川田と福永、馬上で交わした言葉 1番人気馬の背中から見たダービー秘話
ワグネリアン騎乗の福永祐一(桃帽)が制した今年の日本ダービー、その舞台裏を1番人気ダノンプレミアムに騎乗した川田将雅(白帽)に聞いた 【写真:Motoo Naka/アフロ】
その川田は毎日放送のスポーツトークバラエティー「戦え!スポーツ内閣」(6月13日24:01〜放送)に出演。収録後に今年のダービーの舞台裏やレースを回顧してもらった。その解説は騎乗スタイル同様に冷静沈着。ピンポイントでの的確なコメントに、聞いていた私はうなるしかなかった。競馬ファン必見かもしれない。
「騎手としても、やはりダービーは特別」
川田にとっての日本ダービーとは? 【写真提供:毎日放送】
「騎手としても、やはりダービーは特別です。レース名にジョッキーがつくのはこのレースだけ。ジャパンカップや有馬記念を勝っても、そんな言われ方はしないですからね。ダービージョッキーの称号は重みがあります」
川田が初めてGIに騎乗したのがデビュー3年目の2006年スーパーホーネットで挑んだ日本ダービーだった。18番人気で15着。そこからキャリアを積み、10度目のダービー挑戦となった2016年マカヒキで栄光を手にした。
「ダービージョッキーになると周りの扱い方が変わりました。ダービーと名のつくレースは世界各国であり、海外に行っても“彼は日本のダービージョッキーだ”と紹介してくれ、それだけで分かってもらえる。競走馬にとっては一生に一度のチャンスですし、騎手にとっても乗るだけで大変なレース。ダービーに乗れずに現役を終える騎手の方が多いぐらいですから」
福永が打った先行策、川田は「驚きました」
デビューからコンビを組むダノンプレミアムとともに挑んだ今年のダービー、川田にとっても初めてのダービー1番人気だった 【スポーツナビ】
「ダービーで1番人気に騎乗するというのは、それだけで大変な名誉なこと。責任感があります。しかし、そういう馬でダービーに臨めるのは幸せですし、ありがたいと感じていました。それに1番人気にふさわしい成績も残していましたからプレッシャーというよりも気持ち良かったですね。それまで、しっかりと準備はしていますから。皐月賞を出られなかったので、ダービーに出走することができ、ホッとした気持ちもありました」
いざ、ゲートイン。川田は好発を決めた相棒を逃げたエポカドーロの直後に導き、3番手のインでレースを進める。望んでいた通りのポジションを手に入れた。
「ダノンプレミアムはゲートが上手。こちらからうながさなくても自分で出て行くタイプ。そこで周りの馬の出方はどうなのか、どうさばくか。1コーナーの入りは、結果を左右するほどとても大事なんですが、簡単にバテない皐月賞馬の後ろにうまくつけることができました」
その後は流れに乗り、直線は間を割って抜け出すかと思われたが、その脚はなく、伸びずバテずのコンマ2秒差6着。勝ったのは川田と親交の深い福永祐一騎乗のワグネリアンだった。不利と言われる外枠17番から掛かるリスクを恐れず、腹をくくっての先行策。これが奏功した。
「正直、ワグネリアンは折り合いをつけるためにも、もう少し後ろからレースを進めると思っていたので積極戦法には驚きました。勝つときはすべてがうまくいくもの。ただ、デビュー戦からユーイチさんが乗って、信頼関係を築いていたからこそできたことでしょう」
この話を聞いて思い出したのが1996年、わずか3戦目で勝ち、奇跡のダービー馬と言われたフサイチコンコルド。そのときコンビを組んでいた元騎手の藤田伸二から「行くとこ行くとこ、すべて前が開いた」と聞いたことがある。