首位通過で「厳しい道」を選んだベルギー それでも国内は16強の日本戦に楽観ムード

中田徹

Bチームも充実のスター軍団

イングランド戦で華麗な左足シュートを決め、決勝点を挙げたヤヌザイ 【Getty Images】

 イングランド戦での収穫は、将来を見越して23人のメンバーに入れたティーレマンス、デンドンケルがフル出場を果たしたことだ。ティーレマンスは、チュニジア戦のミシー・バチュアイのゴールに続いて、ヤヌザイのゴールをお膳立てした。3バックの一角に入ったデンドンケルは必ずしも良い出来とは言えなかったが、それでも貴重な経験を積んだことだろう。そしてあらためてムサ・デンベレは一流のセントラルMFであることを証明した。

 これだけBチームが充実しているのだから、選手にアクシデントが起きたとしてもマルティネス監督はやり繰りに困らないだろう。例えば、チュニジア戦で足首を痛めたE・アザールが日本戦に間に合わなかったとする。そうしたら、2シャドーの右にデ・ブライネを上げて、彼がいなくなったセントラルMFにはデンベレを入れればよい。今のベルギーにパズルのピースの不足はない。

 こうしてベルギーは3戦全勝でグループGを終えた。パナマ(3−0)、チュニジア(5−2)、そしてBチーム同士で戦ったイングランド戦(1−0)と、ベルギーにとっては楽な試合ばかり。だから、『デ・モルヘン』紙のように「ベルギーのW杯はラウンド16の日本戦から始まる(その次はブラジル戦だ)」という記事が掲載されている。

 オランダ人解説者のヤン・ムルダーは「日本戦もベルギーはBチームで戦うべきだ」、元ベルギー代表GKヘールト・デ・フリーハーは「相手を過小評価してはいけない。だけど一般的に言って、日本はベルギーにとって問題のない相手だ」と、「日本戦はかなり高い確率でベルギーが勝つ」と見る向きが圧倒的だ。彼らにとっては、もしかしたらW杯の本当のスタートは、ブラジル対メキシコの勝者と対戦する準々決勝なのかもしれない。

国内が楽観ムードでも選手に油断はなし

昨年11月、日本に1−0で勝った親善試合でプレーしたベルマーレン 【写真:アフロ】

 もっとも、これらの声はあくまでピッチ外の話。2年前のユーロ(欧州選手権)の準々決勝でウェールズに負けてしまったベルギー代表が、日本代表を甘く見るとは思えない。昨年11月、1−0で勝った日本代表との親善試合を振り返り、ベルマーレンは「日本はとてもエネルギッシュなチームだったことを覚えている。走力もあった。厳しい試合になるだろう。W杯の試合はどれもそうだけどね」と語っている。

 日本代表にとっては、3度めのラウンド16進出だ。ポーランド戦後、吉田麻也は「ベルギーとイングランド、どちらが来ても構いません。われわれとしては、そこに勝ってベスト8に進みたい」、川島永嗣は「相手がどこであろうと(チームが)1つになって歴史を作りたいと思います」と語ったように、選手たちは初のベスト8進出に燃えている。

 スター軍団のベルギーに対して、日本がいかに団結して挑むか、そのチャレンジに期待したい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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