【新日本プロレス】 G1前半戦を終えオメガ、ジェイが無敗 石井と後藤の死闘で聖地が熱狂

高木裕美

Aブロックはジェイが無敗 棚橋、真壁らが追う

G1前半戦を終え、Aブロックはジェイ、Bブロックはオメガ(右)が全勝をキープしている 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスの真夏の祭典「戦国炎舞 -KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28」6日目となる21日の東京・後楽園ホール大会では、Bブロック公式戦5試合などが行われ、札止めとなる1734人を動員した。今年は20選手が2ブロックに分かれ、総当りリーグ戦で激突。各ブロックの1位同士が最終戦8.12東京・日本武道館のメインイベントで優勝決定戦を争う。

 この日は公式戦がなかったAブロックでは、前IWGP US王者のジェイ・ホワイトが唯一の3連勝、勝ち点6で首位を独走中。しかも、勝ち星を奪った相手がオカダ・カズチカ、棚橋弘至という優勝候補だけに、最終公式戦終了後にオカダらと勝ち星が並んだ際には、直接対決の結果によりジェイが決勝進出となるため、今、もっとも優勝に近い男と言っても良いだろう。

 2勝1敗の勝ち点4は棚橋、真壁刀義、マイケル・エルガン、EVILの4選手。棚橋は勝ち星こそ先行しているものの、やはり、爆弾を抱える右ヒザへのダメージが不安視されるところ。09年以来9年ぶりの優勝を目指す真壁も、若手選手の台頭が目立つ中、さらなる奮起が期待される。

 1勝2敗の勝ち点2はオカダ、バッドラック・ファレ、ハングマン・ペイジ、鈴木みのるの4選手。これまで、12年、14年とIWGPヘビー級王座を手放していた年には「G1優勝確率100%」を誇っていたオカダだが、今年はまさかの開幕2連敗。だが、自身でも「今年のG1のテーマは笑顔」と話していたように、髪の色、コスチューム、テーマ曲をすべて変え、バルーンを手に入場と、これまでの“レインメーカー”の崇高なイメージを一新している。

 また、タマ・トンガ、タンガ・ロアと共に「BULLET CLUB OG」を結成したファレも「何を仕掛けてくるのか分からない」怖い存在。この2敗はいずれも乱入による反則負けだが、オカダ戦ではこの乱入によって白星もつかんでおり、今後もリーグ戦をかき回していきそうだ。

 そして、現在3連敗と唯一の0点はYOSHI-HASHIただ1人。YOSHI-HASHIは初出場した16年こそ、初戦で“格上”のオメガに勝利しインパクトを残したものの、それ以外は2年連続で“白星配給係”に。G1公式戦だけではなく、タイトル戦でもまったく結果を残せておらず、今年の結果いかんでは、来年のG1エントリーも難しくなるため、残りの公式戦は背水の陣で臨むことになるだろう。

石井がNEVER王者・後藤から白星

後楽園最終日のメインを飾った石井(右)と後藤(左)の公式戦は死闘となり、聖地を熱狂させた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 この日のBブロック公式戦では、番狂わせや因縁対決があった。

 メインイベントでは、後藤洋央紀と石井智宏によるCHAOS同門対決が実現。過去にもG1公式戦やタイトルマッチでシノギを削ってきた両者が、今回も聖地を熱狂に包む死闘を繰り広げ、石井がNEVER無差別級王者から勝利をもぎ取った。

 ゴング直後から激しい打撃戦を展開すると、5分過ぎ、後藤がスリーパーで捕獲。石井は口から泡を噴き出しながらも、強引になぎ払うと、ラリアットの打ち合いとなり、互いにダウンを奪い合う。相打ちで両者がマットに倒れこむや、客席からは両者を称える拍手が自然発生。それほどまでに、意地と覚悟がムキ出しの攻防だった。後藤が再度スリーパーでとらえると、石井は裏拳を何度も後藤の腕に打ち込み、「痛ぇ!」とついにキレた後藤の頭突きにカウンターのナックル。さらにラリアット、雪崩式ブレーンバスターを繰り出すと、後藤も牛殺し、ラリアット、裏GTRからGTRを狙うが、これは石井が切り返してバックドロップ。後藤の切り札である昇天・改もカウント2でしのいだ石井は、頭突き合戦からスライディングエルボー、垂直落下式ブレーンバスターとたたみかけて3カウントを奪った。

 これで2勝1敗と勝ち越した石井だが、ダメージは大きく、試合後はセコンドに抱えられ、無言で控室に直行。一方、NEVER王者である後藤は1勝2敗と黒星先行となった。

バレット内紛激化 オメガは反則勝ち

試合後もオメガを痛めつけるBULLET CLUB OGのメンバー。G1後のユニット存続も危うい状態に 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルでは、BULLET CLUB内紛の当事者同士であるIWGPヘビー級王者ケニー・オメガとタマ・トンガによる因縁対決。BULLET CLUBオリジナルメンバーによるBULLET CLUB OGがセコンド乱入で暴走するも、オメガが反則勝ちを収めた。

 両者の間に亀裂が走ったのは7.7米国サンフランシスコ大会。メインイベントでCodyとのBULLET CLUB同門対決を制し、IWGP王座初防衛に成功したオメガに対し、突如トンガらが造反。背後からオメガを急襲し、反旗を翻した。

 これによりBULLET CLUBは、3代目リーダーであるオメガを中心とするBULLET CLUB ELITEと、初期メンバーによるBULLET CLUB OGに分裂。トンガ、タンガ、ファレによるOGは、このG1中も公式戦、通常のタッグマッチを問わず、乱入劇を繰り返す狼藉を働き続けている。

 後から入場したオメガは、コール時にトンガに向かって銃口を突きつけようとするが、その瞬間、背後からタンガが急襲。その衝撃でオメガの腰から落ちたIWGPベルトを、トンガは乱暴にマットにたたきつける。なおもタンガ、ファレによる暴行が続き、ファレが大胆にもオメガにバッドラックフォールを見舞おうとするも、ELITEのハングマン・ペイジとチェーズ・オーエンズが駆けつけ、オメガを救出。オメガもノータッチトペで2人を撃退し、ようやく通常の試合開始かと思われた次の瞬間、トンガが背後からスピアー。オメガは試合前からダメージを負いながらも、冷静に試合を進めようとするが、またもタンガが戻ってきてイス攻撃で試合に介入。トンガは差し出されたイスを使ってガンスタンを狙うも、これはオメガに切り返されて自爆。ならばと今度はイス上へのスタイルズクラッシュを狙うが、反則攻撃とみなした海野レフェリーがイスを蹴り飛ばして阻止したため、なんと、怒り狂ったトンガは、海野レフェリーにまさかのガンスタンを発射。レフェリー不在となるも、反則裁定が下され、試合終了のゴングが鳴らされた。

 だが、なおも収まらないOG勢はオメガをリンチ。オメガの首をイスではさんでのガンンスタンを狙うが、ここにオメガのパートナー・飯伏幸太が飛び込み、体を張って救出。勝利はしたものの、ダメージの大きいオメガは、飯伏の肩を借りて退場した。

 これにより、オメガはBブロック唯一の3連勝。G1開始前に公言していた「全勝優勝」にまた一歩近づき、95年の武藤敬司、00年の佐々木健介に続く、史上3人目の「IWGP王者のG1優勝」も見えてきた。一方、トンガは1勝2敗と負け越し。今後も優勝争い度外視で乱入・乱闘を連発し、公式戦をかき回してきそうだ。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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