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悲願を果たしたトヨタの24時間
ル・マン初Vで挑戦は新たなステージへ

対象的だった7号車と8号車のクルーたち

8号車の走りでトヨタに新たな歴史が刻まれた
8号車の走りでトヨタに新たな歴史が刻まれた【Getty Images】

 そして14時半前後、最後のスティントに向けたピットインをそれぞれが行った。すでに勝負はついており、8号車も7号車も、ピットイン作業は必要以上にゆっくりだった。先に8号車が、そして次に7号車が作業を終えた。このとき、最後の送り出しを終えたクルーたちは互いに抱き合い、硬い握手を交わしていたが、8号車クルーと7号車クルーには明確な差があった。それは、7号車のクルーたちが目を赤くしながら、互いに抱き合い、握手していたこと……。もちろん、一つのチームとして優勝するため最大限の努力をするが、同時に、この2台は最大のライバルでもある。


 残酷だが勝負に敗れた7号車は勝利の美酒を味わうと同時に、敗者の苦渋も味わう。それがレースであり、勝負なのだ。24時間のほとんどを、2分以内という、いつ順位がひっくり返ってもおかしくない、緊張感の張り詰めたレースを、2台はこなしてきた。その均衡がまさか、最後の最後に崩れることは誰も想像だにしなかっただろう。


 こうして、トヨタは1985年初参戦以来、足掛け20回目、30年以上続いた悔しい呪縛から逃れることができた。その意味は、今回のポールシッターであり、最後のドライバーとしてチェッカーを受けた直後「サンキュー、エブリワン!」と無線で言葉を発した中嶋のレース後のインタビューが言い表しているかもしれない。

「背負っていたものが軽くなるかな」と一貴

──ついに勝ちました。


 ほっとしたのが一番です。ほっとしました……。レースも長いですし、ここまでも長かったので。僕らもそうですけど、トヨタのル・マンのプロジェクトとして30年以上挑戦してきているので、それに本当にたくさんの人達が関わっていますし、本当にたくさんの人達の目標をやっとこういう形で、ワンツーという最高の形で達成することができたので……。


──今回は楽しめましたか。


 いいえ。でも、次回からはもう少し楽しめるんじゃないかと思います。勝って聞ける「君が代」ってまたちょっと特別だなと思いますし、表彰台の上からの景色は忘れられない景色でした。ただ、このレースが終わって、それだけで終わりではないので。まだまだシーズンは長いのですし、来年のル・マンがあるので。まあ、地に足をつけて頑張らなくちゃなと。


──昨年は自信を持てば、と言っていましたが勝てなかった。今回を見る限り、運の側面が大きいのでは。


 運だとか、流れだとか、そういうものだと思います。実際、レースの展開として、7号車が勝っても8号車が勝ってもおかしくないレース展開だったと思いますし、実際、どっちも勝ちに値するレースをしたと思うので、たまたまそれが、ちょっとしたら流れがこっちに来たということだと思います。何事もなくレースが終わると……、なかなか信じられないぐらい、いろいろな経験をしてきたので、それも含めてツキがあったのかなと思います。


──あらためて、ル・マンとはどんなレースですか。


 いやー、しんどいですよね。しんどいレースです。でも、ひとつ勝てたといこうとで、だいぶ肩に背負っていたものが軽くはなるのかなと思うので、次回のレースからはもっと楽しめるのかなと思います。

ここからが本当の道の始まり

 トヨタはついにル・マンに勝った。そして、数万のファンが集まる風景を上から眺めた。ポルシェもアウディも、この景色を眺め、勝利の喜びを実感し、「また勝ちたい!」と思ったはずだ。そして彼らは何度も勝ってきた。


 トヨタが目指す、「強いチームになる」というのは、勝って、勝者しか見ることができない景色を見た先にあるのではないだろうか? そして彼らは、今回その景色を見た。ならば、次も、そのまた次も、と貪欲に勝利の積み重ねを目指していくだろう。そして、それこそが強いチームへと成長していく糧となるに違いない。


 トヨタは「道がクルマを鍛える」という言葉をよく使う。このル・マンもまた、彼らと彼らのクルマを鍛えてくれる道であり、30年以上かけて、やっとたどり着いたスタートラインだ。ここからが本当の目標に進む道の始まりであり、「強いチーム」になるための新たな挑戦だと思う。

田口浩次

スポナビDo

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