W杯での悔しさを経て、成長した選手たちを称賛した 【岡本範和】

 傷を癒し、自信を取り戻す優勝だ。世界最強のオランダ以外は、大きな実力差がないと言われる女子ホッケー界で、日本は現実的に東京五輪のメダルを狙っている。ただ、7月のW杯では、当時世界ランク4位のニュージーランドを撃破してポテンシャルを示したが、結果はグループリーグ敗退。世界との距離を縮めて自信を得るはずだった舞台での思わぬ敗戦は、大きなショックだった。GK景山は「誰もそこで終わると思っていなかったので、終わったときはチームが落ち込んでいた」と悪夢を振り返った。

 ファリー監督就任後、日本は敵陣から積極的にボールを奪いに行く「ハイプレス戦術」を採用。世界の強豪を相手にしても、日本のペースに引き込める手応えは得た。一方で、走力が求められる戦い方と連戦の疲労によって、ハイパフォーマンスを持続できないことが課題となっている。

 今大会は、強敵の中国を破って準決勝進出を決めた後、グループリーグ最終戦でマレーシアにも勝利。後半からパスワークのテンポを上げる修正がうまくできた。

「W杯で良いゲームの後に、がたっと調子が落ちるトラウマがあったので(中国に)勝った後で、もう1回良いゲームをして1位通過することが目標だった」
 今年5月にオランダで日本初のプロ選手となったDF及川は、「良いゲーム」だった中国戦後の勝利にこだわっていたことを明かした。

 続いて準決勝の韓国戦は、MF永井葉やMF瀬川真帆(ソニー)が守備を助けて粘り勝ち。決勝のインド戦も押し込まれたが、カウンターからペナルティーコーナーを得て、2回とも決める決定力で勝利した。

 ハイプレス戦術を磨きながら、相手ペースの試合や走力が落ちる時間帯をどう克服するか。問題解決の糸口が見えてくるアジア大会6戦全勝という結果を受けて、ファリー監督は、状況に応じた戦い方で難局を乗り切った選手を称賛した。

「再現性のある結果が出せた。(これまで)良い試合の後はダメということが多かったが、最後まで戦い切れた」

選手層の厚さが重要なホッケー「良い形でチームを作れている」

金メダルを首にかけて歩く内藤(2)、永井友理(12)、大田(3)。幅広い世代の選手たちの力がかみ合って、この成果と自信を手にした 【岡本範和】

 走力の維持と柔軟な戦い方を実現したのは、年齢に幅のあるチーム構成だ。主将の内藤は大会中に「今のチームは、スタートのメンバーも固定されていない。みんな、同じ時間、試合に出る」と話していたが、決勝戦後にも「若い選手がたくさん出てきて、経験のある選手とミックスされたチーム。良い形でチームを作れている」と手応えを話した。グループリーグでは、中堅の永井葉が6得点、若手の河村が4得点。決勝トーナメントに入ると、韓国戦では、及川との連携で大田昭子(コカコーラ)がゴールを決め、ベテランの域に入る2人が勝利に貢献した。

 試合中に選手が頻繁に入れ替わるホッケーでは、控えを含めた選手層が重要になる。今大会の代表は18人だが、日本は約40人がラージグループ(予備登録メンバー)に入っている。ファリー監督は「今大会の優勝は、参加できなかった(代表候補の)選手たちにも刺激になる。切磋琢磨(せっさたくま)する状況を作ってくれたと思う」と満足げだった。

 インド戦で優勝に導く決勝点を決めた河村は、2016年のリオデジャネイロ五輪では最年少メンバーだったが、攻撃の軸に成長。今回のアジア制覇を、世界トップ3に入るためのリスタートにすることを強調した。

「まず、アジアで1番にならないと世界は遠いと思ったので、これはスタート。W杯では、まだ予選を勝ち上がれる力もなかった。世界はもっと上。そこに向けてやっていきたい」

 W杯では、厳しい現実を突きつけられて歩みを止められた。しかしアジアの頂点に立った今、自信を持って次の一歩を踏み出すことができる。

 幅のある、選手と戦術の強化――。

 東京五輪のメダル獲得に向けた課題の両輪は、再び前進し始めた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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