西武・山川、始まったばかりのストーリー 「3年後に打てる練習」がもたらす果実

中島大輔

開幕から猛打を見せ、西武の首位快走を支える山川。4月の月間MVP受賞が確実視されている 【写真は共同】

 3・4月は24試合で打率3割3分7厘、11本塁打、33打点――。

 2017年夏に始まったシンデレラストーリーは、年をまたいだ今季も継続中だ。埼玉西武の山川穂高は三冠王も狙えるような好スタートを切り、昨年の8、9・10月度から3カ月連続の月間MVP受賞が確実視されている。

スイングスピードが速くなった結果…

「明日打てる練習と、3年後に打てる練習というイメージを持ってやっています」

 山川が言う「明日打てる練習」とは、いわゆる調整だ。対して「3年後に打てる練習」について、こう説明する。

「ブワーッと(思い切り)振っておけば、体の筋肉は絶対つくじゃないですか。スイングスピードも、ゆっくりやるより速く振った方が絶対上がります」

 自主トレから走り込みと強いスイングを繰り返した結果、今季の山川はスイングスピードが速くなったと感じている。

「去年の感覚では、ピッチャーが投げた瞬間に振るくらいのイメージでした。でも今年のオープン戦では投げた瞬間に振ったら、バットの先っぽに当たったり、当たらなかったり、逆にボールが遅く見えるんです。ということは、もしかしたらスイングスピードが上がっているかもしれないと思って引きつけて打つイメージにしてみたら、ちょうどでした」

 いわゆる前さばきで打つタイプの山川だが、今季は右足の太ももの辺り、つまり体に近いポイントで打っている感覚があるという。映像を見ると、実際には体の前でコンタクトしているときもあれば、近いポイントまで呼び込んでいる打席もある。あくまでイメージだと語るが、「引きつけて打てるようになったから、たぶん去年より低めを振らないんじゃないですか」。

 結果、5月6日終了時点でリーグトップの29四球。また、4月28日の東北楽天戦では3回の第2打席、2ストライクに追い込まれてから、則本昂大が投じた外角のスライダーに体勢を崩されたが、前に出されかけたところを我慢して、技ありでレフト前に弾き返した。

「崩されたけど、あれは技という言い方に近いかもしれないです。ホームランだけではなく、ああいうヒットも絶対大事だと思う」

 スイングが速くなった結果、打撃の引き出しが増え、選球眼が高くなった。3年後を見据えた練習は、半年も経たない間に果実をもたらしている。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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