西武・山川、始まったばかりのストーリー 「3年後に打てる練習」がもたらす果実

中島大輔

開幕前、秋山が共感した考え方とは?

秋山(写真右)は山川(同左)の考え方に触れ、共感を覚えたという 【写真は共同】

 一方、その副産物に苦しんだのが、開幕を控えたオープン戦だった。山川も振り返るように、スイングスピードが上がったことで去年と打撃の感覚が変わった。オープン戦の成績は、12球団で規定打席に到達した全35選手の中で下から2番目の打率1割3分6厘。それがわずか1カ月後に猛打さく裂させているのは、シーズン前の取り組みが要因にある。

 メットライフドームに桜が咲き始めた3月17日、チームメイトの秋山翔吾が山川についてこう話していた。

「周りから『まだオープン戦だから成績は気にしないでやればいい』と言われて、ご飯を食べに行って、寝て、気分転換できて、次の試合でヒットやホームランを打てたとしても、それがシーズンにつながるものではないと思うんです、と山川が言っていました。そういう考え方は、僕も近いものがありますね」

 この日の巨人戦で第4打席、山川は3球目をファウルにした際、「間が戻ってきたんじゃないかという手応えがありました」。一筋の光明が差し込んだような表情でそう話すと、「早く忘れないように打ちにいきます」と室内練習場に向かっていった。

感覚違うも同じような成績、だから面白い

 それから1カ月半後の現在、リーグ5位の打率3割2分4厘、ともに両リーグトップの12本塁打、39打点。打棒爆発中の4月下旬、山川は苦しんだオープン戦の時期についてこう振り返っている。

「去年これだけ打っていたときにはこういう打ち方をしていたというのは、全然参考になりません。オープン戦で打てなかったときに去年の映像を見ましたけど、部分的に参考になるところはあっても、感覚的なところは圧倒的に違います。今年は今年の感覚をつかまないといけないので、打てないところから逃げちゃいけないんですよね」

 感覚をつかむためには、とにかく練習あるのみだ。

「練習で上から下まで1個1個意識を変えていきながら打っていって、『これはいいかも』『これはダメだな』と削っていき、『これだったら大丈夫だろう』というものを今度は試合でやって、試合でもできた場合は『よし、これだ』となる。それが何日続くかとやっていきます。いま、打っているじゃないですか。その感覚は1個あるんですけど、それが毎日続くかはわからない。打てる気がしないときももちろんあるので。では、打てる気がしないときには手数の出し方をしていこうとかもあります」

 打撃の探求に終わりはない。今日、明日、1年後、3年後、そして……。バッティングには普遍なものと日々変化するものがあり、その道を探し求めていく。

「去年と今年では打撃の感覚が違います。違うけど、だいたい同じような数字が出るじゃないですか。だから面白いんです」

 豪快なスイングと卓越した技術でファンを魅了する男のシンデレラストーリーは、まだまだ序章にすぎない。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント