中嶋一貴が重視する24時間のメリハリ トヨタのル・マン初制覇へ準備は万全

田口浩次

レース中の時間の過ごし方

24時間の長丁場を3人のドライバーが交代で走行する 【Getty Images】

 誰もが24時間レースと聞いても、果たして、ずっと起きているものなのか、途中で仮眠を取るものなのかなど、知らないことも多いはず。その過ごし方を聞くと、普段の生活やビジネスの世界でも通用するような話を聞くことができた。

「ル・マンでは、一般的に3人のドライバーが交代してドライビングを担当します。どう休憩を取っているかですが、基本的にまずレース中の運転自体は、一回につき大体2時間半から3時間強を担当します。つまり乗り終わってから、5時間から6時間ほどの時間が空くので、走行後まずはクルマの状態についてエンジニアと話をして、その後はご飯も食べないといけないですし、シャワーも浴びますし、いろいろなことを詰め込んでいくわけです。シャワーを浴びて、ご飯を食べて、寝て……。寝るといっても正直3時間も寝ていない程度だと思います。そして再びマシンに乗る1時間くらい前には起きて準備して、という作業が始まるわけです。実際に走る回数は3回程度だと思いますので、間に2回、そうした作業が入ります」

 しかし、2時間半から3時間強も、緊張した状態で走行した直後、つまりアドレナリンが出まくっている状態で、すぐに寝ることができるのだろうか? われわれの生活で、レーシングドライバーほどの緊張感を感じることはそうないだろうが、それでも学校のテスト前、重大な仕事前といったとき、寝付きが悪かったりすることもある。ドライバーにはそうしたものはないのだろうか?

「頭の中のストレスをリリースすること」

「もちろん寝られるドライバーと寝られないドライバーとはいますが、寝ることができるタイプの人はそれでいいですし、逆に寝られなくても、“寝なくちゃ!”と思わないことが重要かと。頭と体を休める事ができれば十分だと思います。僕たちも24時間レースのことだけを思うことは大変です。レースに限らず、ビジネスなど何事もそうだと思いますが、切り替えるというか、ストレスをリリースしてリセットすることが重要なのだと思います。

 レースの世界では、普段の生活と仕事の場所とで、自分に掛かる緊張の度合いがずいぶんと違いますので、切り替えることが癖や当たり前みたいになっていますが、本来、頭の切り替えというか、自分の頭の中のストレスをリリースすることこそ、人間誰しも重要なことだと思っています。柔軟性というわけではないのですが、例えば僕は普段の食生活に大きなこだわりはなく、その場で選択できる食べもののなかで、自分がハッピーになれるようにメニューを選んでいます」とのこと。

 誰しもがより完璧に近かったり、より好条件を求めるものだ。それはそれで大切なことだが、与えられた環境や、いまある材料のなかでベストな選択をして、自分のストレスを抱え込まない。日本人初のポールシッターであり、今回2度目のポールポジションを得た中嶋の考え方は、ビジネスや勉強を進めるなかでも、なにかのヒントになるかもしれない。

 ところで、この中嶋やF1世界チャンピオン経験者アロンソ、そしてトヨタによるル・マンの戦いぶりは、残念ながら日本での地上波ではライブ中継される予定はない。しかし、今年はダイジェストムービーをトヨタ公式サイト内で随時アップしていくと言う。気になる人は、彼らの挑戦をチェックしてもらいたい。

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