世界卓球、読めない「コリア」の温度感 決勝進出へ、日本女子はどう戦うか

月刊『卓球王国』

大会期間中に”異例”の統一チーム結成

3日に急遽結成された統一チーム「コリア」。会見で笑顔を見せる選手たち 【写真は共同】

 5月3日、大会5日目を迎えた世界卓球選手権団体戦ハルムスタッド大会。会場は朝から激震に包まれた。午前10時から行われる女子準々決勝での対戦が決定していた韓国と北朝鮮が試合をせず、統一チームの「コリア」として準決勝を戦うことがアナウンスされた。

 1991年の千葉大会でも韓国と北朝鮮はスポーツ界で初めて統一チームの「コリア」として世界選手権に出場し、女子団体戦では優勝に輝いているが、この時は大会前にすでに「コリア」としての出場が決まっており、合同合宿も重ねた上での大会参加だった。卓球界では世界選手権やワールドツアーで、他国の選手との「国際ペア」での出場が認められており、国家間を越えた大会参加の文化、前例はある。

 しかし、今回のような大会期間中の統一チーム結成は前代未聞。先週の韓国、北朝鮮による南北首脳会談で発表された「板門店宣言」内の「南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一」に向けた取り組みのひとつであることは確かだ。

 世界選手権の舞台では71年の名古屋大会で、大会に出場していた米国と中国の選手の交流をきっかけに、当時国交が断絶していた米中の外交関係が緩和され、当時の米大統領、リチャード・ニクソンの訪中につながり、その後の米中国交正常化への道を開いた「ピンポン外交」の歴史がある。とはいえ、あくまで選手、競技があった上で外交につながっていったのが「ピンポン外交」。今回の統一チーム結成は競技、選手を置き去りにし、外交が前面に出てきてしまった印象は否めない。

 今回、このような統一チーム結成に至った経緯を国際卓球連盟(ITTF)のトーマス・バイカート会長はこう語る。

「昨晩、ITTFが作る財団のレセプションで、将来的に統一チームを作る話が出て、まるでアクシデントのように、翌日の準々決勝で試合をしないで(韓国と北朝鮮が)統一チームとして準決勝に進む話が出た。一晩掛けて両国からの最終確認を待ち、第2ステージ(決勝トーナメント)に出場の各協会の同意も得て決断した」

 もちろん今回のようなルールはなく、大会期間中の統一チーム結成に関して、会見では「ITTFは自由にルールを変えることができるのか」という厳しい質問も出たが「われわれはルールを尊重しているし、ルールも変える。これはルールを超えた出来事で、平和へのサインだ。次にこういうことはないだろう」と答えている。

平野「相手に勝つことは一緒」

勢いに乗る日本女子チームが、決勝進出を懸け「コリア」と激突する 【写真は共同】

「コリア」の最初の相手は、準々決勝の日本対ウクライナの勝者となっていた。日本女子はメダルが懸かった準々決勝を前に、この発表を知ることとなったが、動じることなく今大会で2度目の対戦となったウクライナを撃破。トップで伊藤美誠(スターツSC)がマルガリータ・ペソツカの回転量豊富なドライブに苦しめられ、最終ゲームに8−10でマッチポイントを握られるも、持ち前の強心臓ぶりを発揮。勝利を意識して消極的になった相手の隙を見逃さず逆転勝利を挙げると、2番の石川佳純(全農)、3番の平野美宇(日本生命)もカットマン相手に完勝し、グループリーグ初戦から続くストレート勝利を6まで伸ばした。

 これにより、準決勝で「コリア」との対戦が決まった日本女子。ウクライナ戦に出場した3選手とも「コリア」結成には「ビックリした」と語りながらも、「でも私たちは相手に勝つことは一緒なので、明日も勝ちたいです」(平野)と「試合をして勝つことには変わりはない」といった様子。4日の「コリア」戦も石川、平野、伊藤の起用が濃厚だ。チームを率いる馬場美香監督も「出てくるであろう相手の5名に対して対策を考えていく。私たちが戦うのは対戦する相手だけなので、1試合1試合、1球1球全力でプレーすることが仕事です」とあくまで目の前の相手に集中するのみといったコメントを残した。

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