優勝の“オーラ”が漂っていたT・ウッズ スピースとの新旧王者時代幕開けか
本物の優勝争いを演じたウッズ
大混戦となった今年の全英オープン。話題をさらったのはタイガー・ウッズだ 【写真:ロイター/アフロ】
今大会は例年に比べ、トピックが多かったように思える。世界ランキングナンバー1、2のダスティン・ジョンソンとジャスティン・トーマス(ともに米国)がそろって予選落ち。上位進出が見えていた松山英樹が2日目の最終ホールでトリプルボギーをたたき、予選落ちとなった悲劇もあった。日本勢4人が決勝ラウンドに進み、宮里優作が3日目で「65」をマークしたのも見事だったが、なんといっても話題をさらったのは、タイガー・ウッズ(米国)だろう。
腰のケガから復帰し、今季はフルシーズンを戦っているが、完全なる優勝争いとはあまり縁がなかった。結果的に上位に入ることはあっても、「優勝を視野に入れて」戦う状態ではなかった。それが、今回のウッズは間違いなくそのモードに入っていた。
「昔の感じが戻っていた」ウッズの手応え
最終18番ホールを移動するウッズ。一時はトップに立つなど大会を大いに盛り上げた 【写真:ロイター/アフロ】
「少し頭にきている。後半はうまくいかなかったが、やるべきことはできた。昔の感じが戻っていた。あの優勝争いの感じ。今日はそのチャンスがあると思った」
唯一、悔やまれるのは11番のダブルボギー。ティショット、セカンドショットをミスした時点でボギーを覚悟していれば、結果は違っていたかもしれない。パーを取りにいくため、ラフからロブショットを選択したが、グリーンを外し、1ホールでミスを3つ重ねたことは、わずかに勝負勘が欠けていたからなのか。
結果的には、11番と12番でスコアを3つ落とし、優勝に3打足りず6位タイで終えたが、確実に“その時”は近づいている、そう思わせる“オーラ”は出ていた。「とにかく優勝争いの数を増やしていけば、復活は遠くないはずだ」とは、今年言い続けているウッズの言葉。それがこの大舞台でようやく本物の優勝争い。ファンだけでなく、何よりウッズ自身が一番、メジャー15勝目への手応えを実感できたのではないか。
スピースは連覇を逃すも復活に自信
5月のザ・プレーヤーズ選手権でウッズ(左)と談笑するスピース。黄金期再来に向けて、楽しみな夏となる 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
「リーダーボードを見ない」と宣言し、自分のゴルフに専念することを命題として飛び出していったスピースだったが、「7番あたりで見てしまった。そこでタイガーがトップにいたんだ。タイガーが来ている! そう思うと興奮してしまって」と、一瞬だが動揺したことを明かしている。
3日目まで快調に飛ばしてきたスピースも、最終日はノーバーディでスコアを5つ落とした。惜しくも大会連覇を逃したが、自身はその敗戦よりも、復活を喜んでいる。ウッズほどの低迷ではないが、スピースも昨年の優勝以来、スランプに陥っていたのだ。
「今年は、自信があったパッティングが決まっていなかった。でもそれを乗り越えてここまで来ることができた。そういう時期があると、より強くなれると信じていた。今後が楽しみになった」
優勝という結果で復活を飾りたかった気持ちはあったに違いないが、自信を取り戻したスピース。残すメジャー最終戦の全米プロゴルフ選手権(8月9日開幕)を制すれば、生涯グランドスラムを達成することになるだけに、黄金期再来に向けて、楽しみな夏になってきたといえそうだ。
13年7月に10代でツアー初優勝。彗星(すいせい)のごとくデビューしたスピースの快挙のわずか数週間後、ウッズがツアーで最後の優勝を遂げ、その後不振に陥った。新旧王者の交代劇が起こったあの夏から5年。「まだまだ絶頂期はこれから」というスピース。「ようやく戻ってこられた」と存在感を示したウッズ。この2人を中心として、世界のゴルフ界が回っていく。今回の全英オープンはそんな新時代への幕開けだったといえるのではないだろうか。
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