U-21日本が会心の試合でアジア大会4強 タフに戦った選手たち、森保采配も的中

川端暁彦

森保采配が的中、タフに戦い続けた後半

後半、右サイドに遠藤渓太を投入する森保監督の采配がピタリとハマった(写真はベトナム戦) 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 だが後半からサウジアラビアも戦い方を修正し、試合は徐々に殴り合いの様相を呈してきた。57分に立田のロングフィードから旗手怜央が裏へと絶妙なタイミングで抜け出す絶好機などを逃している中で、相手に反撃の機運も生まれ始める。特にトップ下へポジションを移してきたアル・クライフは厄介だった。ここで日本ベンチは早くも動き出すが、打ったのは受け身の一手ではない。

 右ウイングバックに突破力に定評のあるMF遠藤渓太を投入。さらに10番タイプの三好康児を旗手に代わって右シャドーに投入。後半、「相手が右サイドから来ている」(森保監督)という分析を踏まえて、右サイドの活動量を確保しながら、逆に攻撃の厚みを加えるような用兵で対抗、その狙いを粉砕しにかかった。

 結果としてこの用兵がピタリとハマる。右サイドでの主導権を握り返した日本は、73分に待望の決勝点。インターセプトに成功した遠藤は「力は有り余っていたので」とダイナミックなサイドチェンジのロングパスを送り込む。これを受けた前田が強引かつクイックな突破で一気に抜け出すと、折り返しに岩崎が合わせ、「チームとして本当に良い攻撃ができた」(岩崎)結果のゴールが生まれた。

「選手にも『試合の流れを読め』と言ってきたので」と森保監督が珍しくちょっと照れたように振り返った采配がハマって日本が優勢に立つ中で、サウジアラビアも必死の反撃を見せる。だが、負傷の原輝綺に代わって先発したDF大南拓磨を含めた日本の3バックはパワフルな相手攻撃陣に頑健に抵抗。「ピンチでも粘り強くタフに戦い続けて、体を張って失点を防いでくれた」と指揮官が教え子たちの奮戦に胸を張ったように、最後まで声を掛け合って戦う部分を含め、日本の守備陣はタフに90分をやり切った。

目標達成も、ここはあくまで通過点

大会前に森保監督が目標に掲げたベスト4入りを達成。しかしチームはその先を見据える 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

「やりながら毎試合、毎試合良くなっているなっていうのは個人としても感じていますし、時間の進め方、立ち上がりの入り方も少しずつ良くなっている。割り切るところは割り切る。それに対して全員が反応する。球際でガツガツいくところもすごく良くなっている」(板倉)

 選手たちにも確かな手応えを感じさせる試合内容で日本は快勝。大会前に指揮官が1つの指標として掲げていたベスト4入りを達成することになった。

 日本が年下のチームで参加していることを思えば、4強入りというのは1つ妥当な指標ではあるのだが、チームの目標について「スタッフが押し付けるものではない」(森保監督)。大会に向けて選手が集まってから確認したのは「タイトルが欲しい」というシンプルな願いだった。指揮官自身もそれに応えて「優勝」について語るようになっており、選手たちの意識はここをあくまで通過点と見なしている。

「まだ先があるので。チームとして優勝という目標を掲げている中で、チーム全員で先を目指していきたい」(岩崎)

 準決勝は中1日というタイトなスケジュールの中、29日に行われる。相手は同じアラブ勢のUAE。A代表を含めて何度も激戦を重ねてきた相手と、日本の次世代を担う選手たちがメダルを懸けて対峙することとなる。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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