原口元気がフォルトゥナで取り戻した感覚 「ここでは信頼してもらっている」

島崎英純

宇佐美は「僕に足りないものを持っている」

チームメートの宇佐美(左)について原口は「僕に足りないものを持っている」とコメント 【写真:アフロ】

――今の原口選手にとって、宇佐美選手の存在とは?

 貴史は技術を追求している選手。彼が持っている技術は日本でもトップクラスですよね。彼は僕に足りないものを持っている。でも、僕も彼に足りないものを持っていると思う。それぞれ特長が違うので、お互いが助け合うのではなくて、お互いが足りないものを認識して、それを得るための努力ができると思っています。

――デュッセルドルフに来る前までは宇佐美選手とあまり交流がなかったと聞きました。実際に会ってからの印象は?

 うーん、まあ(笑)。彼の良いところだけを言うと、今はとてもサッカーと向き合っている。貴史はバイエルン・ミュンヘンやホッフェンハイム、アウクスブルクでうまくいかない時期があった。あれだけの才能があってもヨーロッパでは実績を築けなかったわけで、それを踏まえて、今はサッカーとの向き合い方が変わったのではないかと感じました。守備もすごく頑張っていますしね。単純に言うと、貴史はサッカーが好きなんですよ。それは僕と共通する部分です。

――宇佐美選手とはアンダーの日本代表時代から同じポジションでライバル関係にありました。

 別に仲が悪いわけではなかったんですけれど、正直に言うとよくもなかった。同じポジションを争っていたわけで、僕の場合は、そのような相手とは仲良くはなれない。それだけですよ。でも、今のデュッセルドルフでは2人で共存してうまくプレーできているし、良い関係を築けていると思います。

――サッカーの世界は何が起きるか分かりませんから、今後、原口選手と宇佐美選手がチーム内でポジション争いをする可能性も……。

 もちろん、ありえますよね。でもね、もう、僕らも大人ですからね(笑)。もし僕が試合に出られず、貴史がレギュラーの場合でも、内面で悔しい思いを抱きながらも態度で示したりはしませんよ(笑)。それでお互いの関係に亀裂が生じることもないです。

ドイツに来てつかんだ自信を胸に

ドイツに来てから4年が経過、原口は「今はどこでプレーしても良いと思っている」と話す 【写真:アフロ】

――原口選手がドイツに来たのは2014年の夏。4年が経ちました。

 ちょうど、ブラジルのワールドカップ(W杯)が終わった後でしたね。

――ヘルタ・ベルリン、デュッセルドルフと2クラブでプレーしましたが、ドイツでのプレーについての自己評価は?

 思い描いていたものとは違います。サイドハーフとして、攻撃の部分で違いを作れる選手でありたかった。でも正直足りない部分があって、いろいろなものを取り入れて、いろいろな工夫をして、努力して、試合には出場できるようになりました。その結果、ヘルタでもデュッセルドルフでも試合に出場し続けるという自信を備えることはできました。

 でも、それで満足するわけにはいかない。ここからもっと上へ行きたい。そのためには先ほど話したようにゴール前のクオリティーを上げなければならない。その中でも自分を評価するとしたら、粘り強くプレーしていたとは思います。今はドイツのトップ4のクラブでなければ、どんな監督の下であっても起用される自信はあります。

――今の自分の立ち位置を認識しているのですね。

 客観的に見て、今の自分はトップ・オブ・トップにはいない。でも、そのトップを目指さなきゃいけないと思っています。それは今からでも遅くはない。

――デュッセルドルフでの暮らしはいかがですか?

 ベルリンは大きな街でしたが、デュッセルドルフも良いですね。正直に言って、僕はドイツに来てから暮らす街に恵まれている。普段の生活はとても充実しています。むしろ日本よりも過ごしやすいと感じています。ドイツは街中から近くても森や丘などの自然が豊富で緑が溢れている。それは僕にとって、とても心が安らぐものなんです。

 デュッセルドルフに来る前は、この街にあまり良いイメージを抱いていませんでした。中央駅付近の雰囲気があまり好きではなかったんですけれど、当時はそこしか見ていなかった。でも、少し足を伸ばして郊外へ行けば、この街には川があって森がある。僕が今住んでいるところも周囲は緑の樹木が多くて、奥さんも気に入っています。デュッセルドルフでは日本の食材が豊富に手に入るので、その点も気に入っているみたいです。

 それと、ドイツの西側のデュッセルドルフ近辺は友達も多く住んでいるんですよね。ベルリンはドイツ東部で他の大きな街からは少し離れていて、そうなると、2人だけで過ごす時間が長かったんです。それ自体は悪いことではなかったんですけども、今は気軽に仲間と集まることができるので、それが奥さんにとっても良いんだと思います。

 サッカー選手は日々練習があって人と触れ合う場がありますが、家事を担ってくれている奥さんは普段、なかなか人と接する機会がないんです。だからベルリンにいたときは少し心配もしていました。その点では、デュッセルドルフの暮らしの中では気の合う友達と会えているので安心しています。奥さんにとっては今のデュッセルドルフがベストなんじゃないですかね。でも、来季の僕の去就はまだ分からないから……。

 できれば、W杯の前に決めたいんですけどね。こればかりは自分の意思だけで決めることはできないので。でも、今はどこでプレーしても良いと思っています。こだわりを持たず、どこでも自分の求めるプレーができると思っています。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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