張本智和、ジャパンOP初Vが示した成長 「打倒・中国」ではなく世界の頂点へ

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地元開催のワールドツアーで日本選手が躍動

14歳の張本智和がジャパンオープンを初制覇。ワールドツアー2勝目を飾った 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 卓球のITTF(国際卓球連盟)ワールドツアー「ライオンジャパンオープン荻村杯」が6日から10日まで、福岡・北九州市にある北九州市立総合体育館で行われた。今回で30回目を数えるジャパンオープンは、北九州での開催が1996年以来2度目。22年ぶりの開催ながら、日本選手の活躍をひと目見ようと週末には土日ともに4000人近い観客が会場を訪れ、最近の卓球熱の高まりを感じさせた。

 その応援に応えるかのように日本選手が躍動。日本男子の大黒柱である水谷隼(木下グループ)は連戦の影響による疲労のため直前に欠場を発表したが、女子は石川佳純(全農)、伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇、早田ひな(ともに日本生命)、男子は丹羽孝希(スヴェンソン)、張本智和(JOCエリートアカデミー)、松平健太(木下グループ)といった4月下旬から5月上旬にかけて行われた世界選手権団体戦(スウェーデン・ハルムスタッド)を戦ったメンバーが集結し、再び世界の強豪たちと対峙(たいじ)した。

 中でも混合ダブルスでは17年世界選手権金メダルの吉村真晴(名古屋ダイハツ)、石川ペアが準優勝。そして女子シングルスでは、伊藤が準決勝で陳幸同、決勝では6連敗中だった王曼イクと中国勢を連破し、2013年の福原愛以来となる5年ぶりの優勝を飾った。また男子シングルスでは、こちらも3人の中国選手、2人の韓国選手を破った張本が、昨年のチェコオープンで最年少Vを飾って以来となるワールドツアー2勝目を挙げた。

 これらの活躍の中で、多くの卓球ファンを熱狂させたのは、やはり快挙とも呼べる優勝を飾った張本のプレーだろう。

中国オープンでロンドン五輪王者を破る快挙

 張本は今大会の位置づけを「世界選手権のリベンジ」と話した。北欧の地ではブラディミル・サムソノフ(ベラルーシ)、荘智淵(チャイニーズ・タイペイ)、ガオ・ニン(シンガポール)といった相手国のエースを次々に破る活躍も見せたが、イングランドのリアム・ピチフォード、韓国の鄭栄植に敗れ、その敗戦が日本男子6大会ぶりのメダルなしという結果につながってしまった。

 大会終了からワールドツアー参戦まで2週間しか期間はなかった(編注:5月22日開幕の香港オープンは大会前に欠場を発表)が、ラバーの変更や課題となったサーブやフォアの強化に取り組み、「中国か日本で優勝したいと思っていた」と結果を残すための努力を続けた。

 ターゲットとしていた中国オープンでは、1回戦で12年ロンドン五輪男子シングルス金メダリストの張継科(中国)を撃破。張継科自身はケガからの復帰明けで本調子とは言えなかったものの、元世界王者に対して4−0でのストレート勝利は衝撃的なニュースとなった。しかし2回戦では世界ランク5位の林高遠に敗れ、中国勢連破とはいかなかった。

倉嶋監督「馬龍に勝つチャンスはある」

準々決勝では「憧れ」の馬龍に勝利。リオ五輪金メダリストを破ったことで勢いに乗った 【写真は共同】

 そして迎えたジャパンオープン。男子シングルスの組み合わせが決まった時点では、「優勝なんて考えていなかった」と張本は振り返る。それは準々決勝で16年リオデジャネイロ五輪男子シングルス金メダルの“絶対王者”馬龍(中国)と対戦することになるからだ。

 14歳の張本にとって、長く世界のトップに君臨した馬龍は憧れの存在。初対戦は15年10月のポーランドオープンに遡るが、この時は0−4のストレートであえなく敗戦。当時小学生の張本には、高い壁の存在を身を持って感じた試合になっただろう。もちろん、その後の3年間で急成長を見せているが、実際に対峙するまでは「勝てる」と本人も口にすることはできなかった。

 ただ、日本代表男子チームの倉嶋洋介監督は「勝ちにいく気持ちで戦え」と張本に伝えていた。張本の奮起を促すだけでなく、勝機がないわけではないと分かっていたからだ。

「最近の馬龍選手はセーフティーなバックハンドを多用する戦い方に変えている。フォアハンドは世界最強だが、今はそれでガツガツ攻めてこないので、バックハンドの攻防でチャンスを作りたい。もしフォアを打たれても何度か返せたら大丈夫。あとはフィジカルと心の問題。チャンスはある」

 張本のバックハンドは世界でも屈指の打点の早さが武器で、多くのトップ選手をそれで破ってきた。この点では馬龍に負けておらず、むしろ試合を有利に運ぶ要因になる。しかし、それだけではすぐに攻略されてしまい、勝ち切ることができないのが中国選手の強さの秘けつ。そのため、倉嶋監督は1つの戦術として「緩急をつけることで攻略する」という指示も出した。それは張本の得意なプレーでもあるレシーブの「チキータ」(ボールに横回転をかけながら払うフリックショット)を多様するのではなく、ラリーで粘る作戦に出ることだった。そうすることで攻撃一辺倒の戦い方からリズムを変え、相手に的を絞らせない戦いを展開できる。

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