韓国は「歴代最高の準備」でW杯へ!? 不安定な守備が露見、世論は悲観ムードに

徹底的に対戦国のスカウティングを実施

対戦国のスカウティングに余念がない韓国。ドイツの親善試合にも視察を送っている 【写真:ロイター/アフロ】

 もっとも、3バックに限らず、韓国の不安定な守備は長らく問題視されてきたウイークポイントでもある。アジア最終予選以降の8試合のうち、無失点で試合を終えたのはE−1選手権の北朝鮮戦、1月のモルドバ戦、ラトビア戦の3試合のみ。いずれも格下相手の試合で、その格下に脅かされる場面も少なくなかった。3月の欧州遠征では、守備の連係強化を図るため、DF8人のうち5人を昨季Kリーグ王者である全北現代モータースから選出したが、それでも2試合合計で5失点を喫している。

 “プランB”の模索と不安定な守備。解決の糸口すら見いだせない状況に、メディアやファンはいら立ちを募らせ、不安を増長させている。これが韓国を取り巻く決戦前の状況と言えるだろう。ただ、シン・テヨン監督は“番狂わせ”を決して諦めてはいない。グループFの厳しさを認めつつ、それでも勝機をうかがっている。

「確かに相手は手ごわいが、われわれもまた、歴代最高の準備を進めている。特別なサポートを受けた02年のW杯日韓大会を除けば、コーチングスタッフ、分析担当スタッフなど、これまでで最高の専門家たちが集まり、努力している。W杯では、情報が多いチームが有利だ」

 実際、韓国は対戦国のスカウティングに余念がない。例えば3月には、戦略分析官としてガルシア・エルナンデス氏を招へいした。エルナンデス氏は、03年から16年まで、レアル・マドリーの戦略分析官として、ジョゼ・モウリーニョやカルロ・アンチェロッティ、ジネディーヌ・ジダンなどを補佐した。01−02シーズンにはコーチングスタッフを務め、チャンピオンズリーグ優勝も経験している。ちなみに彼の韓国入りを推薦したのは、元スペイン代表のアシスタントコーチで昨年11月から韓国の首席コーチを務めるトニー・グランデ氏だという。

 そんな戦略分析官を新たに迎えた韓国は、W杯で対戦するドイツ、メキシコ、スウェーデンが3月にテストマッチを行った際も、スタッフを現地偵察に送っていた。徹底的に対戦国の情報を収集・分析することで、一筋の活路を見いだそうと必死だ。

指揮官は引きの強さで“番狂わせ”を起こせるか

自らを“ナンノム(持っている男)”と評す指揮官は、強豪ひしめくグループで結果を残せるか 【写真:ロイター/アフロ】

 また、同時に新戦力の発掘も続けている。シン・テヨン監督は4月7、8日には日本を訪れ、セレッソ大阪vs.サガン鳥栖、柏レイソルvs.サンフレッチェ広島の試合をチェック。リオ五輪組の1人であるキム・ミンヒョクや、第3GK候補のキム・ジンヒョンをはじめ、Jリーガーのコンディションを直接確認した。28、29日にも再び日本を訪れる予定であると明かしており、欧州組の最終チェックのために、あらためて現地に飛ぶことも検討しているようだ。

 情報分析に新戦力の発掘など、本番までにできることはすべてやり尽くすというわけだ。シン・テヨン監督は韓国メディアにこう言っている。

「もしも韓国がスウェーデンに勝って、メキシコに勝って、ついでにドイツにも勝って3勝すれば“ヤバい”だろう? もちろんこれは想像の話だ。しかし、どれだけ幸せな想像だろうか。私は負けることを考えない。負けたらどうしようと悩むこともない。どうすれば勝てるか。そのために今、何をすべきか。それだけを考えている」

 どこまでも強気なその姿勢は、W杯に悲観的な国内世論とは対照的ですらあるが、シン・テヨン監督は自らを“ナンノム(持っている男、引きが強い男という意味)”と自称する指揮官でもある。その引きの強さで番狂わせを起こすか、はたまた無残にも砕け散ってしまうのか。グループFの力関係では最下層にいる韓国だが、たとえ玉砕必至の“まな板の鯉”であろうとも、タダでは引き下がらない。監督にそんな覚悟があることだけは、間違いなさそうだ。

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著者プロフィール

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で2002年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書に『祖国と母国とフットボール』『イ・ボミはなぜ強い?〜女王たちの素顔』のほか、訳書に『パク・チソン自伝』など。日本在住ながらKFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)に記者登録されており、『スポーツソウル日本版』編集長も務めている

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