【KNOCK OUT】会場を沸かせた55kg日本最高峰の戦い トーナメントは不可思と秀樹が決勝へ

長谷川亮

江幡が大逆転の一発で小笠原に勝利

WKBA世界スーパーバンタム級王者の王者が小笠原に大逆転の一撃を食らわし、KO勝利を飾った 【写真:中原義史】

 キックボクシングイベント「KNOCK OUT SURVIVAL DAYS」が8日、東京・後楽園ホールで開催された。

 今大会では初代フライ級王座決定トーナメント開幕戦、初代スーパーライト級王座決定トーナメント準決勝と、現在で主軸となっているトーナメント4試合がラインナップされたが、最も会場を沸かせたKNOCK OUTは「55キロ日本最高峰の一戦」と銘打たれた小笠原瑛作(ISKA K−1ルール世界バンタム級&WPMF世界スーパーバンタム級王者)vs.江幡塁(WKBA世界スーパーバンタム級王者)。ともに世界王座を持ちながら主戦場を異にすることから交わることのなかった2人が、KNOCK OUTで相対した。

 VTRでアスリート集団・クロスポイント吉祥寺の一人として紹介を受けた小笠原は、江幡に対し上回る体格とフィジカルの強さを感じさせ、サウスポーからの左ローを効かせて前に出る。小笠原は右フックも冴え、江幡は「やるな」というかのように度々笑みを見せるが、思ったように試合が運べていない裏返しにも映る。1Rの採点はジャッジ2者がイーブン、1者が小笠原。

 1Rにヒジを浴び鼻血の見られる小笠原だが、2Rも左ローを中心に攻める。これを読み、ローにストレートを合わせる江幡だが、打ち合いになると小笠原が左ミドルから左ストレートで江幡に尻もちをつかせる(スリップでノーダウン)。さらに左ハイ、左ストレートと攻め、逆に江幡が力を込めたフックには空を切らせ、左ローもインとアウトで追加と、徐々に試合の流れが小笠原に傾き始める。それを表すかのように2Rの採点は3者が小笠原を支持。

 3R、接近してフックとアッパーをまとめた江幡だが小笠原はこれをガードして当てさせず、強打の左ミドルを1発、2発と連続で当てていく。後退を余儀なくされた江幡だが、距離があいたところから左フック→右ストレートのワンツーで踏み込み、これをジャスミート。小笠原は後方へ大の字に倒れ、江幡が勝負強さと先輩王者の意地を見せる逆転勝ちを果たした。

キックボクシング初挑戦の菊野は“ムエタイゴリラ”を崩せず

キックボクシング初参戦の菊野(右)は、“ムエタイゴリラ”T-98の牙城を崩せず判定負け 【写真:中原義史】

 第3試合では今大会で最も注目を集めた異色のムエタイvs.沖縄拳法空手、T-98vs.菊野克紀戦が実現。

 戦前、沖縄拳法空手が持つ突きの威力をボクシンググローブで出すのは難しいと語った菊野は、それでも初回に重みを感じさせる左ストレートと右フックでT-98を追い込みジャッジ3者の支持を得る。

 しかしムエタイの殿堂ラジャダムナンスタジアムで王座に着いたT-98も次第に対応を見せ、前に出てパンチの距離を潰し、菊野が組んでくるとそこからヒジとヒザ。MMAで培ったレスリングと圧力で押していく菊野だが攻撃が伴わず、レフェリーから再三注意を受ける。

 これが初のキックボクシング戦となる菊野はヒザの被弾に加え不慣れも手伝いスタミナを失い、T-98はヒジを中心に攻め立て試合終了。

 初挑戦のキックルールで「化け物」と評したT-98に挑んだ菊野だが、ここは順当に“ムエタイゴリラ”が判定3−0で勝利した。

フライ級トーナメントも開幕

スーパーライト級トーナメントは不可思(右)が決勝に駒を進めた 【写真:中原義史】

 昨年行われたライト級トーナメントの盛り上がりを受け、今年2月にスタートしたスーパーライト級トーナメントは準決勝2試合を実施。右ミドルで“怪物くん”鈴木博昭の脇腹を腫れ上がらせ終了間際にダウンを奪った不可思と、元世界王者である鬼嫁・いつかのゲキを受け、縦ヒジによるカットで勝利した秀樹が決勝に進出。

「スーパーライト級のベルト、もちろん俺が巻くんで8月も見に来てください」(不可思)
「(いつかに)今回はそんなに怒られないで済みました」(秀樹)

 強気な不可思に、鬼嫁の反応に安堵(あんど)する秀樹と、試合後のマイクは対照的な様子となったが、この階級の初代王座は次回8月19日の東京・大田区総合体育館大会で決することとなる。

 また、この日開幕したフライ級トーナメントでは沖縄の仲山大雅と留年してしまったという高校4年生のタネヨシホがそれぞれ勝利。

 仲山は計3度のダウンを奪い鮮やかなKO、タネはヒジ・ボディブローと多彩な技でそれぞれ印象を残し、準決勝以降の活躍、さらにフライ級トーナメント全体への期待を高めた。
【試合結果】
「KNOCK OUT SURVIVAL DAYS」
6月8日(金)東京・後楽園ホール


<第6試合 KING OF KNOCK OUT初代スーパーライト級(64.0キロ)王座決定トーナメント準決勝 3分5R>
〇不可思(クロスポイント吉祥寺 REBELS/RISEライト級王者)
(判定3−0)
●鈴木博昭(ストライキングジムAres/SB世界スーパーライト級王者)
※50−46、49−46、50−44

<第5試合 KING OF KNOCK OUT初代スーパーライト級(64.0キロ)王座決定トーナメント準決勝 3分5R>
〇秀樹(新宿レフティージム/K−1 ULTIMATE VICTOR REVOLUTION FINAL −65kg級世界トーナメント優勝)
(4R2分23秒 TKO)
●マサ佐藤(名護ムエタイスクール/英雄伝説64キロ級アジア王者)
※ヒジによるカット

<第4試合 55.5キロ契約 3分5R>
〇江幡塁(伊原道場/WKBA世界スーパーバンタム級王者)
(3R1分34秒 KO)
●小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺 REBELS/ISKA K−1ルール世界バンタム級&WPMF世界スーパーバンタム級王者)

<第3試合 51.0キロ 3分5R>
〇T−98(クロスポイント吉祥寺/元ラジャダムナン認定スーパーウェルター級王者)
(判定3−0)
●菊野克紀(チームKIKUNO/第5代DEEPライト級チャンピオン)
※49−47、49−46、49−46

<第2試合 KING OF KNOCK OUT初代フライ級(51キロ)王座決定トーナメント1回戦 3分5R>
〇仲山大雅(RIOTジム/RKAフライ級王者)
(2R1分54秒 KO)
●山田航暉(キング・ムエ/WMC日本スーパーフライ級王者)

<第1試合 KING OF KNOCK OUT初代フライ級(51キロ)王座決定トーナメント1回戦 3分5R>
〇タネヨシホ(直心会/WBCムエタイ日本統一フライ級王者)
(判定3−0)
● 石川直樹
(治政館/新日本キックボクシング協会フライ級王者)
※50−46、50−46、50−45
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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