甲子園を目指さなかったプロ野球選手 フルスイング魅力のロッテ和田康士朗

千葉ロッテマリーンズ

最も大変なのは「体作り」

 現在、ロッテで背番号“122”を背負っている。春季キャンプでは、シート打撃でチーム第1号となる本塁打を放って周囲を大いに驚かせた。初めてだらけの生活の中、気にかけてくれるチームメイトの存在にも励まされる。

 かつて背番号“122”から支配下登録された経験をもつ肘井竜蔵は、打撃練習を和田と同じ班で行い、守備や走塁練習中もたくさんの助言をくれる先輩だ。また、19歳の和田の同級生は、昨年入団した島孝明と種市篤暉。1軍未経験の3人は、それぞれ悩みながら成長しようとしている。春季キャンプ中に第1回を開催した食事会は今も続いていて、「プロでは2人が1年先輩なので心強いです」と和田は話している。

食事もトレーニングの一環。入団時から体重は6キロ増した 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 もちろん、苦戦していることもある。これまでに経験のない試合数が組まれ、必要とされる体力も桁違いだ。現在最も大変なのは、体作りに不可欠な“食事”だという。試合後、和田は“必ず摂取するように”と決められた量が取り置きされた補食をベンチで口にし、そのまま居残り特打や特守、ウエイトトレーニングに向かう。

 顔をしかめて必死に取り組む姿がいつも見られているが、地道な取り組みの成果は着実に出ている。体重は入団時から6キロほど増え、休日に会った友人にも変化を指摘されるほどだ。トレーニングの一環ともいえる食事をしながら、寮の食堂のテレビで1軍の試合を見る日々。「僕はまだ育成なので何も言えないですけど…」と前置きした上で、「あの場所でプレーしたいなと思います」と確かな夢を語った。

「打って、走れて、守れる選手に」

和田は「まずは二軍で試合に出続けること」と目標を掲げる 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 最近、嬉しいことがあった。ZOZOマリンスタジアムでは、昼間に2軍の試合、夜に1軍の試合を行う“親子ゲーム”が年に数回開催される。ある日、2軍の試合を終えた和田はそのまま1軍の試合前練習に参加した。

 その日の対戦カードは福岡ソフトバンク戦。三塁側に相手チームの選手がやってきたとき、和田の経歴を知るロッテのチームスタッフの計らいで、憧れだった柳田と初めて挨拶を交わす機会に恵まれた。数年前のような画面越しではなく、直接握手が交わされる。

「体の大きさも全然違って、僕が見上げる感じでした。本当に雲の上の存在ですけど、『頑張れよ』と言ってもらって嬉しかったです」と、その瞬間について語る声は希望にあふれて弾んでいた。

 夢に到達するまでの道のりは、他人と同じである必要はない。いつでも自分らしい道を選択して歩んでいく。

「一番はバッティング。バットを振る力が評価されて指名されたと思うので、しっかり続けていきます。まずは2軍で試合に出続けること。打って、走れて、守れる選手になりたいです」

 これまでもこれからも、和田は誰にも真似できない未来図を描いていく。

長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズオフィシャルライター)

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