大谷翔平、“ズレ”でメジャー初黒星 エンゼルスOB2人が解説

大谷の4月8日と17日のスプリットの軌道を「ゼウス」で比較 【NHK ワールドスポーツMLB】

 4月17日(現地時間)のレッドソックス戦で大谷翔平がメジャー初黒星を喫した。

 何が問題だったのか? エンゼルスOBの長谷川滋利さんと高橋尚成さんに解説してもらった。2人が指摘したのは、いずれも体の「小さなズレ」だった。

「体が前に突っ込んでいた」

大谷のレッドソックス戦のピッチングについて解説する長谷川さん(左)と高橋さん 【NHK ワールドスポーツMLB】

 球場で試合を見ていた長谷川さんは「大谷は気合が入りすぎて、体が少しだけ前に突っ込んでいるように見えた」と語る。「変化球が高めに浮いたり、低めに投げようとしたスプリットがワンバウンドになったりしたのはそのためだ」と推測する。

 そもそも大谷は2日前のロイヤルズ戦に先発する予定だった。しかし寒さで試合が延期。スライド登板の結果、対戦相手がレッドソックスに変更になった。映像などを見て準備したというが、リーグ屈指の強豪との対戦を前に、気持ちを高ぶらせたことは想像に難くない。この気持ちが体を「少しだけ」前のめりにさせたのか。

高橋さんが「ゼウス」を使って説明する 【NHK ワールドスポーツMLB】

 高橋さんの第一声は「あれだけスプリットが決まらないと厳しいね」という言葉だった。そこで「ワールドスポーツMLB」が開発した「ゼウス」を使い詳しく説明してもらった。「ゼウス」は、メジャーリーグのデータ計測システム「STATCAST」のデータをもとに、投球の軌跡を正確に再現することができる投球分析ツールだ。

8日のアスレチックス戦で大谷が投げたスプリット全球 【NHK ワールドスポーツMLB】

 これは前のアスレティックス戦(8日)、7回1死までパーフェクトに抑えたときのスプリット全球。この日、大谷選手は91球中34球スプリットを投球。その大半がストライクゾーンと、その下のゾーンにおさまっていた。

17日のレッドソックス戦で大谷が投げたスプリット全球 【NHK ワールドスポーツMLB】

 一方、レッドソックス戦でのスプリット全球を見ると、ストライクゾーンおよびその下のゾーンにおさまっているボールは、わずかだった。

「スプリットはストライクだと思わせないと意味がない球。これでは苦しいよ」と語る高橋さんに、「ではなぜコントロールが良くなかったのか?」と尋ねてみた。すると「手首が少し寝ていたんだ」という答えが返ってきた。これは一体どういう意味なのか?

わずかにリリースポイントが変化

17日の方がリリースポイントが下がっていた 【NHK ワールドスポーツMLB】

 高橋さんのリクエストで、2つの試合での大谷選手のリリースポイントを比較すると、ほんのわずかだが手首の位置が下がっていた。そのことを「手首が少し寝ていた」と独特の表現をする高橋さん。「手首が寝ているとボールが中指にひっかかりやすくなる。スプリットはストライクゾーンの外にはずれやすくなるし、マメも悪化してしまう」と解説する。確かに問題のマメは中指にあった。

 これらの「小さなズレ」を大谷は修正できるのだろうか。

 試合前、エンゼルスを取材した長谷川さんが、エンゼルスのエリック・ヒンスキー打撃コーチから聞いたエピソードを教えてくれた。現役時代、対戦したこともある2人は親しい間柄だ。

 オープン戦であれだけ打てなかった大谷が、開幕直前、それまでの足を上げていた打法を「すり足」に変え、打ち始めたことは良く知られている。長谷川さんが聞いたのは、その裏話だ。

 ヒンスキー打撃コーチによると、このとき自分がしたのは「君は打つときに少し目の位置がズレている。メジャーの投手はツーシームやカットボールなど小さく変化するボールを投げるので、今のままでは打てない」と伝えただけ。次に会ったとき、大谷は自分の判断で「すり足」に変えていて、驚かされたという。

「ヒントを与えたら、自ら対応してくる。これはすごいアジャスト力だ! と2人で盛り上がったんだよ」

 そううれしそうに語る長谷川さん。その話を聞いていたら、大谷なら体の小さなズレなど、すぐ乗り越えるだろうという気持ちになった。次回登板の相手は昨年のワールドチャンピオンのアストロズ。どんな投球を見せるのか、今から待ち遠しい。

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NHK「ワールドスポーツMLB」

BS−1で放送しているメジャーリーグ専門番組。投球の軌道をCGで再現できるツール「ゼウス」を独自で開発するなど、データ分析に力を入れています。大谷翔平情報をたっぷりとお伝えします。

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