夏の甲子園、MVP候補を探る 金足農の鉄腕かそれとも…
秋田県大会から準々決勝まで一人で投げぬき、合計79回で108奪三振の金足農・吉田 【写真は共同】
夏の甲子園は、4強が決定。大阪桐蔭(北大阪)は盤石の試合運びで浦和学院(埼玉)を退け、済美(愛媛)は報徳学園(東兵庫)に競り勝って14年ぶりの準決勝だ。日大三(西東京)は、下関国際(山口)に6回まで無安打と苦しんだが、8回の集中打で逆転勝ちし、金足農は近江(滋賀)を9回裏にうっちゃった。
敗れた近江では、住谷湧也が4試合13打数10安打の打率7割6分9厘で個人最高打率の大会記録を30年ぶりに更新しており(従来は1988年の古閑憲生/大分・津久見の7割2分7厘=11打数8安打。ベスト8以上)、これはもう事実上の大会首位打者といえる。そこで、思いついた。社会人の都市対抗野球では、首位打者などの個人表彰があり、そのうち最優秀選手にあたるのが橋戸賞だ。では、この記念すべき第100回全国高等学校野球選手権大会で、もしMVPを選ぶとしたら候補はだれ? ベスト4のチームから、それぞれ印象的な選手をピックアップしてみよう。
この夏108奪三振の吉田輝星
「手を離れた瞬間はベルトあたりと思える軌道だから、顔あたりの高めでも振ってしまう。低めも、くるぶしぐらいかなと見える球が、ひざ元の絶妙の高さになる」
とはチームメイトの菅原天空で、質の高いホップするストレートは、高校生ではちょっとお手上げだろう。また、好投手の資質としてのフィールディングも一級品だ。準々決勝の6回には、1死一塁からのバントが小飛球になると、瞬時の判断でワンバウンド捕球。「2つアウトを取ろうと思った」と右手でつかんで二塁に送球し、併殺を完成している。「教室での勉強も、やればできると思います(笑)」とは金足農・中泉一豊監督だが、野球IQも非常に高い。
4試合完投ですでに615球を投げており、4日間で3試合目となる準決勝は蓄積疲労が懸念されるが、「冬は雪のなか、長靴を履いてイヤというほど走った」というスタミナが土台にある。4戦とも、少なくとも全国準優勝以上を経験している相手を倒してきた勝負強さを、日大三にも発揮したい。
その日大三は、伝統的に強打が売り物だが、高山俊(阪神)、横尾俊建(北海道日本ハム)らで全国制覇した2011年のような破壊力はなく、「今年のチームは、守備からリズムをつくるスタイルです」(木代成二塁手)。投手陣では、4試合すべてに救援登板し、22回を自責点8にまとめている河村唯人の丁寧な投球が光る。また龍谷大平安(京都)との準々決勝で先制アーチを架け、押し出し死球で決勝点をもたらした金子凌、奈良大付戦で代打本塁打、下関国際(山口)との準々決勝でも代打で同点打を放ったラッキーボーイ・高木翔己もMVP候補だ。
圧巻の打棒、大阪桐蔭・藤原恭大
大阪桐蔭の4番・藤原は準々決勝で2本塁打を放ち、浦和学院を圧倒した 【写真は共同】
先発で2勝し、打っても4割超の根尾昂、4試合18回で自責1、最速151キロをマークして22三振の柿木蓮ら、スーパー球児目白押しの大阪桐蔭では、4番・藤原恭大の打棒が圧巻だ。もともと俊足も売り物で1番を打っていたが、センバツからは4番に座り、この夏も4試合で18打数8安打。うちホームランが3本で、準々決勝では2発放り込んでいる。5回の右翼弾は、大阪桐蔭にとって選手権通算46本目で、これはPL学園(大阪)の45本を抜き、チーム歴代最多記録を更新するものだ。
そして8回の2本目は、超弾丸のライナーが、糸を引くようにバックスクリーンを直撃。「完璧でした。でもまさか入るとは……」と本人も言うが、実際、あんな弾道はこれまで見たことがない。これで藤原は、甲子園通算5本塁打となり、史上5位タイ。センターでも、前後左右に見せる広々とした守備範囲は、鉄壁守備陣の要だ。
さてさて、明日は4強激突の準決勝。まるっきり私的に設定したタイトルではあるが、大会MVPは藤原? 吉田? それとも……。あなたのお気に入りはだれですか。
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