甲子園を目指さなかったプロ野球選手 フルスイング魅力のロッテ和田康士朗

千葉ロッテマリーンズ

うれしさと悔しさが入り混じった育成指名

2017年ドラフト育成1位でロッテに入団した和田康士朗。そのフルスイングはファンを魅了する 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 2017年9月下旬のことだった。ロッテ浦和球場で開催された練習試合で、千葉ロッテマリーンズを相手に3安打2打点の活躍をしたBCリーグ選抜の選手は、富山GRNサンダーバーズの和田康士朗だった。

 これまでにない精神状態の日々が続いていた。打席が回ってくるのが楽しみでもあり、不安でもある。「ここで必死にアピールしないと可能性はない」と意気込む和田を、後方から複数の球団スカウトが見つめていた。1カ月後にはプロ野球ドラフト会議が迫っていた。

 10月26日。ドラフト会議の日、心の大部分を占めたのは不安だったという。前日は一睡もできず、当日の午前中に少し眠っただけだった。記者会見がセッティングされたホテルの一室で、和田を含めた3選手が着席して指名を待ったが、誰も名前を呼ばれないまま支配下選手の指名が終わった。その数十分後、和田はロッテから育成1位指名を受けたが、「何位でもいいから支配下でと思っていたので、うれしさと悔しさが半分半分でした」と、正直な気持ちを後に明かしている。

 それでも、3選手の中で指名があったのは自分だけで、会見後に携帯電話を見れば多数の祝福であふれていた。周りの人の支えと、確かに手に入れたNPBへの切符。徐々に込み上げる実感を心の中で噛みしめた。

陸上部出身の経歴が話題に

数年前は想像もしていなかったプロ野球の世界にたどり着いた 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 話題となったのは、陸上部出身という異色の経歴だ。多くのプロ野球選手は強豪校で甲子園出場を目指す高校時代を送るが、和田にその経験はない。小学校で野球を始め、高校入学後は陸上部に入った。翌年2月からクラブチームの都幾川倶楽部硬式野球団で再び野球に打ち込むことを選び、「かっこよくて、ひたすら動画を見ていました」と、福岡ソフトバンクの柳田悠岐外野手のホームラン動画を夢中で見るうちに、自然とフルスイングが自分の持ち味になっていった。

 ただ、当時はクラブチームでレベルの高い野球ができることで気持ちは充実していたし、映像の中のプロ野球選手に純粋な尊敬を抱くだけだった。数年後の自分の姿は想像もしていなかったが、この一風変わった経験こそが、和田にとってのプロ野球への道のりだった。

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