楽天の希望「タナモギアイランド」 1番・田中和基は柔軟性で急成長
両打ちは「プロへのアピールのため」
大学時代、左打ちに専念したこともある田中。両打ちに戻したのは「プロへアピールするため」 【写真:BBM】
小さいときから右でも左でも打っていたのですが、高校まではプロを目指してスイッチヒッターをやっていたわけではなく、両方打てたほうがいいかなと思うくらいで、遊びの延長という程度でした。大学入学時は両打ちでしたが、3年生のとき、レギュラーを取りたいと思い、足を生かし内野安打を稼ごうと思って左に絞りました。
でも、その秋、1学年上で明治大の、今はロッテでプレーする菅野剛士さんがドラフトにかからなかったんです(その後日立製作所を経てプロ入り)。右投げ左打ちであんなにバッティングがいいのに。そういうのを見て、やっぱり右投げ左打ちの外野手というのはたくさんいて、その人たちのトップに立たないとプロには行けないのだと考えたときに、右投げ左打ちだけで勝負するのはちょっと怖かった。やはり両打ちというだけで、少し価値があるのかなと思い、両方打てるという強みを生かしてみようと思い、プロへのアピールのために両打ちにしました。
「守備だけは絶対に期待を裏切らないように」
守備は自分との戦い、と田中は語る 【写真:BBM】
ただ急に肩が強くなったり、足が速くなって守備範囲が広くなるということはないだろうし、積み重ねだと思うんです。だからこそ周りをよく見て、あわてずプレーすることを意識しています。
東京ドームでのオリックス戦(5月24日)での、岸(孝之)さんの1失点。これは僕の判断ミスで与えてしまった1点です。外野の一つの判断ミスは点につながるので、とにかく判断だけは間違わないように集中してやろうと、それ以来、意識というかスイッチが入りましたね。一流の選手は余裕があると思うので、今は無理矢理、心に余裕を持たせてやっています。
ここまでは正直、自分の中で打てているとか、これでいけるなという感覚はまったくないので、まだまだいろんなことに挑戦していかないといけないと思っています。1試合打てなかったらどうなるか分からない世界ですし、もし打ったとしても次の日試合に出してもらえるかも分からないような立場なので、「明日も使ってみようかな」と思ってもらえるような姿を毎日見せなきゃいけない。今は安心とか、これでいいという考えは一切ないですね。
残り試合もやはりあわてないことが大事になると思います。打席内でも打てないからといってあわてても仕方がないですし、走塁でもテンパることなく、守備でも見ている人が安心するような余裕を持ったプレーをしたいなと思っています。常に平常心というか、淡々と、心に余裕を持ってこなしていきたいです。
聖澤諒、オコエ瑠偉、島井寛仁と俊足の外野手はチーム内にたくさんいる。その中で田中の武器となったのは柔軟性だった。6月12日以降は1番に定着。タナモギアイランドという言葉が生まれるほど2番・茂木栄五郎、3番・島内宏明とともにチームに欠かせぬ存在となった。田中はどん底のチームの中で、ファンにとって明るい光となっている。
(取材・構成=阿部ちはる、写真=小倉直樹、BBM)