「問題があるとなぜ言ってくれなかった」 ハリルホジッチ前監督 解任後の会見

スポーツナビ

私にもコーチにも説明がなかった

時に涙を浮かべながら、コミュニケーションの問題はなかったと主張する 【スポーツナビ】

 サッカーという意味で、(今年の)ベルギー遠征はそれほどいいものではなかったかもしれない。しかし、いろいろなデータを引き出すことができた。本当であればレギュラーの選手が7、8人、あの時は代表チームに入っていない状況だった。しかし、前のようにパフォーマンスがよくない選手もいると見て取れた。つまり、私の頭の中では、(よくない選手がいるの)であればどうすべきかと考えた。11月の最初の合宿では18人の選手を呼んで、2回目の合宿には選手22人+GK2人。選手たちを試していたわけだ。ご覧いただいたように、(今年3月の遠征で)最後に中島(翔哉)を呼んだのは覚えているだろう。皆さんには驚きだったかもしれないが、とてもポジティブな結果だった。

 つまり、W杯のための調整であって、私は何を求めているかきちんと分かっていた。私自身は満足もしていたし、選手についてのいろいろな情報データも得ていた。そして、一番重要な23人の選手を選抜する時期に来ていたのだ。そこで、こうした問題が始まった。いろいろな情報が私の耳にも入ってきたものの、私はあくまでも自分の仕事に専念していた。その時に適切な試合、プレーになっていなかったと言う人もいた。よって、合宿をして1カ月調整をしようとしていたが、なぜ今このような問題が出てくるのか。

 会長にしても西野さんにしても「ハリル、問題があるぞ」と、なぜ一度として言ってくれなかったのか。一度として言われたことはなかった。西野さんの方が私に何か言おうとしていたことはあった。マリ戦の後、私はパリに行ってフランス対コロンビアの試合を見た。そして、その後、ベルギーのリエージュに戻ったのが、午前4時、5時という遅い時間だった。そこで話が来たわけだ。1人の選手があまりいい状態でないと。私は「分かっている。それは後で解決できる」と言った。残念ながらそこでいろいろなことが起こり、会長がたくさんの選手やコーチに連絡を取り、そして私とともにいたのがジャッキー・ボヌベーやシリル・モワンヌ、GKコーチの(エンヴェル・)ルグシッチだった。何が起こったのか、私にもコーチにも説明がなかった。私には青天の霹靂であったし、私とともにやっているコーチたちにとっても驚きだった。

 そして4月7日のことだった。パリへと呼び出しがかかった。私は何のことか分からず、ホテルに出向いた。コンニチハと言って腰掛け、「ヴァイッド、これでお別れすることになった」ということだった。最初はジョークだと思った。1分経って、会長に「なぜですか?」と聞いた。つまりは(解任理由が)コミュニケーション不足ということで、怒りがこみ上げてきた。「どの選手と?」と聞くと、「全般的に」ということだった。その部屋からは5分で出た。私は動転して何が起こったか分からず、コーチたちに電話をした。1人は英国、1人はドイツにいた。そこで、うちの選手たちの視察をしていた。「うちに帰りなさい、もう終わったから」と私は言った。コーチたちの反応がどうだったかはご想像ください。

 このように会長からそういう形で話をされたことは、ありとあらゆる3年間やってきたことに対しても、私自身、監督をしている人間に対して、リスペクトがないのではないか。私と一緒にやっているコーチ仲間に対しても同じ思いがある。

(昨年12月の)韓国戦の後に解任を考えたという話も聞いた。それであれば、私も少しは理解ができる。W杯より日韓戦の方がいかに重要かということは私も分かっている。私から皆さんにすべてお話したいと思った。監督はとても難しい思いをすることがある。私は1回、(2010年のコートジボワール監督時代に)そうした経験をしていた。24回負けなしで、その後負けて解任されたことがあった。その時は会長が決めたのではなく、大統領がそうした決定をしたとのことだった。まだまだ、まだまだたくさん申し上げたいことはあるが、皆さんのご質問を受ける形でお答えしたい。

選手からも励ましのメッセージが多数

解任後、たくさんの選手やコーチからメッセージをもらったことを明かした 【スポーツナビ】

――具体的に協会がどのような思惑を持って解任に至ったと考えているか?

 会長から言われたことは、まず選手およびコーチたちとのコミュニケーションと信頼が薄まったということ。なぜか最後の遠征で薄まったようだ。3年間、何の問題もなかったと認識している。私が疑問に思っているのは、誰とのコミュニケーションだったのかということ。

 選手からもたくさんの励ましのメッセージをもらった。全部読みたいところだが、たとえば槙野(智章)からは「JFAの決定について非常に落胆しています。びっくりもしました。ヴァイッド監督とコミュニケーションの問題はなかったと思っています。このチーム内のいち選手として申し上げたい。私たちのコミュニケーションをさらに改善することは必要かもしれませんが、正直に申し上げます。私の認識ではそういった問題は存在しなかった。個人的には監督のおかげで進歩できたと思っています。すごく厳しい監督でしたが、そのおかげで今の私がある、感謝したいと思っています。厳しい時間、苦しい時間もありましたし、非常にうれしい時間もありました。ハリルホジッチ監督の(率いる日本代表で)W杯がぜひ見たかった」というようなメッセージだった。

 ベテランから若い選手まで、多くのメッセージが届いた。トレーナー、メディカルスタッフからのメッセージもあった。「ヴァイッドは本当に厳しかった。それを苦ともせず、3年間、共に戦ってきました。そのおかげで成長することができました。私たちの父のような存在でした。親しみを込めて叱ってくれました。この3年間、本当に心から感謝しています。私たちを1人の男として成長させてくれたのはヴァイッド、あなたのおかげです。心よりの友情を」。テクニカルコーチからも励ましの言葉をもらっている。「いったい何が起こったのでしょうか。私にも分かりません。本当に信じられません。本当に残念に思います」。彼はテクニカルメンバーの1人で、3年間、私とともに過ごしてきた人だ。

 もう1つお見せしたい。Bチームで1回だけ起用した選手(実際は2試合)。(サンフレッチェ)広島の丹羽大輝だ。広島からわざわざ飛行機に乗って、私を訪ねてきてくれた。「ありがとう」と言いに来てくれた。1回だけの起用だった。しかもBチームで。

 いったい何が起きているのか。質問にきちんと答えられているか分からないが、もう一言。非常に家族的なスピリット、スタッフ全員が大きな、家族のような気持ちで、私たちは仕事をしてきた。外国人は外国人、日本人は日本人でなく、全員で一緒にディナーを食べる機会を何度も設けた。おごるのは私だが。おごりだと思うと、みんなよく食べる(笑)。W杯出場を決めて、本当は言わない方がいいのかもしれないが、自分からのお礼の気持ちを込めて1人1人にプレゼントをした。ヴァイッドは見た目ほど、にくたらしいやつではないと思ってもらえたのではないか。ピッチ上では厳しいが、いつもいつも厳しいわけではない。

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