連載:燕軍戦記2018〜変革〜

ヤクルトの好スタートを支える救援陣 バッテリーの結束強めた宮本ヘッドの叱責

菊田康彦

風張、中尾のプロ初勝利を導く

7日は風張が巨人打線を2回無失点に抑えてプロ初勝利を手にした 【写真は共同】

 中村の言葉が響いたのは近藤だけではない。「勝利の方程式」を担う秋吉や石山も同じだった。

「ピッチャーが打たれたらキャッチャーの責任にもなってしまう。投げるのはピッチャーだから、僕らがしっかり抑えればムーチョも怒られることはない。今年はバッテリーで勝ったって言われるようにしたいですね」(秋吉)

「ムーチョも変わってきてるんで、僕らも変わらなきゃいけない。技術的なことは今から大きくは変えられないですけど、気持ちの面でしっかり攻めれるように。あとはキャッチャーとしっかり意思疎通できてるかどうかも重要だと思うんで、そこはしっかりやりたいです」(石山)

 オープン戦で失点が目立った救援陣は、シーズンが始まると奮闘した。敵地で横浜DeNAに2勝1敗と勝ち越した開幕3連戦、リリーフによる失点は2点だけ。続く本拠地・神宮での広島との3連戦も、1勝2敗と負け越しはしたが、リリーフによる失点はやはり2点だけだった。
 そして、4月6日から行われた巨人との3連戦。初戦は先発のデービッド・ブキャナンが8回無失点の快投でチームを勝利に導いたが、第2戦は1点のビハインドでマウンドに上がった風張が2イニングを無失点に抑え、味方の逆転で嬉しいプロ初勝利。続く第3戦は、同点の場面で登板した中尾が3回を零封すると、その間に打線がリードを奪って、こちらも初の白星を手にした。

「中村さんのリードを信じれば打たれないと思って、思いっきり投げ込むことだけ考えてました」

 札幌でのミーティングの場にもいた中尾がそう話せば、中村も「いいピッチングでした。僕のやりたいことに、しっかりついてきてくれましたね。変化球でカウントを取るときは取ってくれたり、ボールにしてほしいところはボールにしたり。インコースに厳しく行く時も、腕を振って厳しく行ってくれました」と、2年目左腕の好投を称える。そこには確かな信頼関係があった。

 ブルペン陣が奮闘する一方で、先発で勝ち星を挙げているのは2戦2勝のブキャナンと、1勝の石川雅規だけ。クオリティースタート(先発して6回以上投げ、自責点3以下に抑えること)も、ブキャナン(2試合)、石川(1試合)のほかには館山昌平(1試合)だけと、思うように試合をつくることができていない。10日から敵地に乗り込んで中日、阪神と戦う6連戦。今度は先発投手が意地を見せる番だ。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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