3度目の正直でベスト8を狙う日本代表 逆算のキャスティングで手にした「余力」

飯尾篤史

西野監督は「逆算」していた

決勝ラウンドで勝つことを念頭に置いて選手をセレクトしてきた西野監督 【Getty Images】

 西野監督はポーランド戦後の会見で、こんなことを話していた。

「(過去の)2大会とも、この時点ですべてを出し尽くし、やっと(ベスト)16に進むことができた。おそらく今、同じ状況かもしれないが、対戦相手に対して今まで以上に優位なスピリットを持ち、精神的にも今までの状況と違う持ち方をさせたいと思います。すべて出し尽くしてグループステージ突破を成し遂げたことの延長に(ベスト)16があったのではなく、そうではない状態に持って行かせたいと思います」

 この言葉を聞くと、すでにベスト16をどう戦うか、つまりはベスト8進出を視野に入れて、逆算してキャスティングを決めてきたことがうかがえる。

 ベルギーとの決戦の地、ロストフに向かう6月30日(現地時間)。午前練習のあと、西野監督は時間稼ぎを行ったポーランド戦のラスト10分間を逆手にとって、ベルギー戦への意気込みを笑いに変えた。

「走行距離が10分間ないわけですから、80分間でやはり少なかったですし、その分は走れると思いますし、いろいろな方にその分をお返ししたいなと思います」

歴史を塗り替えるのは俺たちだ

日本代表チームがベルギー戦の会場となるロストフに到着 【写真は共同】

 日本代表は新たな歴史を築くことができるかどうか――。

「毎回ここで敗れているという事実。このチャンスがいつ来るか分からない。このタイミングでベスト16の壁を越えたいと思っている。後悔しないようにしたい」

 原口がそう決意を口にすれば、長友も決戦を前にした心境を明かす。

「南アフリカのときもベスト16に行きましたが、心境が全然違って、まったく怖さがないんですよね。恐怖とか不安というものがなくて、なぜかワクワクしています」

 W杯開幕の2カ月前に指揮官が交代し、本番までの準備期間はわずか3週間。与えられたテストマッチは3試合と、追い詰められた状況で、この代表チームは立ち上げられた。しかし、今は悲壮感も、恐怖心も、満足感も一切ない。

 あるのは、歴史を塗り替えるのは俺たちだという野心と、自分とチームへの期待だけ――。歴史を変える大一番に向けて、心身ともに準備は整った。西野監督と日本代表はいよいよ未知の領域に大きな一歩を踏み出す。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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