女子ホッケーが意地でも示したかった実力 “アジア女王の日本”として東京五輪へ
「チームが落ち込んだ」W杯敗退を糧に成長
胴上げされるファリー・アンソニー・ジェームス監督。W杯での悔しさを経て、成長した選手たちを称賛した 【岡本範和】
ファリー監督就任後、日本は敵陣から積極的にボールを奪いに行く「ハイプレス戦術」を採用。世界の強豪を相手にしても、日本のペースに引き込める手応えは得た。一方で、走力が求められる戦い方と連戦の疲労によって、ハイパフォーマンスを持続できないことが課題となっている。
今大会は、強敵の中国を破って準決勝進出を決めた後、グループリーグ最終戦でマレーシアにも勝利。後半からパスワークのテンポを上げる修正がうまくできた。
「W杯で良いゲームの後に、がたっと調子が落ちるトラウマがあったので(中国に)勝った後で、もう1回良いゲームをして1位通過することが目標だった」
今年5月にオランダで日本初のプロ選手となったDF及川は、「良いゲーム」だった中国戦後の勝利にこだわっていたことを明かした。
続いて準決勝の韓国戦は、MF永井葉やMF瀬川真帆(ソニー)が守備を助けて粘り勝ち。決勝のインド戦も押し込まれたが、カウンターからペナルティーコーナーを得て、2回とも決める決定力で勝利した。
ハイプレス戦術を磨きながら、相手ペースの試合や走力が落ちる時間帯をどう克服するか。問題解決の糸口が見えてくるアジア大会6戦全勝という結果を受けて、ファリー監督は、状況に応じた戦い方で難局を乗り切った選手を称賛した。
「再現性のある結果が出せた。(これまで)良い試合の後はダメということが多かったが、最後まで戦い切れた」
選手層の厚さが重要なホッケー「良い形でチームを作れている」
金メダルを首にかけて歩く内藤(2)、永井友理(12)、大田(3)。幅広い世代の選手たちの力がかみ合って、この成果と自信を手にした 【岡本範和】
試合中に選手が頻繁に入れ替わるホッケーでは、控えを含めた選手層が重要になる。今大会の代表は18人だが、日本は約40人がラージグループ(予備登録メンバー)に入っている。ファリー監督は「今大会の優勝は、参加できなかった(代表候補の)選手たちにも刺激になる。切磋琢磨(せっさたくま)する状況を作ってくれたと思う」と満足げだった。
インド戦で優勝に導く決勝点を決めた河村は、2016年のリオデジャネイロ五輪では最年少メンバーだったが、攻撃の軸に成長。今回のアジア制覇を、世界トップ3に入るためのリスタートにすることを強調した。
「まず、アジアで1番にならないと世界は遠いと思ったので、これはスタート。W杯では、まだ予選を勝ち上がれる力もなかった。世界はもっと上。そこに向けてやっていきたい」
W杯では、厳しい現実を突きつけられて歩みを止められた。しかしアジアの頂点に立った今、自信を持って次の一歩を踏み出すことができる。
幅のある、選手と戦術の強化――。
東京五輪のメダル獲得に向けた課題の両輪は、再び前進し始めた。