甲子園を目指さなかったプロ野球選手 フルスイング魅力のロッテ和田康士朗
うれしさと悔しさが入り混じった育成指名
2017年ドラフト育成1位でロッテに入団した和田康士朗。そのフルスイングはファンを魅了する 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
これまでにない精神状態の日々が続いていた。打席が回ってくるのが楽しみでもあり、不安でもある。「ここで必死にアピールしないと可能性はない」と意気込む和田を、後方から複数の球団スカウトが見つめていた。1カ月後にはプロ野球ドラフト会議が迫っていた。
10月26日。ドラフト会議の日、心の大部分を占めたのは不安だったという。前日は一睡もできず、当日の午前中に少し眠っただけだった。記者会見がセッティングされたホテルの一室で、和田を含めた3選手が着席して指名を待ったが、誰も名前を呼ばれないまま支配下選手の指名が終わった。その数十分後、和田はロッテから育成1位指名を受けたが、「何位でもいいから支配下でと思っていたので、うれしさと悔しさが半分半分でした」と、正直な気持ちを後に明かしている。
それでも、3選手の中で指名があったのは自分だけで、会見後に携帯電話を見れば多数の祝福であふれていた。周りの人の支えと、確かに手に入れたNPBへの切符。徐々に込み上げる実感を心の中で噛みしめた。
陸上部出身の経歴が話題に
数年前は想像もしていなかったプロ野球の世界にたどり着いた 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
ただ、当時はクラブチームでレベルの高い野球ができることで気持ちは充実していたし、映像の中のプロ野球選手に純粋な尊敬を抱くだけだった。数年後の自分の姿は想像もしていなかったが、この一風変わった経験こそが、和田にとってのプロ野球への道のりだった。