“空手界のカリスマ”に連勝中の男 父は元世界王者、福岡出身の22歳・西村拳

岩本勝暁

離れて感じる、故郷・福岡の“居心地”

出身地の福岡は「住みやすいところ」。故郷の居心地の良さを、今は実感している 【スポーツナビ】

 高校生の頃から伸びはじめた身長は現在180センチ。75キロ級の中では長身の部類に入る。高い位置から放つアクロバティックな蹴り技が最大の武器だ。スピードに長け、「刻み突き」でポイントを取ることもできる。

 ひとたび道着を脱げば、22歳の若者の素顔をのぞかせる。
「買い物や、遊びに行くのが好きですね。オフの日はしっかりリフレッシュしています」

 故郷の話をすると、博多弁の抑揚になる。

「中学まで住んでいました。もちろんずっと好きなところでしたが、それまで他県で生活をしたことがなかったので、福岡がどれだけ居心地がいいか分からなかった。屋台のラーメンが有名ですが、どこで何を食べてもおいしい。博多弁はかわいいし、大阪や東京ほど人も多くない。住みやすいところだなと、離れてから思うようになりましたね」

 7月から五輪の切符を懸けた争いが本格的に始まった。10月には東京武道館でプレミアリーグも開催される。

「相手を倒せばいいという競技ではありません。組手競技では、正確なコントロールが求められます。とても繊細です。空手というとどうしても“瓦割り”など無骨なイメージがあるかもしれないけど、蹴り技や回転蹴り、荒々しい投げ技などアクロバティックな技もあります。武道でありながら、スポーツとして楽しんでいただけると思います」

 強くとも人に優しく、決しておごることがない。空手界のニュースターから、東京五輪の主役へ――。
 金メダルの最有力候補は、爪を研ぎ、牙を磨きながら、その時が来るのを静かに待っている。

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著者プロフィール

1972年、大阪府出身。大学卒業後、編集職を経て2002年からフリーランスのスポーツライターとして活動する。サッカーは日本代表、Jリーグから第4種まで、カテゴリーを問わず取材。また、バレーボールやビーチバレー、競泳、セパタクローなど数々のスポーツの現場に足を運ぶ。

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