豪州が目指すのは“グッド・ルーザー”? 暫定監督と戦うロシアW杯に期待すること

タカ植松

4大会連続出場中だが、今大会も楽観視はできない

4大会連続となるW杯出場を決めたオーストラリアだが、今大会も楽観視はできない状況だ 【写真:ロイター/アフロ】

 オーストラリアにとって、5回目となるワールドカップ(W杯)がすぐそこに迫っている。2006年のドイツ大会で32年ぶりに出場して以降、4大会連続で出場してきたオーストラリアは、毎回チャンレンジャー精神を持って本大会に臨む立場にあり、今回もそれには変わりない。ロシア大会もまた、前回のブラジル大会ほどではないが、楽観視できるような大会にはならないだろう。

 まずは、そもそもW杯に出場できるのか――。さほど日本ではニュースになっていないだろうが、オーストラリアがロシアの地を確実に踏めるという保証は、今のところ100パーセントではない。というのも、このところ先鋭化する元スパイの暗殺事件に端を発するロシアと英国の外交的対立の余波が、オーストラリアにも及んでいるのだ。

 英露両国は外交官の引き上げを相互で行い、英国はW杯ロシア大会への自国代表派遣のボイコットをほのめかした。それに、英国連邦に所属、英国女王を国家元首に抱くオーストラリアが同調。3月末、豪外相が今後の対立の次第では代表チームのボイコットの可能性があると言及した。当然、この最悪のシナリオが現実のものとなる可能性はかなり低いが、まずは、無事に“サッカルーズ(オーストラリア代表の愛称)”がロシアの地を踏めることを願うばかりだ。

ファン・マルワイク監督に残された時間はわずか

大会が迫る中、監督交代を敢行。ファン・マルワイク新監督に残された時間は少ない 【Getty Images】

 さて、「大会には出場できる」という前提で予選グループの対戦相手を見ていこう。前回のブラジル大会では、チリ、オランダ、スペインと同組。自他ともに認める“死の組”の渦中に投げ込まれ、絶望を通り越して「やれるだけやればいいさ」との諦観が国中を覆った。

 そんな「最悪」の状況下でも、さほど悲観的にならなかったのは、自国代表を率いるアンジ・ポステコグルー体制で、とにかく強敵相手に存在感を発揮できさえすればいいという、伝統のオージー流判官びいきとも言うべき「アンダードック(負け犬)」精神がチームにも、ファンにもあったからに違いない。実際、チームはそれに応えるように、3戦全敗ながらエースFWのティム・ケーヒルのスーパーゴールなど、それなりのインパクトを残して敗退。大会後も、その戦いぶりに批判めいたものはほとんど聞こえてこなかった。

 翻って、今大会はフランス、デンマーク、ペルーと、相手はブラジル大会よりは相対的に少し楽になった。それでも、大会の優勝候補にも挙げられるフランスなど、息がつける相手はいない。ましてや、今回は監督交代後、まだ日が浅い。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督解任騒動以来、上には上がいるとばかりに、大会が迫ってからの監督交代が起きたことへの不安感は薄まったが、今年1月に就任したベルト・ファン・マルワイク新監督に残された時間が少ないことには変わりはない。

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著者プロフィール

1974年福岡県生まれ。豪州ブリスベン在住。中高はボールをうまく足でコントロールできないなら手でというだけの理由でハンドボール部に所属。浪人で上京、草創期のJリーグや代表戦に足しげく通う。一所に落ち着けない20代を駆け抜け、30歳目前にして03年に豪州に渡る。豪州最大の邦字紙・日豪プレスで勤務、サッカー関連記事を担当。07年からはフリーランスとして活動する。日豪プレス連載の「日豪サッカー新時代」は、豪州サッカー愛好者にマニアックな支持を集め、好評を博している

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