ヤクルトの好スタートを支える救援陣 バッテリーの結束強めた宮本ヘッドの叱責
8日の巨人戦で3回を無失点に抑えてプロ初勝利を挙げた中尾(右) 【写真は共同】
特筆すべきは、15、16年と2年連続トリプルスリーの山田哲人をトップバッターに据え、本塁打王3回のウラディミール・バレンティン、メジャーリーグから帰ってきた青木宣親が3、4番に座る打線だろう。ここまでチーム打率2割8分4厘はリーグトップで、56得点、51四死球、14犠打、5犠飛は、いずれも両リーグ最多。さらに9盗塁もリーグ2位と、粘り強く塁に出て、小技や機動力を絡めて得点につなげる新たなスタイルが、このあたりの数字に表れている。
救援陣は12球団トップの防御率
「やっぱりピッチャーの踏ん張りがないと、なかなかうまく攻撃につながっていかないこともあるし、点を取っても取られるっていう展開になると、どっちに流れが行くかわからなくなってくる。そういう流れをしっかり止めてくれたんじゃないかなと思います。(中継ぎが)本当に頑張ってくれてますね」
本拠地の神宮球場で巨人を相手に3連勝した4月8日の試合後、小川淳司監督は救援陣の働きに対する評価を口にした。この3連戦でヤクルトの救援投手による失点は、7日の2戦目で8点リードの9回に登板した抑えのマット・カラシティーが、1点を献上したのみ。その7日はプロ4年目の風張蓮、翌8日は2年目の中尾輝(ひかる)が好救援でプロ初勝利を挙げるなど、リリーフピッチャーの好投が光った。
「ホントに頑張ってますよ。昨年の悔しさを持ってやってますし、みんな口には出さないですけど、やっぱり心の中ではそこの気持ちが一番強いんじゃないですか」
そう話すのは、1軍のブルペンを担当して2年目の石井弘寿投手コーチだ。今シーズンはクローザーこそ新外国人のカラシティーだが、ゲーム終盤を担う近藤一樹、秋吉亮、石山泰稚といった顔ぶれは昨年と変わらない。皆なんとか昨年の屈辱を晴らしたいという思いで今シーズンに臨んでいる。
中村の成長を促したオープン戦の出来事
「やり返したいっていう気持ちが伝わる話をムーチョ(中村悠平)がしてくれて、ピッチャーも『よっしゃ! やってやる』っていう気持ちになりました」
それはオープン戦最後の札幌遠征中のことだった。3月23日の北海道日本ハム戦、打線が9回表に3点のビハインドをひっくり返しながらも、その裏に追いつかれて7対7の引き分け。試合後のミーティングでは、宮本慎也ヘッドコーチから叱責の声が飛んだ。
お前がキャッチャーだったら勝てない──。それは正捕手である中村のリード、そして立ち振る舞いに対する、厳しいダメ出しだった。
「オープン戦でピッチャーが点を取られていたんで、『ピッチャーだけの責任じゃない』ってフォローしてあげようという気持ちもあったんですけどね。中村はピッチャーが打たれた時に、それを責めるような仕草をするんですよ。打たれたら、それは自分の責任っていうのが見えない。『ピッチャーが悪い』っていうふうに見えるし、それじゃ信頼関係は築けない。いいキャッチャーは、ピッチャーの責任を背負わないといけないんですよ」
宮本ヘッドコーチは、叱責の意図をそう話す。捕手としての中村の成長を促すとともに、投手陣に対する配慮も含まれていたその「ダメ出し」は、翌日の中村の発言を経て、バッテリーの結束を強めることになる。
「確かにそうだなと思って、その日はずっと考えてて……こんなことしてちゃいけないなって。その次の日も結果的には負けてしまったんですけど、やるべきことはしっかりやって2点に抑えたっていうことで、ミーティングで話をさせてもらったんです」(中村)
その場で、中村は自分の思いを切々と訴えた。前日は投手の足を引っ張ってしまい、その借りを返そうと必死になってリードしたこと。96敗という、去年の悔しい思いを常に持ち続けていること。そして、投手陣に対してはシーズンに入って打たれることがあっても、次の登板で取り返す気持ちを忘れずにやろうということ──。
「ムーチョもしっかりした芯を持ってるんで、やられたところを反省して、しっかりと試合をつくってくれて。その中で、ミーティングで自分の意見を言ってくれて、僕らも熱く感じるというかグサッと(心に)刺さりました。そこからムーチョもすごく変わったと思いますし、思いも伝わってくるんで、僕らもそれに応えられるようにしないと」(近藤)